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物語
第1話 天空世界




【心魔砲】(アストランタ)によってワープされるフレイたちは、次元の歪の中で遠くの光に向かって吸い込まれている感覚に襲われていた。

フレイ・イルフォンス・ガザフ・ネリア
「うわぁあああああああああああああああ!!」

皆はなすすべもなく次元の中を彷徨っていく。
そして光が大きくなり、視界が白に塗りつぶされた瞬間…
ふわっと落ちるような感覚に襲われたと思うと、床に倒れるような音がしたのと同時に痛みが走る。

そうか、どこかに飛ばされて着いたんだ…そう頭が理解し、目を開けてみると…そこは…




天空世界編
第1話
「天空世界」




フレイ
「んぁ…此処は…誰の部屋…だぁ…ッ?;」


目を開け起き上がるとそこは誰かの部屋。
それにしても広すぎて…目を疑った。


???
「びっくりしたよ…君たち…誰かな?」
フレイ
「!?うぉぁあああ!?!だ、誰だよお前!!!;」


急に目の前に現れた金髪でおかっぱ姿をした男の人に驚いて、フレイは後ずさりすると、後ろの壁に思い切り頭をぶつけては悶絶した。


???
「!ははッ…、それは僕のセリフさ…勝手に他人の部屋にやってくるなんて…それ、不法侵入って言うんだよ?知ってる…君たち?」
フレイ
「痛〜…;こ、これには…その…ワケが…ッ;」
???
「?ワケって…―あれ?もしかして…オレンジ色の髪と黒い髪の人は…天空神さまと守護騎士じゃないか…!」


そう彼が言うその視線の先を見ると、そこには未だに意識を失っているウォードの前に、起き上がり座り込んで彼をずっと見つめるネリアの姿があった。
それ以外の仲間は皆意識を失っているようである。


フレイ
「ぇ…?お前…どうして…ネリアとウォードの知り合い…か―」
???
「いやぁ〜いつ振りだろうねぇ…?ネリア様…ウォード様?」
ネリア
「ぁ…ぁあッ…!」


ネリアをよく見ると、自分の身体を抱きしめ縮こまり怯える彼女の姿を確認すると、フレイは嫌な予感を察知し、すぐにネリアとウォードを護るように前へと立ち塞がった。


フレイ
「ネリアが怯えてるじゃねぇか…お前、ネリアに何をしたんだッ!!」
ネリア
「フレ…イ…ッ!」
???
「あはは!!自己紹介が遅れたね…」


そう言った瞬間、彼の背中から透明で美しい光の羽のようなものが出現した。
それを見たフレイは、呆然と見つめる。


フレイ
「光の…羽…ッ?」
???
「僕は天空世界都市シエル王国第87代目国王であり天使種族のローリアンス・シエルだ。以後、お見知りおきを…醜い地上人様…♪」
フレイ
「ローリアンス…だって…ッ!?」
ローリアンス
「おや…その様子だと…天空神様から今までの詳しい事の流れを聞いていたようで…?」
ネリア
「…ッ!」
フレイ
「…ッ!ネリアとウォードを…此処で殺すつもりかッ!!」


そう叫ぶとフレイは戦闘の準備をすると、それを見たローリアンスは高笑いをし始めた。


フレイ
「な、何がおかしいんだッ!」
ローリアンス
「はは…いや……僕は君たちを殺すつもりなんてさらさら無いよ?」
ネリア
「ぇ…?」
フレイ
「どういう意味だ!」
ローリアンス
「別に…そのまんまの意味さ。殺すつもりなんかない…だから…どうぞ、お逃げください♪」


ローリアンスはにっこりとほほ笑んでそう言った。
その様子を見て、フレイはまだ何か怪しいと睨み、まだ武器を鞘に戻そうとしなかった。


ローリアンス
「はぁ…ったく、これだから醜い地上人は…;警戒心が強いようだね…いや、信用されていないって言った方がいいのかな?」
フレイ
「当然だろッ…ネリアの友達やウォードの家族を…守護騎士を殺したムカつく奴の言葉を誰が信じるかってんだッ!!!」
『その通りだよ…フレイ』

フレイ
「!?イルフォンス!!」
イルフォンス
「どうやら僕たちの敵のようだね…!…ローリアンス、君の言うとおり、此処から逃げさせてもらう…よ!!」


やっと意識を取り戻したイルフォンスはそうローリアンスを睨みあげて言うと、フレイたちを囲むような魔方陣が展開され、そのあとすぐにフレイたちの姿は消えてなくなってしまった。
姿が無くなったのを確認した後、ローリアンスは床に落ちている何かを見つけ拾ってそれを見ると、大きく笑い始めた。


