ツキとキス・3
意気揚々と雀荘をあとにして、足取りも軽やかに行きつけの居酒屋へと向かう。
カウンターに座り、おしぼりと水を運んできた店員にとりあえず生を注文してから、カイジははたと気づく。
そういえばこないだ、競馬で大勝ちしたあとも、この居酒屋で飲んだのだった。
なにか、どうしようもなく心に引っかかることがあって、カイジは腕組みする。
ここ最近、ギャンブルでの勝ち方が妙だ。
一生に一度、あるかなしかの大勝ちを、この短い期間に二度も経験している。
かといって、カイジの運が良くなったとか、勘が鋭くなったのかというと、決してそうではないらしく、競馬の翌日からは、またずっとからっきしだったのだ。
そこへきての、今日の雀荘での大勝。
カイジは首を傾げる。
どう考えても、やっぱり妙である。
偶然だと言われればそれまでなのだが、このふたつの勝ちはなにか、大きな力が作用して引き起こされた気がしてならないのだ。
この間の競馬と、今日の麻雀。
ふたつの勝負の間にある、共通点はーー
眉を寄せて考え込んでいると、やがて店員が生ビールを持ってカイジのもとへやってきた。
「生中、お待たせしました!」
威勢のいい声に全身でびくりとしてしまい、カイジはすこし赤くなって店員に軽く会釈する。
自分の前にドンと置かれたジョッキを眺め、カイジははっとした。
生中。
なまちゅう?
なま……
「……あーーーーっ!!!!」
突然、でかい声で雄叫びを上げたカイジを、周囲の人々が何事かと見遣る。
「お、お客様? いかがなさいましたか?」
生中を運んできた店員が、おろおろとカイジに声をかける。
だが、カイジにはその声も、チクチクと刺さるような周囲の視線すらも、まったく届いていなかった。
カイジは発見したのだ。
大勝ちしたふたつのギャンブルの間にある、たったひとつの共通点を。
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