携帯(※18禁)・2
「……んなことよりさ、お前……なんだよさっきのメール……あれは、ねえだろっ……?」
アカギが台所を覗くと、カイジは入り口に背を向け、立ったまま通話していた。
どうやら、さっきカイジを笑わせたメールに関する話題になっているらしい。
件のメールがよっぽどツボに嵌まったのか、カイジはときどき、控えめに声を上げて可笑しそうに笑う。
どちらかと言えば無口で無愛想、怒っているような、つまらなそうな顔でいることが多いカイジが、こんなに笑うことは滅多にない。
通話の相手も、普段笑わないカイジが笑っていることに気分を良くして、もっと笑わせてやろうと躍起になっているらしい。
ほとんど一方的に喋っているらしい通話相手に、カイジは「ばーーか」などと罵っているが、その声も笑いに震え、響きがやわらかくなっている。
ますますもって面白くない気分にさせられたアカギは、足音を潜めて台所の中に入る。
相手に気付かれぬよう気配を消すことなど、アカギにとっては朝飯前だ。
文字通り、音もなくカイジの背後から近づけば、通話に夢中になっているカイジは苦もなくアカギの接近を許す。
すぐ背後に立っても、カイジはアカギに気付く様子がない。
「……は? いや、だからそれは無理だって……誰か他のやつを、……ッ!?」
いきなり、ガバリと背後からその体を抱き竦めれば、カイジは飛び上がって驚いたが、ギリギリ声は上げなかった。
「え?……い、いや、なんでもないっ……」
急に声を詰まらせたカイジを、電話の向こうで相手が訝しがっているのだろう。
しどろもどろに取り繕いながら、カイジはアカギをキッと睨めつける。
あくまで強気なその視線を受け、ニヤリと笑うと、アカギはカイジの首筋に唇を落とした。
「……!!」
ビクリと竦み、逃げようと暴れ始める体を、強く腕で戒めつつ、アカギは舌で首筋をなぞる。
「っ……」
くすぐったいのか感じているのか、カイジは体を跳ねさせて、声が上がりそうになるのを堪えている。
「そ……れよりっ! 話の続きだけどっ……、」
わざと大きな声を出して話を本題に戻そうとしながら、カイジはアカギを懸命に振り払おうとする。
だが、あまり大きく体を動かせば声が乱れてしまうため、結局抵抗らしい抵抗もできず、早くも赤く染まりつつある目許でアカギを睨みつけることで牽制するしかない。
その様子に支配欲が強烈に満たされていくのを感じて、アカギはより大胆な行動に出る。
スウェットの中に手を潜り込ませると、カイジは目を見開き、やめろと言うようにアカギの足を強く踏みつけてきた。
だが、そんなものアカギはまったく効果がなく、むしろ無理やり屈服させようという気持ちを大きくさせるだけだ。
アカギは両掌を、カイジの腹にぺたりとくっつける。
「ひっ……!!」
冷たい手の感触に思わず身震いし、とうとうカイジは声を上げてしまう。
すぐさま、『しまった』という表情で咳払いなどするカイジに、アカギはひっそりと笑う。
「っ、え? いや、大丈夫だって……」
突然悲鳴を上げたカイジを、相手が心配しているらしい。
アカギはそのまま、あたたかい肌の上にゆっくりと両手を這わせていく。
脇腹を上下に何度か往復すると、カイジの体からわずかに力が抜ける。
「……いるだろ、っ、オレ以外にもっ……暇そうっ、な、奴っ……!」
文章を不自然ところで区切りながらも、カイジは必死で平坦な声を繕っている。
それを乱れさせてやりたいという嗜虐的な気持ちに突き動かされるまま、アカギは両手を上に滑らせ、平らな胸の頂にある突起を指でつまむ。
「!!」
そのまま、くりくりと捏ねあげるように愛撫すれば、腕の中の体がかたく強張るのがわかった。
「っく……」
喉が引き攣るような音が、カイジの口から漏れる。
アカギの耳にしか届かないほどのちいさな音だったので、電話の向こうにいる相手には気付かれなかったようだ。
カイジはわずかに息を上げながら、横目で再度、アカギを睨む。
アカギは口角を上げると、カイジの乳首を思い切り抓り上げた。
「ーーっっ!!」
痛そうに顔を歪め、携帯を取り落としそうになるカイジの様子を眺めてから、力を緩めてやさしく、撫でるように刺激してやる。
逆らうと痛い目に逢うとわかったためか、カイジは顔を伏せ、悔しそうに唇を噛み締めてじんじんと甘痒いような感覚を耐えていた。
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