虎を飼う




 虎を飼うことにした。

 毛色が淡くて、体の大きな虎だ。
 年老いてはいるが、毛並みは美しく整っているし、鋭く尖ったナイフのような二つの目は知性に富んで、深く澄んでいる。

 自由の象徴のような存在、誰にも飼い慣らされるはずのない、野生の虎。
 それを、オレは飼うことに決めたのだ。



 か細い鎖の音をたてて繋がれた手首を、虎はじっと見て、
「もうちっと、太くてもよかったんじゃねえか?」
 と言った。
 鎖に繋がれたというのに、虎は暢気な顔でそんなことを言う。

 嫌がらないんですね、と言うと、虎は、
「まぁ……他ならぬお前の頼みだからな」
 そう言って、懐っこい笑顔を見せた。

「お前に飼われてやるよ、五日間だけな」


 虎は、やさしい。



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