「おかえり」 しげカイ→アカカイ カイジ視点 短文




 もし、もういちど出会うことができたなら。
 言ってやりたいことが、たくさんあった。

「ただいま」

 目の前でそう言ったその男には、少年らしさが影も形も残されていない。
 六年。その月日の長さそのものが、目の前にはっきりと顕現したかのようだった。


 ただいま、じゃねえよ。お前ひとこともなしに出て行って、今までどこをほっつき歩いてたんだ、とか。
 元気にしてたのか、どこも怪我してないのか、ちゃんと飯食ってるのか、とか。


 もし、もう一度出会うことができたなら。
 言ってやりたいことが、たくさんあったはずなのに、

「ーーひさしぶり。元気そうじゃない、カイジさん」

 そんな風に悪びれもせず、急に懐かしい面影を覗かせた顔で、奴が笑うから。


 言うべき言葉が、話さなければならないことが、たったひとつの言葉を除いて、きれいさっぱり消し飛んでしまった。







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