ローリアンス
「ハハハハハハハッ!!!…くくッ…良いモノを落としてくれたね…好都合だよ。それに…移動心術を使えるなんてね…ッ!でも…残念ながら君が望んでいる地上世界(アスピア)には一生帰れない…」


―地上人への恨みと…衰退世界の苦しみに押し潰されて…死ぬんだからね…ッ!!―








―シュンッ…ドササッ


フレイ
「イテテ…;んぁ…今度は何処に飛ばしたんだよイル…?」
イルフォンス
「おかしいな…目的はルイセンドの森で念じたはずなんだけど…全然違う所に飛ばされたみたいだね」


次にフレイたちがイルフォンスの移動心術によって飛ばされた場所は、見覚えのない若干薄暗い街の中。
よく見ると、あたりは瓦礫や地面や床にはひびがあったり、どこかカビ臭かったりと、ボロボロな印象を与えた。


フレイ
「なんだ…此処…?」
ネリア
「此処は…ガーディアン…?!」
フレイ
「ガーディアン!?此処が…ネリアとウォードの故郷だっていうのかよ!!」
ネリア
「ぁあ…!…この匂い…景色…多分、シエル軍に襲撃されたから傷跡がそのまま残っていたのだな…間違いない、此処はガーディアンだ!」
イルフォンス
「母さんから聞いていたよ…此処がガーディアンか…」
りん
「ん…んぅ…ッ?フレイ…さん…此処は…?」
フレイ
「!りん…それに皆も…!やっと目が覚めたんだな!良かった…」


りんと同じくしてアルヴォンド、ガザフと…次々皆も目を覚ましていった。
その様子を見てホッと胸をなでおろすフレイ。


ネリア
「…ひとまず確かめたい事がある…此処1階のどこかに地下2階に続く階段があるはずだ…此処の事は歩きながら話すとしよう」
フレイ
「分かった…皆、動けるか?」
メル
「疲れてないし痛くない…なんで?」
イルフォンス
「僕がアニマで回復したからね…」
フレイ
「そういやそうだったな;…よし、行こう!」














場所は変わり、此処はガーディアン地下2階。
奥の方へ進み大きな扉を開けて入ってみると、そこには円筒の形をした祭壇があった。


フレイ
「なぁ…ネリア、なんだ此処は?」
ネリア
「この祭壇の上で…私は毎日歌を歌っているのだ」
ガザフ
「確か…「鎮生歌」(アルタ)、だった…か?」
ネリア
「ああ、それもそうだが…他にも、毎日欠かさず行っている歌がもう一つあるのだ」


そう言うと、ネリアは身体の向きを祭壇から後ろにいる仲間の方へと変えた。


ネリア
「お前たちにこの世界…天空世界(スカイピア)の事を説明しなければいけないな」
フレイ
「なんでだ?…空が飛べる種族がいるだけじゃねーのかよ?」
ウォード
「それは一般常識にすぎない…それよりもっと重要な事を説明しなければならん」
フレイ
「重要な事…?」


ネリアは少し俯くと、すぐに前を向いて口を開いた。


ネリア
「天空世界(スカイピア)は別名「衰退世界」と呼ばれている」
りん
「衰退世界…?」
アルヴォンド
「っちゅーことは…俺らの地上世界(アスピア)は繁栄世界って事かいな?」
ネリア
「そうだ。天空世界(スカイピア)は生心力(ヴィオゼーラ)の悪性化…つまり、負の感情の基となる蝕死力(ブラジェーラ)で構成されいるのだ」
ガザフ
「なんだって!?」
ネリア
「その大量の蝕死力(ブラジェーラ)があるおかげで、ヴィオゼリンクを通して大量に地上世界(アスピア)へろ過された生心力(ヴィオゼーラ)が送られていく…地上世界(アスピア)は天空世界(スカイピア)の蝕死力(ブラジェーラ)のおかげで保っているのだ」
ウォード
「だが逆に地上世界(アスピア)から送られてくる生心力(ヴィオゼーラ)は、天空世界(スカイピア)の大量の蝕死力(ブラジェーラ)に耐え切れずすぐ悪性化してしまう。だからネリア様は微量に残るヴィオゼーラをモノに定着させる「鎮生歌」(アルタ)と同時に、天空世界(スカイピア)中に漂う蝕死力(ブラジェーラ)をヴィオゼーラへと変化させる「浄化歌」(メレウ)を歌って天空世界(スカイピア)はなんとか保たれている」
ネリア
「天空世界(スカイピア)中に溢れる蝕死力(ブラジェーラ)の原因は、地上人に対する恨みが積み重なって溢れていると伝えられておるのだ…それは昔から減少することなくむしろ増え続けているらしい。「鎮生歌」(アルタ)と「浄化歌」(メレウ)の効果は以って1日…だから毎日歌っているの…だが…」
イルフォンス
「しばらくネリアが歌えない状況が続いて…この天空世界(スカイピア)は以前より増して蝕死力(ブラジェーラ)が悪化している…だからここに来た僕たちの生心力(ヴィオゼーラ)にも変化が出てきている…そうだね?」
りん
「!それじゃ…目が覚めてから続いているこの不安な気持ちは…」
ネリア
「蝕死力(ブラジェーラ)の影響だな。そしてヴィオゼリンクが無くなった今、天空世界(スカイピア)に溢れていた蝕死力(ブラジェーラ)が地上世界(アスピア)へと流れておるだろうな…。これから少しずつ地上世界(アスピア)にも影響が出始めることだろう…ッ」
アルヴォンド
「……蝕死力(ブラジェーラ)…か…」


