solo【その3】(※18禁)・1 カイジがオナニーする話 カイジが変態 ゲロ甘



『カイジさん、ひさしぶり。今バイト中? 今日この後あんたんちの近くで一勝負あるから、それ終わったら邪魔するよ。今回は何泊するかわからないけど、よろしく。じゃあ』

 留守電はそこでぶつりと切れ、無機質な電子音に切り替わった。
 ベッドに腰掛け、耳に携帯を押しつけたまま、カイジはそっと息をつく。

 さきほど、バイトを終えたカイジが携帯を確認すると、アカギからの留守電が一件入っていた。
 バイト先ですぐに確認して、その後家に帰ってから、もうこれで三回も同じ留守電を再生してしまった。
 電話越し、すこし掠れたように聞こえるアカギの声。涼しげなのにどこかあたたかみを感じるのは、自分がアカギに惚れちまってるからだろうかとカイジは苦笑した。
 感情と抑揚に欠けるのに、不思議と耳触りがよくて、いつまでも聞いていたくなる。
 ひさしぶりのアカギの声。心底惚れ抜いている、恋人の声。
 そうやすやすと会えるような相手ではないからこそ、カイジは自身が思っている以上に、その声に飢えていたのだ。
 

 カイジは携帯を操作して、また留守電を再生する。
 同じことしか喋らないのに、同じ留守電をなんどもなんども、バカなことをしているという自覚はある。でも、飽きるどころか、聞けば聞くほどもっともっと聞きたくなるのだ。それはまるで、麻薬のようだった。
 恋する乙女みたいな自分の行動に羞恥を覚えつつも、繰り返し繰り返し、アカギの声を聞いていたカイジだったが、そのうち、自分の体がじんわりと火照ってきていることに気がついた。
『カイジさん、ひさしぶり。今バイト中?……』
 囁くような声が耳許を擽る。心地よいテノールがもたらす鼓膜の震えとともに、背筋もゾクリと震えてカイジは強く携帯を握り締め、熱っぽい吐息を漏らした。

 ……アカギ……

 空いている左手を、そろそろと自分の股間に持っていく。
 留守電を聞いていただけなのに、もうソコは硬くなりつつあって、ジーンズの固い布越しに指でなぞると、たまらない疼きが体の中に生まれる。
 本人にもうすぐ会えるとわかっているのに、どうしても我慢できない。
 たまらず、ジーンズの中に手を突っ込んでしまいそうになったが、そこでカイジはふと、あることを思いついた。

 携帯をベッドに置いて立ち上がり、風呂場へ行く。洗面台の下を開け、風呂の掃除用具や石鹸の買い置きなどと共にしまい込まれていた、薄い桃色のボトルを手に取り、引き返す。
 ベッドに上がり、わずかな躊躇ののち、着ているシャツをたくし上げて腹から胸をかけてを露わにする。
(オレ……変態かよ……)
 ふと冷静になるとさすがに自分の格好が情けなく、気持ちが萎えそうになる。
 しかし、カイジは気を取り直して、ボトルの蓋を開けた。
 フーセンガムみたいな、安っぽく甘い匂いがふわりと漂う。
 このローションはカイジが購入したものだが、以前行為に使ったとき、アカギには不評だった。
 この甘ったるい匂いが、好きではないと言うのだ。
 カイジは言うほど悪くないと思っていたのだが、アカギが嫌そうなので仕方なくべつの、無香料のローションを新しく購入して、それを使っていた。
 という訳で、長らくお蔵入りになっていたこのローションだが、まさかこんな形で再利用する日が来ようとは、夢にも思っていなかったカイジは、なんとなく、ひとりで赤くなった。



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