ラブメディスン【その2】(※18禁)・2
その後、アカギは何事もなかったかのように酒宴を再開させた。
底知れぬアカギの言葉にわずかな恐怖心を抱きつつも、カイジも自分の水割りをちびちびと飲み進める。
今のところ、アカギの様子に変化はない。
効き目が現れるまでに多少時間がかかるのだと、佐原が言っていた。
かかるといっても、十分かそこら。しかも、酔って血の巡りが良くなっている今なら、そろそろなにがしかの変化があってもおかしくないはずだ。
やはり、眉唾物か……。佐原の野郎、次会ったらぶん殴ってやる、などと思いながら、カイジは二杯目を干したアカギのグラスに酒瓶を傾ける。
だが、アカギは手を振ってそれを断った。
「? もう、いいのか?」
アカギにしては珍しい引き際の早さに、カイジは目を丸くする。
ああ、と返事をして、アカギは床に後ろ手をついて息をつき、ニヤリと笑う。
「どうやら……本物のようだぜ。よかったな、カイジさん……」
カイジは驚き、アカギの顔を凝視する。
言われるまでまったく気がつかなかったが、真っ白いその頬が、ほんのりとうす赤く上気している。
カイジが唖然としているうちに、アカギは煩わしげに上着を脱ぎ捨て、アンダーシャツ一枚になった。
暑いのだろうか? 黒いシャツの首許をパタパタさせながら、やや大儀そうに息を吐き出すアカギの黒い両目は、いつの間にか熱に潤んでいて、それを見たカイジは思わずごくりと唾を飲む。
カイジの様子にクスリと笑うと、アカギはこころもち首を傾げ、誘うように言った。
「ほら……早く来なよ。これを、狙ってたんだろう――?」
その、噎せ返るような妖しい色気にあてられて、カイジは誘惑されるがまま、アカギの傍に寄る。
「アカギ――」
緊張に掠れた声で名前を呼べば、欲望に濡れ光る鋭い瞳が見上げてくる。
その肩をそっと押すと、アカギは素直に仰向けに押し倒された。
荒い息に上下する体にのしかかり、乱れた白い髪をそっと掻き上げてカイジは改めてアカギの表情を観察する。
(こいつ……なんて顔してんだよ……)
今まで見たこともないほど、艶っぽく濡れた表情。相手は同性のはずなのに、どうしてこんなに、ぞくりとするほどの色気を感じてしまうのか。
普段自分を組み敷いている男が、今は自分の下にいるというギャップに、抑圧されていた雄の本能が目覚めるのを、カイジは確かに感じていた。
『好きだからこそ乱れさせたい、ってのが男の性でしょ!?』
佐原の言葉がふっと蘇る。
そうだ。自分はなぜ今まで、おとなしくこの男に抱かれていたのだろう。
悪魔的なまでに色っぽい自分の恋人を、抱こうと思わなかったのだろう?
アカギを抱く。
それを意識したとたん、とどめようもないほど激しい欲望を感じ、カイジはそれに押し流されるようにしてアカギに深く口づける。
舌を引きずり出してやるより早く、アカギの方からカイジの口内に尖らせた舌を突っ込んできた。
「っ……ん……、」
自分の舌か、アカギの舌か。どちらがこんなにも熱いのかわからないけれども、とにかく、火傷しそうだと、夢中でアカギの舌を貪りながらカイジは思った。
くちゅくちゅと卑猥な音をたてながら互いの口内を競うように舐め回していると、アカギがカイジの首に腕を回し、きつく抱きついてきた。
吐息すら奪い尽くすようなキス。薄く目を開けば、とろりと潤んだアカギの瞳があって、酸欠のためではなく、カイジはクラクラと目眩を覚える。
舌を縺れさせながら唇を離すと、アカギはくたりと体から力を抜き、カイジを見上げた。
胸を大きく上下させながら、わざと見せつけるようにゆっくりと、唾液に濡れた自身の唇を舐める。
ぷつり、と自分の理性が途切れる音を、カイジは確かに聞いた。
襲い掛かるようにしてその首筋に噛みつくと、アカギの体がわずかにぴくりと動く。
歯型のついたそこを舌で舐め、強く吸い上げると白い肌に赤い花弁が散った。
「カイジ、さん――」
は、と熱い吐息を零しながら、低い声で名前を呼ばれると、直接神経を触られたみたいにぞわぞわする。
あの、アカギが。
自分の下でこんなにも淫らな姿を晒している――。
