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物語
第4話 目的と出発



天空世界編第4話
目的と出発









翌日のお昼頃…
皆は疲れ果てゆっくりと睡眠をとり、ご飯を済ませては館を後にしていた。


ガザフ
「よし…これから古代戦艦アウローラが眠っていると思われる地下5階へと向かおう…みんな、準備は大丈夫か?」
メル
「大丈夫だよ〜パパ♪」
フレイ
「ウォードの血を捧げるっていうのがよくわからねェけど…とりあえず行ってみねぇと…」
ネリア
「そうだな…地下5階へ行こう」













場所は変わり、地下5階。
辺りを見回すと、そこには今まで見てきた階となんら変わらない場所。
古代戦艦アウローラが眠ると思わせるような場所は見当たらない。


フレイ
「なんだよ此処…どこに隠し扉があるってんだァ?」
ネリア
「うむ…私はこの階まで行ったことが無いからのぅ…思い当る場所は無いのか、ウォード」
ウォード
「私は…―ッ?!」



ウォードはふと何かを思い出したのか、最後まで言うのをやめた。
そして目を見開き、とある記憶がウォードの脳内にフラッシュバックする。




【ウォード…この言葉を必ず覚えておきなさい…】

【この言葉は…守護騎士である私たちにとって大切なモノよ】

【その言葉は…―】






ネリア
「ウォード…?」
ウォード
「!!あ…す、すみません…」
フレイ
「ウォードどうしたんだ?ボーっとしてたぞ?」
ウォード
「…気にするな。さぁ…古代戦艦アウローラがありそうな場所を探そう」


そうウォードは言うと、一人で先に前を歩み始めた。
それに続いて、皆も隠し扉があると思う場所の捜索を開始する。











それから30分も経っていないだろう。


りん
「分かりませんね…一体どこに入り口が…―ん?」


りんは注意深く古代戦艦アウローラが眠る入り口を探している最中、気配を感じ左方向を見ると、自分から6mほど先にいる、柱に死角になって見えないが誰かがいることを察知する。


りん
「…だれ…ですか…ッ?!」
りん
(まさか…守護騎士の生き残りがいるんでしょうか…?)

???
「ぅ…ゲホッゴホッ…カハッ!!」
りん
「!?だ、大丈夫ですか!!」


咳き込んでいる声が聞こえた瞬間、りんは顔を青冷め、柱にいると思わしき人物の方へと足早に近づいていく。
そして柱の裏を見ると、さっきまで気配を感じていたはずのそれが居なかった。


りん
「あれ…おかしいですね。確かにここに誰かいたはずなんですが…ッ」


姿も見えない…絶対誰かいたはずだと、りんは周囲を見当たしていると―


アルヴォンド
「ん?どないしたんや…りんちゃん、なんかあったんかいな?」


りんの後ろから、そう言いながら歩いて近づいて来るアルヴォンドの姿があった。


りん
「あ、アルヴォンドさん!!あの…実は此処の柱に誰かいたんです。…すごく辛そうに咳き込んでらっしゃったので…まさか他の守護騎士さんがいらっしゃるんじゃないかって…駆け寄ってみたんですが…見失ってしまって…」
アルヴォンド
「ふ〜ん…幽霊となんかとちゃうか?」
りん
「な…ッ?!」
アルヴォンド
「アハハ!冗談に決まっとるやないか…ホントにりんちゃんはおもろいなぁ〜♪」
りん
「変な冗談を言うのはやめてください!もぉ……早く隠し扉を探しますよ!」


そうりんは頬を膨らまして怒りながら、アルヴォンドの後ろを通り過ぎる。
そのりんの後ろ姿を、アルヴォンドは苦笑しながら見つめていた。


アルヴォンド
「ほんと…可愛いなりんちゃんは…―ふぇ…?!」


そう言いながら壁に肘をよりかけていたら、ふと、違和感を感じた。

アルヴォンド
「なんや此処…?」


アルヴォンドはその壁を叩いたり押してみたり、色々と試してみる。
そしてアルヴォンドは口角を上げると…



アルヴォンド
「フレイくーーん!ネリアちゃーん!!皆ぁあ!!!隠し扉発見したでぇえ!!!」


そう皆に聞こえるように大声でアルヴォンドは叫んだ。


フレイ
「よっしゃぁあ!さっすが考古学者!!」
フィーネ
「ウフフ…かっこいいわよ〜アルヴォンドくん♪」
アルヴォンド
「うひゃひゃ〜いや〜偶然やって♪」
りん
「はぁ…本当、アルヴォンドさんったら…ッ;」




