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本日も晴天なり
やりました!
実行委員の手から、自分たちの色の玉が天高く舞う時のわくわく。

それがひときわ高く飛び上がって、もしかしてこの玉が最後だったのか、のどきどき。

玉入れの醍醐味の一つである。


『――得点が出揃ったよ!
 赤組36点! 青組36点! 白組33点!
 赤と青が同点だけど、自力の得点を比べると赤組32点・青組29点なので、勝者は赤組!!
 おめでとー! 見事な戦いでした!』

「や、やった! やったよぉ、おれたち1番ー!」
「やったね荻原くんっ! 勝ったね!」


ばんざーい! とぴょんぴょん飛び跳ねていると、同じようにこぼれんばかりの笑顔でぴょんぴょんしていた雀部が、千歳に抱きついてきた。

結構な勢いだったけれども、千歳もテンションが跳ね上がっているので思い切りぎゅうっと抱きしめ返す。

やった!

雀部以外のチームメイトたちとも喜びのハグやハイタッチをして回り、最終的には全員で団子になっていた。


喜びを分かち合う、これすなわち絆を深めることにつながる。

とても楽しくて合理的なことなのだ。

実際、今まで話したことがない人たちともずいぶん打ち解けた気がする。


『おーい! 赤組の諸君やーい!
 嬉しいのはよおおおく分かったから、そろそろ退場しようね!』


……さすがにはしゃぎすぎたらしい。

千歳はちょっぴり頬を赤くしながら、仲間たちと共に急いで退場門へと向かった。


それぞれに元々陣取っていた場所に散っていき、千歳ももちろん幼なじみたちや岩崎の待つ芝生を目指す。

少し手前から助走をつけて、ぴょーんと飛びつけば目標達成である。


「りょー! おれがんばったー!」
「ああ。お疲れ様。勝ててよかったな」
「うふふー」


ぎゅーっと抱きついてうりうり鼻先を摺り寄せれば、大きな手が頭を撫でてくれた。

香水も何もつけていないはずなのに、亮哉からはいつもなんだか良いにおいがする。

それは「安心」とか「信頼」だとかに直結する香りだ。

亮哉だけが持っている、千歳をやさしく包み込んでくれる香り。


そのまましばらく懐いていれば、ふわふわしたものがうなじや首周りに触れた。

侑真が投げ寄越したらしいタオルで汗を拭いてくれているらしい。

確かに気温も上昇してきているし、激しい方ではなくとも運動をしたのだから汗もかこうというものである。


「髪も結構伸びたな。結ぶか?」
「おー、そだねぇ、汗かいちゃったしねぇ。お願いしますー」
「了解。侑真、」
「おらよ」
「サンキュ」


こういうのを阿吽の呼吸とかいうんだろうか。

侑真の準備が良いだけかもしれないけれど、なんだかこう……全てを語らずとも通じる関係……。

かっこいい……!


ちなみに、今のは千歳の髪を束ねる為のゴムの受け渡しだったようです。

そのゴムで亮哉が器用に後ろ髪をくくってくれるのに任せつつ、千歳はほにゃりと笑った。


「りょーとゆーくんはかっこいーなぁ…」
「何だ急に」
「なんかこう、仕事のできるおとこって感じがびんびん…」


腕組みしてふむふむうなずくと、頭を動かさないようにと笑みを含んだ声で諭された。

根本が軽く引っ張られる感覚。

もうすぐ束ね終わるのだろう。


ふと近づいてきた影に視線を向けると、なにやらしょんぼりしている志鶴の姿が。

なにごと!?

亮哉へのお礼もそこそこにむうっと唇を尖らせた志鶴に向き直り、頭を撫でてみたりハグしてみたり。

しょんぼりしながら千歳をおっきなおめめで見上げてくれるのは、それはもう、びっくりするぐらいかわいらしいんだけれども、いったい全体なにが起こりましたか!


「…僕は?」
「ん?」
「僕は? ちぃちゃん…」
「―――しーちゃんかわいいーっ!!」


つまり、亮哉と侑真を「かっこいー」と評したのに対し、志鶴に向けては何も言わなかったので。

ちょっぴりすねてしまったと、そういうわけだった。


「しーちゃんは天下無敵にかわいーよー! 頭いいし紅茶おいしいし優しいししっかりさんだし、向かうところ敵なしだよー!
でも結構さばさばしてるところもあって、男前でかっこいーよー!!」
「ちぃちゃん…!」


「………お前らは、そろって可愛いよ……」


ひしっと抱きしめあって花を飛ばす2人。

スマートホンをタップしながらの侑真の言葉は、そんな2人を眺める生徒たちの総意だったに違いなかった。



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