その事実に、いいようもなく優越感と征服欲を擽られ、カイジはアカギの耳にきつく歯をたてると、ふつふつと欲望を滾らせた声で囁いた。
「いい姿だな……あの赤木しげるがこんなにいやらしい奴だなんて知ったら、お前を天才だなんだと祀り上げてる連中は、いったいどんな顔するんだろうなぁ……?」
一丁前に言葉責めなどしながら、カイジは息を荒げてアカギのシャツの下に手を潜り込ませようとした。
が。
「――言いたいことはそれだけか? カイジさん――」
そう、呟くや否や、アカギはカイジの腰にガッチリと足を絡め、全身の筋肉を使ってぐるりと体を反転させる。
「……っ、えっ……!?」
完全に油断していたカイジは、わけもわからぬまま、あれよあれよという間にアカギの体の下に組み敷かれてしまった。
まだいまいち状況を把握できていないカイジを見下ろし、アカギは薄桃に染まった頬を吊り上げて笑う。
「あんたにしちゃあ、頑張ったんじゃない……? でも、もういいよ……じれったい……」
低く呟くアカギの目の色が変わっていることに気づいて、カイジはようやく自分の置かれた状況を悟る。
慌てて逃げ出そうともがき始めるも、アカギに押さえつけられている体は、ぴくりとも動かすことができない。
おかしい。クスリは確かに効いているはずなのにと、軽いパニックに陥るカイジの体の上を這い上り、アカギはその顔の横に膝をつく。
ひどく獰猛な顔つきでカイジを見下ろしながら、アカギは上がった息を整えつつ、ジーンズの前を寛げる。
「てめっ……!! ふざけんなっ……!!」
なにをされるのかを一瞬で理解して、よりいっそう暴れ始めるカイジの目の前で、アカギはジーンズを下履きごとずり下ろす。
現れたアカギ自身は、すでに逞しく育ち、天を仰いで反り返っていた。
思わず息をのむカイジの閉ざされた唇に、アカギはその先端を押し当てる。
「カイジさん……口、開けて……?」
目許を和らげ、やさしげな声音をつくっているが、その目の奥は笑っていない。
呻き声を上げ、首を振って逃れようとするカイジに鋭く舌打ちをして、アカギはカイジの前髪をぐっと掴むと、自身の方へ強く引き寄せる。
「……しゃぶれ」
絶対零度の声と凍るような表情に見下ろされ、カイジは喉奥で「ひっ」と声を上げたあと、おそるおそる口を開いた。
すぐさま、鉄の棒のように硬い肉塊を喉奥まで突っ込まれ、カイジは大きく噎せ返る。
なんで……なんで、こんなことに……?
生理的な涙の浮かぶ目でアカギを睨み上げるも、アカギは悠々と目を細めて言い放った。
「……歯、立てたら殺すから」
その台詞にぶるりと怖気立ち、カイジはおとなしく目を伏せてゆっくりと頭をスライドさせ始める。
「ん……、ぐっ……ふ、ぅ……」
滑りを良くするために口いっぱいに唾液を溜めながら、じゅぷじゅぷと音をたててカイジはアカギのものをしゃぶり上げる。
恐怖に突き動かされた哀れなほど必死な様子に、アカギは息を荒げながら、ニヤリと笑う。
掴んだままのカイジの前髪を強く引き寄せ、一気に根本まで咥えさせると、カイジは目を大きく見開いて苦しげな声を上げる。
異物を拒否しようときつく締まる喉奥の感触を楽しみながら、アカギは激しく腰を振ってカイジの口で自身を扱いた。
「っ……あ、出る……っ……!」
快感に眉を寄せて低く呻くと、アカギはカイジの口内で精を放った。
「んっ! んんッ……ぷ、はぁっ……!」
限界まで膨らんだ男のモノがビクビクと震えながら精液を迸らせる、その感覚のあまりの苦しさにカイジが頭を強く振りたくると、アカギのモノが勢いよく口から飛び出し、熱い精液が顔にかかる。
「う……ゲホッ……ゴホッ……!」
白くねっとりとした粘液に顔を汚されながら、カイジは激しく咳き込んだ。
ぜえぜえと呼吸を乱しながら、射精の最中にいるアカギを見上げる。
アカギは痛みを耐えるような顔でカイジの顔を見下ろしており、頬を染めて快感に溺れるその表情に、カイジは思わずドキリとした。
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