皆がこの世界の事を知り悩む姿をよそに、ネリアは一人祭壇へと続く階段を歩いていき、そして祭壇へあがった。


フレイ
「ネリア…何を…―」





フレイはネリアに話しかけようとしたその時、ネリアは祭壇上で優雅に舞い踊りはじめた。
優しく、でも力強い声で歌うそのネリアの姿に皆圧倒されていた。
そしてネリアの周囲の祭壇から淡いオレンジ色の球体の光が現れる。
雪のように降り積もるそれに皆が手に触れた瞬間、その光が優しく皆の身体を包み込んていく。


フレイ
「暖かい…これは…」
ウォード
「これが空気中に漂う蝕死力(ブラジェーラ)が生心力(ヴィオゼーラ)に変化した瞬間だ…」
りん
「暖かいです…」
メル
「うわ〜綺麗…!」
ガザフ
「…さっきまでの不安な気持ちがどっかいったな…」
フィーネ
「綺麗ね…ふふ…♪」
アルヴォンド
「暖かくて気持ち良いな〜…」
イルフォンス
「ぁあ…そうだな…」





ネリアは「浄化歌」(メレウ)を歌い終わり踊りをやめた瞬間、淡い光は消えてなくなっていった。


ネリア
「どうだ…気持ちが楽になっただろお前ら…」
フレイ
「ぁあ…すげぇなこれ!」
ネリア
「だがヴィオゼリンクが無くなった今…一日も持たないだろうな…それに、此処の祭壇でしか「浄化歌」(メレウ)と「鎮生歌」(アルタ)は歌えないからな…どうしたものか…ッ」
イルフォンス
「……オリジン、マクスウェル」


そうイルフォンスは言うと、オリジンとマクスウェルの姿が現れた。


マクスウェル
「どうしたのだイル」
オリジン
「うへ〜どうしたのぉ?」
イルフォンス
「あの祭壇なんだけど…持ち運べてコンパクトな形にする事って出来ないかな?」


イルフォンスの言葉を聞いたオリジンとマクスウェルはその祭壇を眺めていく。


マクスウェル
「出来るぞ…ただ、いつもより生心力(ヴィオゼーラ)の消耗が少々激しくなるが…」
イルフォンス
「全然かまわないよ…この世界の為だからね」
オリジン
「りょうかい☆」
フレイ
「な、何すンだよイル!?」
イルフォンス
「此処でしかできないなら…持ち運んでどこでも出来るようにするって事だよ♪」
オリジン
「あ、あとノームの力も必要だから…アル、よろしく!」
アルヴォンド
「りょ〜かーい!ノーム!!」
ネリア
「なるほど…精霊にはこのような使い方も出来るのだな…」
ノーム
「ふぇ…ぼ、ボク…がんばるッ」
アルヴォンド
「ネリアちゃん!祭壇から降りぃや〜危ないから♪」
ネリア
「了解した」


そう言ってネリアは軽々と飛び降りて祭壇から離れる。



イルフォンス
「ちょっと時間かかるから…その間君たちはどこか散歩したりして休憩してきてくれないかな?」
フレイ
「…りょ〜かーい!」
ネリア
「済んだら呼んでくれ二人とも」
アルヴォンド
「任せときぃ♪」


そうしてアルヴォンドとイルフォンス以外は祭壇の部屋を後にした。
祭壇を出た事を確認したイルフォンスは普段より低い声でアルヴォンドに話しかけた。


イルフォンス
「なぁ…アル」
アルヴォンド
「なんや〜イル?」
イルフォンス
「君…何を考えてるんだい?」
アルヴォンド
「なんの事や…?」
イルフォンス
「とぼけても無駄だよ…」
アルヴォンド
「そんな事より早よしようやないか〜♪」
イルフォンス
「……昔から君のそういう所が嫌いだよ…」
アルヴォンド
「なんか言うたか?」
イルフォンス
「なんでもないよ…さて、始めようアル」




そのイルフォンスの合図で祭壇からまばゆい光が発せられていった。







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