態度で示そうよ(※18禁)・2


「カイジさん、ごめん。好きだよ」

 淡々と、真っ平らな声で告げ、アカギはカイジの反応を見守る。
 すると、カイジは横目でアカギを見て、とても冷たいその視線同様、冷え切った声で言う。
「お前、本気で悪いと思ってんのかよ。全然伝わってこねえんだけど」
「思ってるよ」
 アカギはすぐさま答える。
 嘘だけど。
 カイジの怒りを理解できないのだから、自分が悪いなんて思えるはずがない。

 カイジは胡散臭そうにアカギの顔を見て、
「わかり辛えんだよ、お前は」
 と吐き捨てる。
「本気でそう思ってんならな、言葉じゃなくて態度で示せよ、態度で」
 むくれた顔でそう告げるカイジに、アカギは固まった。

 態度で示せ?
 またしても、アカギは考える。

 土下座でもすればいいのだろうか?
 だが、そんなことしても火に油を注ぐだけのような気もするし、まず第一に、本気で悪いと思っていないのだから、なにをやっても嘘臭くなる気がする。いや、『ごめん』は嘘なのだけれど。
 こと、こういう一般人的な感覚については、カイジの方がアカギより何倍も優れているため、アカギが下手糞な嘘謝罪をしたって、カイジには見抜かれてしまう可能性大なのである。

 珍しく、アカギはすこしの間考えに沈む。
 だが、やはりこれといって妙案は思い浮かばなかったため、今回も直球で勝負することにした。

 ただし、残念ながら自分のどこが悪かったのかはわからないので、『ごめん』を態度で示すのは、諦めることにする。
 だが、一緒に伝えた『好きだよ』は本当のことなので、そちらを態度で示してみることにしたのだ。

 立ち上がり、相変わらずいじけたような顔をしているカイジの側へ回り込み、すぐ隣に腰を下ろす。
 カイジは軽く肩を揺らしたが、逃げないところを見ると、出方次第では許してもらえる可能性はありそうだ。
 胸の内を洗い浚い吐き出して、怒りが多少、治まっているのかもしれない。


 アカギはカイジに顔を近づけると、掠めるように素早くその頬に口付けてみた。
 息を飲み、カイジはアカギを見る。
「なに、してんだよ……っ」
 はっきりと驚きを露わにするカイジに、アカギは淡々と答えた。
「なにって……態度で示してる」
「……っ、」
 赤くなった目を、カイジは驚きに大きく見開く。
 だが、すぐに顔を背け、低い声でぼそぼそ言った。
「……足りねぇよ、こんなんじゃ」
 ふてくされたような物言いに、今度はアカギの目が見開かれ、その頬に淡い笑みがのぼる。
 どうやら、このやり方で正解だったようだ。


 手を伸ばしてカイジの髪をそっと避け、きつく吊り上がった目許と、ほの赤くなった傷のある頬、それぞれに唇で軽く触れる。
 すると、赤く擦れた目が自分の方をチラリと見たので、アカギはその目を見返しながら、頬の傷にそっと舌を這わせた。
 舌先でなぞるようになんどか往復していると、くすぐったくなったのか、カイジがむずかるような声を上げて身じろぎする。
 その隙を逃さず、アカギはカイジの顎を捕らえ、微かに開いた唇に、再度口付けた。



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