そして皆がアルヴォンドのもとへと集まり、そして守護騎士であるウォードが前に出て壁を見つめていた。


フレイ
「これ…一体どうやったら扉が開くんだ?」
イルフォンス
「ぅ〜ん…守護騎士の血を捧げる…ということだから、ウォードの血をこの壁に塗ればいいのかな?」
アルヴォンド
「いや…その可能性もあるっちゃあるけどな〜…。この手の封印解除は結構そのまんまの意味でやらないのが掟や…そう表現しているだけなんやて」
メル
「どういうことなの、アルお兄ちゃん?」

アルヴォンド
「“守護騎士の血を捧げる”…つまり守護騎士だと分かる何かが鍵ってことなんや。守護騎士である証を示すことでこの扉は開く…って感じやと思うんやけどな…」
ガザフ
「なるほど……ウォード、守護騎士である証と言うのは何のことか分かるか?」
ウォード
「……」
フレイ
「?どうしたんだよ?さっきから黙って…―」

そうフレイが言いかけたとき、ウォードは壁に両手を当て始めた。
急な行動に皆は驚く。


フレイ
「ウォード?何して―…?!」


言おうとした瞬間、フレイ達は目を見開いて驚く。

ウォードの身体から淡い青色の光が現れる。
そして目を瞑り、生心力(ヴィオゼーラ)を放出する事に集中する。


ウォード
「我 守護騎士 ウォード・フォコンの名において示さん…トゥルス ルワ ヨオン エレスティア…!」


そう何かを唱えた瞬間、ウォードが触れている壁から広がるように淡い緑色の光が灯され、そして地震にも似た振動が起こった。
そして地震が収まったかと思うと、目の前の壁に亀裂が生まれ、そして大きな振動と共に扉が開き、道が出来る。
その先はろうそくの火だけ灯されている狭い道だ。


フレイ
「な…ッ!?;」
ネリア
「ウォード…その言葉は…?」


生心力(ヴィオゼーラ)の放出をやめて、ウォードは後ろにいる皆の方へ向いた。


ウォード
「この言葉は…お母様から授かった言葉なんです。代々受け継がれていると、必死に覚えさせられていたのですが…。まさか…これが鍵だったとは思いませんでした」
フレイ
「…良かったな、ウォード。あるじゃねぇか…大切な宝物が…よ」
ウォード
「…フッ、あぁ…そうだ…な」



そうウォードは小さな声で言うと、自分の手を見つめて、



ウォード
(お母様…お父様…どうか遠くから見守っていてください…)


フレイ
「よし、この奥に古代戦艦アウローラがあるんだな…!」
メル
「きゃはは!楽しみだなー♪」
フィーネ
「薄暗いから…足元に気をつけて進みましょう、皆」
りん
「はい!」


そう皆は言うと、古代戦艦アウローラへと続く狭い道を進んでいった。








そうして、狭い道を進んで10分ほど経っただろうか…


フレイ
「!!あれが…ッ!」
イルフォンス
「古代戦艦…アウローラ…か」
フィーネ
「あら…かっこいいわね…♪」
メル
「うっわぁあああ!!すっごい大きい乗り物だねー!!」


道を抜けると、広い部屋の中に大きな乗り物が…
そう、これが古代戦艦アウローラである。

皆は古代戦艦アウローラに近付いてみた。
よく見てみると、この戦艦は大昔のものだというのにもかかわらず、新品のように綺麗である。


ガザフ
「ほぉ…大昔に作られたモノだというのに…こんなにも保存状態が良いのは珍しいな…。それほど此処は保存に適しているんだな…」
アルヴォンド
「もしかして…この乗りもんは失われた古代鉱物で作られたんとちゃうか?古代鉱物は、腐らず錆びることなく美しい状態で保たれるとして、遥か昔に高値で買い取られていたっちゅー話やからな」
ガザフ
「なるほど!だが…失われた…とは?」
アルヴォンド
「俺が今まで調べて分かったのは…例のアリスタ誕生直前まで起こった天災のせいで消失したとのことらしいで…」
ガザフ
「残念だ…その鉱物を使って武器を作ったら…素晴らしいモノが出来ていたのだが…な」
アルヴォンド
「あはは!残念やな―おっちゃん♪」


