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本日も晴天なり
ピアスの意味

昨日と同じように、目覚まし時計と亮哉からのモーニングコールによって目を覚ました千歳は、顔を洗ってからおろしたばかりの制服に着替えた。

ワイシャツとスラックス、休み中に練習したネクタイを身に着け、ボタンを一つあける。

そして、亮哉がくれたピアスの箱を取り出し、少しドキドキしながら開けると、淡いピンク色の石が埋め込まれた星形のスタッドピアスが一組、ちょこんとおさまっていた。

材質はシルバーだろうか。


…かわいい。


ピアスホールのない千歳でも着けられるようになっているらしいが…。

そっと取り出すと、なるほど、マグネットピアスになっていた。

鏡を見ながら、さっそく着けてみる。


……かわいい。


かなり強力なマグネットで、外れてしまいそうな感じは全くないのに、痛みはない。

ほくほくした気持ちで部屋を出た。


「お? 千歳それピアスか?」
「ほんとだ。星? 可愛い」
「えへへ、ありがとー。これね、磁石のなんちゃってピアスなの。りょーがくれたの」


昨日と同じルートで7階へ行き、カードで7005室の扉を開錠する。

亮哉から「ちぃならチャイムを鳴らさないで入ってきて良い」と言われたので、遠慮なく入室。

後ろで侑真が「さっそくマーキングか…」とか言っているけれど、なんのことだろう?


「りょー、おはよぉ」
「おはよう、ちぃ。着けてくれたんだな。思った通り、似合う」
「うんっ、すっごいかわいい! ありがとね、大事にするから」
「…この石はローズクォーツって言って、」


亮哉は千歳の耳にそっと触れる。


「“無条件の愛、優しさ”って意味がある。それから、心の傷を癒す効果があるらしい――ちぃにぴったりだろ?」


千歳の耳に少しかかる柔らかい髪を払いながらほほ笑む亮哉に、千歳は顔が盛大に赤くなるのを感じた。

…照れる。

非常に照れる。


「あ…ありがと…」
「どういたしまして。ほら、席について待ってな。今メシ運ぶから」
「…はぁい」


大人しく、志鶴と侑真のいるテーブルに向かう。

リンゴのように真っ赤になっている千歳に、二人は案の定驚いた顔をし、首を傾げた。


「ちぃちゃん、どうしたの?」
「…りょーってば、たらしさんなの…。おれ、すっごい照れちゃった…」
「あいつ朝っぱらから何やってんだ」
「――もーっ! おれも負けないんだから! たんじょーびとか、倍返ししてやるっ」
「…何の話?」
「さあ?」


そんな千歳の魂の叫びをばっちり聞いていた亮哉にくすくすと笑われ、千歳がさらに赤くなってしまったのは余談である。

そしてそのまま盛大に照れていたため、三人の会話は耳に入らなかった。


「なあ亮哉」
「何だ」
「あれ、あのピアス、牽制?」
「まあな。ちぃは素直だから、ピアスを褒められたらそれを選んだのは俺だって大喜びで説明するだろ」
「ちぃちゃん、自覚ないみたいだけど亮哉のこと大好きだもんね。『りょーがくれたの、かわいーでしょぉ』ってにこにこしてる姿が目に浮かぶよ」
「無意識なのもうれしいけど、そろそろ自覚を持ってもらおうと思って――色々と」
「こいつスイッチ入りやがった…」




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