同病相哀れむ(※18禁)・3




 セックスするとき、しげるは最初、余裕たっぷりにオレを責める。
 でも、しげるのいいなりになって素直に要求を受け入れてやると、その余裕はいつも、ボロボロとあっけなく崩れ去っていくのだ。

 それが、たまらなかった。
 しげるはいつも冷静沈着で、どんなに自分に不利な博打を打っていたとしても、余裕を失うことなんてない。
 そんなしげるが、理性をぶっ飛ばしてひたすらオレの体を貪るのを下から見上げるのが、たまらないのだ。
 





 はしたない声を撒き散らしながら、オレはしげるを見つめていた。
「っは、やらし……腰、止まんないよ? カイジさん……」
 熱っぽく囁かれては、耳朶をきつく噛まれる。
 しげるは快感を紛らわすためにオレの体を噛む癖があって、その強さでどのくらいしげるが追い詰められてるのかが、最近わかるようになってきた。
 もう、かなり危ないみたいだ。きし、と音をたてて、耳を食い千切られそうなほどしげるの歯が食い込むのを感じて、オレに覆い被さる華奢なこいつが無性にいとしくなった。
 激しく揺さぶられて視界がぶれるから、しげるの顔がはっきり見られないのが残念だ。
 それでも、強い光を宿す瞳が潤んでるのがわかって、すごく興奮した。
 普段は濡れることのない黒い瞳を、情動に湿らせているのは他でもない、オレなのだ。
 そう考えただけで武者震いが走って、後ろを容赦なく締め上げてしまう。
 すると、それに感じたのか、しげるがちいさな声で呻いて、抱え込んでいるオレの腿に深く爪を食い込ませてきた。
 鋭い痛みに、足の爪先がぴくぴくと跳ねる。
 しげるによって開かれ、さんざ弄くられたこの体は、いつの頃からか、痛みすら快感として享受する術を覚えてしまった。

 深く息をついて呼吸を整えたあと、しげるはオレの唇を、ゆるゆると指でなぞった。
「上の口と、」
 呟いてから、腰をぐっと突き入れる。
「下の口。……どっちで飲みたい? 」
 硬くそそり勃った肉棒で中を捏ねまわしながら聞いてくる、その声が酷く掠れている。
 鼓膜から脳を揺さぶられて、溶けそうだ。
 自らはしたなく腰を振りながら、潤む視界にしげるの姿を捉え、オレは言った。
「あぅっ、し、下……下、で、飲みたいっ……!」
 涎をだらだら零しながら懇願すると、しげるはニヤリと笑った。
「オレみたいなガキのザーメン、ケツの中に出されたいの? 変態だな、あんたは……」
「っあーー! あっ、ひぁあっ……!!」
 抜けそうなほど引き抜いてから、一気に奥深くまで貫かれて、目の前に火花が散る。
 ずぷ、ずっ、と音が鳴るのにさえ興奮して、もっともっとと、尻孔を搾り取るようにキツく締め付ける。
 息を弾ませるしげるの額から滴った汗が細い頤を伝い、オレの顔にぽつりと落ちる。
 さっきは堪え性がないなんてオレのことを罵ったくせに、その言葉をそっくりそのまま返してやりたいくらいに、乱れたしげるの姿に、背骨がビリビリと甘く痺れた。


 かわいそうなしげる。
 出会った頃は、こんな風じゃなかった。
 セックスごときでこんなにも余裕を失って、男の体なんかを夢中で貪るような奴じゃなかったのに。
 だけど、オレがこいつを、そういう風にしたんだと思うと、罪悪感とともに、与えられるどんな痛みよりも性感よりも確かな『快感』が、オレの胸を満たしてしまうのだ。

 だから、ごめんなしげる。
 お前には悪いけど、やめられそうにない。


 見上げるオレと目が合うと、しげるはわずかに目を細めた。
 なにを考えてるんだろう、その顔はなんだかひどく愉しそうに見えて、ひょっとするとしげるの目から見たオレも、同じ顔をしているんじゃないかと思った。
「もう、イきそ……、ぜんぶあげるから、ちゃんと残さず飲んでね、カイジさん……」
 きもちよさそうに上擦った声を聞きながら、オレはしげるを射精へと導いてやるべく、細い首の後ろに腕を回して引き寄せ、うすく開いた唇に舌をねじ込んだ。






 

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