そう二人が会話している横に、ウォードは古代戦艦アウローラに近付いては感触を確かめるかのように触る。


ウォード
「本当に眠っていたんだな…驚いた」


そう言っては、古代戦艦アウローラの入り口だと思わしき場所へと近付く。


イルフォンス
「此処がどうやら入口のようだね」
ネリア
「…なぁ…どうやって中に入るのだ?」
フレイ
「ぁ…」
アルヴォンド
「せやな…あの本の中には古代戦艦アウローラの操作方法や入り方とか、何にも書いてあらへんかったもんなぁ…」
フィーネ
「またウォードくんが証を示せばいいんじゃないのしら?」
ウォード
「うぬ…では試してみよう」


そう言ったウォードは、再度扉の封印を解除した時と同じように証を示してみた。

だが、何も反応すら示さない入り口を見て、皆一斉にため息を漏らす。


フレイ
「ウソだろ…此処まできて中に入れねぇとか…終わりじゃねぇかッ…!」
メル
「大きい乗り物の中に入って遊びたいよぅ…」
ウォード
「うッ…す、済まない…皆」
りん
「ウォードさんのせいじゃないですよ!」


皆はこの先どうすれば良いか、考え始める。
メルは皆黙り始めたのを見て、ため息をついてとぼとぼと古代戦艦アウローラを見回わしてみた。


メル
「ん…あれ?なんだろ…これ」


メルが見たものは、自分の背よりすこし低めの場所にある、ぽっかりと何かが抜かれた丸い空洞があった。
しゃがんでメルはずーっと見ていると、メルの姿がいない事に気付いたガザフが慌ててメルの所へやってきた。


ガザフ
「メル!急にいなくなるから心配した―…ん?メルどうしたんだ?」
メル
「パパ見て!これ…何か大きい穴が開いてるの!」
フレイ
「なんだって!?」
アルヴォンド
「!!よぉ見せてみぃ!」


そう言って皆はメルの所へと近付き、メルはその場を離れると、駆け寄ったアルヴォンドがその空洞をまじまじと見始める。


イルフォンス
「どう…アル、何か分かったかい?」
アルヴォンド
「……もしかして…これは入り口や操作するのに必要なコアかもしれへんな」
ネリア
「こ…あ…?なんだ、食べ物の名前か?」
フレイ
「ちっげぇええよ!!コアっていうのは、機械を動かす為に必要なモノのことを言うんだ」
ネリア
「そうなのか…初めて聞いた」
フレイ
「ったく…3500年も生きてて何してきたんだよ…テメェは;」
ネリア
「む…?!それはどういう意味なのだフレイ!!」
フレイ
「そのまんまの意味だっつーの!!」
ガザフ
「ぁあああっもうやめろ二人とも!!ったく…」


そう二人の喧嘩をガザフは治めると、大きなため息をついた。


りん
「そのコアは…一体どこにあるのでしょうかね…?」
フィーネ
「困ったわね〜…」
アルヴォンド
「―…!まさか…ッ」
イルフォンス
「何か思い当る事でもあったのか…?!」


目を見開いて何か思い出したような表情を見せたアルヴォンドを見て、イルフォンスはすかさず質問する。


アルヴォンド
「せや…昨日見た本の内容を思い出したんや!…地上世界には精霊、天空世界には聖獣カエレスティスによって保たれてる。その聖獣カエレスティスが古代戦艦アウローラのコアの宝珠を持ってるっちゅーのを…な」
イルフォンス
「どうしてそんな重要な事を早く言わないんだ!!!」
アルヴォンド
「うひゃー!!;せやかて…中々言うタイミングが掴めなくて…気付いたら忘れてたんやぁ;そう怒らんといてぇ…;」

ガザフ
「聖獣カエレスティス…そのようなのが存在するとはな…」
ウォード
「聖獣カエレスティス様は、この天空世界を護る…第2の天空神として崇めらているんだ」
ネリア
「ふむ…そういえば…一度も聖獣カエレスティス殿の姿を見た事がないのう…」
フレイ
「え!?今まで生きてきて一度もか!?」
ウォード
「いや、ネリア様だけじゃない。誰一人…聖獣カエレスティス様の姿を見た事が無いのだ」
りん
「精霊と同じように、聖獣さんがいらっしゃる祠のような場所はないのですか?」
ウォード
「分からない…どこにあるのかも明らかになっていないな。むしろ…本当に存在しているのかどうかも怪しまれているんだ」
フィーネ
「でも、そのコアを持ってるんだから…生きているはずよねぇ…きっと」


