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物語
第6話 正反対と正論




???「何とか一命を取り留めました。この国に来なければ彼は死んでいたでしょう」
ガザフ「あ、ありがとうございます…ぇと…沙月…」
???「わたしは沙月らんと申します。気軽にらんと呼んでください、ガザフさん」
ガザフ「ぁあ、では…らん。先ほど言っていたこの国に来なければ…というのは?」
らん「ご存じないのですね、この国ハイカラは他の国より圧倒的に医療の技術が進んでいる国なんです。もし私のところに来なければ…そういうことです。運が良かったですね」
ガザフ「ほ、本当だな…ぇと、フレイはいつ動いてもよい状態に?」
らん「1か月ほど安静にしないと無理でしょう。重症です…完全に傷口が閉じるまでには時間がかかります」
ガザフ「なら大丈夫だな。では、此処を1週間で出る」
らん「?!!しょ、正気ですか?!!」
ガザフ「実は…」







【第6話 正反対と正論】






ガザフ「よう〜アルヴォンド!お前ちゃんとフレイを看てたか―…って、あれ?」


フレイが眠る病室にはフレイだけで、隣のベッドに寝ていたネリアの姿も看病していたアルヴォンドの姿もなかった。
ふと机を見ると、置手紙が置いてあるのに気が付いた。



ガザフ「ナンパしに行ってきまぁす♪BYアルちゃん ちょっと出かけてくる ネリア か…はぁ、勝手にやりやがって…ネリアはわかるとして…アルヴォンドの奴…後でお仕置きだ」


そうため息を吐いてはフレイのベッド横に置いてある椅子に腰かけるガザフ。
いまだに目を覚まそうとしない息子の顔を見て、顔をゆがませた。


ガザフ「フレイ…おれはお前に隠していることがある。それをいつか話したとき…おまえはそれでも、おれを…親父と、言ってくれるか…?」













*****************









場所は変わって、此処は沙月堂から少し離れた観光名所として有名の一つ、三千夜桜。
この大きな幹とただっぴろい桜の花の多さに圧倒されるこの桜は、三千年も生きている。
夜になるとこうやってライトアップされ、さらに幻想的な美しさを放って、さらに観光客の目を引く。
その桜を一望できるベンチに膝をたたんで顔をうつむいているネリアの姿。
それを見つけた、沙月堂の沙月らんの娘、沙月りん。
彼女はネリアを見つけると、彼女の隣に静かに腰かけた。


りん「あのガザフさんという方からお聞きました。彼…フレイさんって言いましたよね?貴方をかばって重傷負ったそうじゃないですか。身を呈して護ってくれる人がいるなんてすばらしいことです!だから、そんなに落ち込まない方が良いですよ?彼が目を覚ましてあなたの悲しんでる顔を見たら…ショックを受けると思いますから」
ネリア「…が」
りん「ぇ?何か言いましたか―」



ネリア「私などあのとき刺されて死んだほうがよかったのだ…」
りん「ぇ…」
ネリア「私など生きていても仕方のないやつだ…生きる価値もない。だから私は…早く死にたい。もういやなのだ…」
りん「なに言って」
ネリア「わたしなんか生きていてもたくさん不幸が生まれるだけなのだ…現にあいつはわたしのせいで不幸になった。わたしなんかが死んでもだれも悲しむ者はいない・・・むしろ心から喜ぶはずだ―」





―パァンッ!!!




ネリア「…ッ?!」
りん「―…ッ!!」



りんがネリアの頬に放った平手打ちの音が、静かに響いた。
そしてその行動に目を見開いて驚くネリア。
彼女の瞳には眉間にしわをきつく寄せて睨みつけるりんの姿が映し出されていた。



りん「最低です。誰かに助けてもらったのに…助けてもらった命があるのに「死にたい」なんて!!」
ネリア「…ッ!おまえに私の何がわかるのだ!わたしは――」
りん「知らないですあなたのことなんか。でも少なくとも助けてくれた命があるのに死にたいと思うあなたの心が理解できません!!」
ネリア「!!貴様―」










???「ぁーあ、うるさいなぁ…僕の睡眠を妨げないでよぉ…むにゃむにゃ」
りん・ネリア「?!!」
???「消えて」



どこからともなく男の声が聞こえたかと思いきや、急にネリアとりんの目の前に風属性心術「ウィンドカッター」が発動され二人に襲いかかってくる。
急に襲いかかってきたのでとっさに避けることもできず、二人は直撃すると思い目をきつくつむった。



―ザシュッ!!



切る音は聞こえた。だが痛みを全く感じない二人は何事かと思いつむっていた目をゆっくりとあける。
そこには―――





アルヴォンド「ぅぐ…ッ!!?」
りん「ぁ、貴方は…!」
ネリア「アルヴォンドッ!!」


目の前にいたのはアルヴォンドだった。彼は二人を守るため背中に攻撃をくらった。
激痛に顔をゆがめる彼だが、我慢をして後ろにいる攻撃を放った張本人へと体の向きを変えた。
その時に彼女ら二人は背中から大量に出血している彼の姿が映される。

3人の目の前にいるのは人間より2倍くらいの高さのけがふわふわした、くまと羊を合体したようなよくわからない生き物が立ちふさがっていた。


ネリア「な…いつから私たちの近くに―」
アルヴォンド「誰や自分…ていうか、このようわからん生き物が喋るんかいな?ンなあらへんよなぁ?いいから……姿現さんかい、ボケェ!」


???「だからうるさいんだよ…眠たいのに…ったく…!」


そうまた同じ男の声が聞こえたかと思うと、その生き物の頭の上から覗き込む人物が一人。
どうやらその生き物の頭に乗っかっているらしく、3人を見下ろしていた。


アルヴォンド「自分誰や…」
???「ぼくぅ?ぼくはグリュエル騎士団ナンバーYのソルティー・バレイル」
ネリア「!!グリュエル…騎士団…だと…ッ!?」









第7話に続く…

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あきゅろす。
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