もっかい(※18禁?) 短文 ゲロ甘



 体を抱き締める腕に、ぐっ、と力が籠もったことで、カイジは赤木が達したことを知った。
 激しかった動きがぴたりと止み、代わりに腹の中に入っているモノがビクビク脈打っている。
 はぁ、と浅くため息をつく赤木の表情が見たくて、カイジが短い髪に触れると、赤木はこころもち顔を上げ、「ん? どうした……?」と尋ねてくる。
 緩く持ち上げられた口角も、呼吸の乱れを感じさせない低い声も、汗ひとつかかずさらりとしている前髪も、すべてが平生と変わらない、いつも通りの赤木だった。
 やや肩透かしを食ったような気持ちになりながら、カイジは白い髪をくしゃりと撫でてみる。
 指に当たる感触が硬い。ついこの間床屋に行ったばかりなのだと言っていたことを思い出しながら髪を弄っていると、ふいに赤木が腰を引き、勢いを失ったモノをカイジの中から引き抜いた。
「……ッ、」
 生々しい肉の感触に思わず息を飲むカイジに、赤木は微かに笑う。
「くすぐってえよ」
 そう言って、赤木は髪を触るカイジの手を静かに避ける。
 そのまま、体を起こして離れていこうとする赤木に、カイジは唇をうすく開き、言った。
「なぁ……もっかい」
 誘うように腕を伸ばすと、赤木はつかの間、丸くした目を瞬いた。

 いつだって余裕なその表情が、驚いたときだけ、ほんのすこしあどけなくなることを、赤木はおそらく知らない。
 その顔が見たくて、カイジが二度目を誘うのだということも。
 カイジが言わなければ、たぶんこの先もずっと、赤木がそれを知ることはないだろう。


「……珍しいな。お前から誘ってくるなんて」
 くつくつと喉を鳴らしながら、カイジの頬を撫でる赤木は、いつも通りの、ひろびろとした笑顔に戻っていたが、赤木自身も知らない赤木の表情を知っているカイジは、ちょっとだけ優越感に浸れるのだった。
「なに、笑ってるんだよ」
 カイジの表情が微かに緩んでいるのを、目敏く見つけて赤木が言う。
「笑ってません」
「……嘘つけ、このスケベ」
 頬を軽く抓られて、カイジは思わず笑ってしまう。
 幸福そうな笑い声につられるようにして、赤木も軽く笑い、ふたりは笑いながらキスをして、ふたたびベッドに沈むのだった。







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