そう皆はそう言い終わると、黙ってしまう。
その空気をすぐ切ったのは、フレイだった。


フレイ
「考えても何も始まらねェし…とりあえずガーディアンを出て天空世界(スカイピア)を周ろうぜ?そうすれば聖獣カエレスティスの住処が見付かるかもしんねぇしよ」
ガザフ
「ハァ…フレイの言うとおりだな」
ウォード
「それなら、ガーディアンからほど近い大陸にある街「クッティル」へ行こう」
メル
「でも…どうやってその大陸に行くの?メル達飛べないよ?」
ウォード
「地上の大きな門の近くにあるひし形の魔方陣がある。それを使ってクッティルへ移動することが出来るんだ」
イルフォンス
「僕とアルの移動心術を使ったらダメなのかい?」
ネリア
「今もまた蝕死力(ブラジェーラ)が発生しているかもしれぬ…どうだ、りん」


そう言われたりんは、念じてみると、生心力(ヴィオゼーラ)よりも圧倒的に蝕死力(ブラジェーラ)が溢れていることが目に見えて分かった。


りん
「はい…ネリアさんの言うとおり、蝕死力(ブラジェーラ)がまた溢れていますね」
ネリア
「蝕死力(ブラジェーラ)はヒトの心術にも影響する。今回は運よくガーディアンに飛んだからといって、次はこうも上手くいくとは限らないからのぅ」
ウォード
「スカイピアで使われている魔方陣は、独自に創られたもので、蝕死力(ブラジェーラ)の影響を全く受けない特殊な移動心術なんだ」
アルヴォンド
「さよか…」


会話が終わり、フレイはさっき通った狭い道の前に立つと、


フレイ
「そうと分かったらクッティルに行こうぜ!早くそいつを見つけ出して、古代戦艦アウローラを動かして地上に戻ろう!!」
ネリア
「そうだな…よし、クッティルへ行くぞ皆」


ネリアとフレイの言葉に同調し、皆はフレイの跡を追って地上へと向かって歩いて行った。












ベルザンド
「此処は…川…か」

場所は変わり、太陽の明かりがまぶしい朝、ベルザンドは森の中を彷徨っていた所、川のほとりへとたどり着いた。
そして、川へ近付き、覗いてみると自分の顔が映っている。


ベルザンド
「ぅう〜ん…俺様の顔…いつ見ても、う・つ・く・し・い〜…♪」


そう自分の顔を見て満足したのか、ベルザンドは後ろにある木の幹へと移動し、寄り掛かるように座りこんだ。


ベルザンド
「ふぅ…ちょっと一休もうか―…ん?」


座り込んで俯くと、視界右端に何かが入った。
右へと顔を向いてみてみると、草木生い茂る地面に青いリボンが落ちていた。
リボンを見た瞬間、ベルザンドは目を大きく見開いて驚き、それを手に取り始める。


ベルザンド
「これは…キースがいつも髪を結ぶときに使ってる…!…ここにいたのか!?くっそ…キース!!どこにいるんだ!!キース!!」

???
「そいつはもういないぜ…」

背後から聞こえた男の声に気付き、ベルザンドは後ろを振り向いた…その時、



―ドゴッ


ベルザンド
「なッ…!?;」


後ろを振り向いた途端、その声の主の者に頭を思い切り何か堅いモノで殴られる。
そのままゆっくりと地面に力なくベルザンドは倒れ、薄れゆく意識の中…きつく握りしめるキースの青いリボンを見つめて…小さく呟いた。


ベルザンド
「キース…必ず……生きてて…くれ…ッ」


そう呟くと、ベルザンドは頭から血を流しながら…ゆっくりと意識を失った。
その姿を、その声の主は見て高笑いする。



???
「ハハハハハハ!!忌々しい地上人め…ここに来た事を後悔させてやる…ッ」



川の流れる音が…静かに、そして切なく…この森の中で響き渡ってくのであった。










NEXT…




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