好きにして(※18禁) アホエロ


「く……っぅ、あ、ぁ」

 しつこく後ろを掻き回され、カイジは息も絶え絶え喘いでいた。
 二時間ほど前まではカラリと乾いていたはずの布団は、カイジの汗、精液、涙、鼻水、ありとあらゆる体液でじっとり湿り気を帯びている。
 腰だけを高く上げた状態でベッドに這い、指を噛んで声を耐えながら、カイジは後ろにいるアカギを睨もうとするが、もう首を動かすことすら辛い。
 ぐったりするカイジの耳に、憎たらしい笑い声が届いた。

「まだへばるなよ、カイジさん」

 カイジが全身汗みどろになっても、アカギの責めは止まない。むしろ激しさを増すばかりで、もはやふたりの行為は獣の交尾の様相を呈している。


 カイジはアカギとの性交が嫌いなわけではない。

 受け入れる側にまわる抵抗はそう簡単に捨て去れるものではないが、曲がりなりにも惚れた相手とするのだ。それを嫌がる人間はいないだろう。
 それに、痛みもあるがきもちがいいし、最終的にはちゃんと達することもできる。
 男とするのはアカギが初めてだから、他の誰と比べようもないが、おそらくアカギは上手いのだろうとカイジは思っている。


 しかし問題は、このしつこい責め方だった。

 アカギはいつも、カイジを死ぬほど感じさせる。抵抗も反抗もどこ吹く風、弱いところだけを執拗に責め続けられ、呼吸困難に陥りそうなほど喘がさせられる。
 そうやってねちっこく弄り続け、カイジの身も心も溶けたアイスクリームのようにドロドロになった頃を見計らって、ようやく挿入するのだ。
 そこからまた、脳天を突き上げられるような抽挿が始まるのだから、カイジは本当の意味で昇天してしまうのではないかと本気で思うのだ。




「くそ……がッ……! いつもいつも、ヒトの体を好き勝手しやがって……!」
  唾液にまみれた自分の指を強く食い締めたまま、カイジはきれぎれにアカギを罵る。
「なにいってるの?」
 アカギは呆れたように言うと、カイジの後孔に挿れた指を、ぐちぐちと壁に擦り付けるようにして動かした。
「……ココも、」
「あっ! あ、あ、あ」
 目を見開いて体をびくつかせるカイジの、ぐしょぐしょに濡れた陰茎を握り、きつく扱きあげる。
「コレも、」
「あっ、あうっ!」
「ぜんぶオレのものなんだから、そりゃオレの好きにするでしょ」
 びくびく震え、戦く背中に笑いながら、アカギは言い放った。
「っ、ざけんな……っ」
 思い上がった物言いに文句を言おうと口を開きかけ、カイジはふと閃いた。

 ここで反抗したとしても、アカギにはまったく通用しないということは、今まで散々学習してきたことだ。
 喉元まで競り上がっていた罵詈雑言を、グッと飲み込む。

 むしろ逆に、アカギはカイジが反抗すればするほど、サカる傾向がある。
 ギャンブルでも、相手が強ければ強いほどいい、と思っているような男だ。形振り構わず噛みついてくるような相手にこそ熱くなる性癖は、セックスの場合も同じらしい。

 それは、すなわち。
 従順で素直な相手には、さして興味を抱かないということであり、そうなれば、無体も少しはやわらぐのではないか?


 天啓のように降ってきたこの仮説が、あながち間違っていないようにカイジには思われた。
「っん! ぁぐ……っ」
 中で蠢くアカギの指先が前立腺を掠め、カイジの背筋がぞくぞくと痺れた。
 激しさを増していく快楽地獄から抜け出すため、一刻も早く仮説を実行に移そうと、カイジは必死に首を動かし、涙で曇った視界でアカギを捉える。
「も、いいっ……! わかった……からっ、ぁ!」
 嗄れた声でカイジが叫ぶと、意外な言葉にアカギは眉を上げ、動きを止めた。
 こんなこと、今までなかった。カイジがどんなことを言おうと、アカギは絶対に手を止めたりしなかったのだ。
 やはり仮説は正しいのだ。
 確信したカイジは更に言葉を言い募ろうとして、一瞬、口をつぐんだ。

 たとえ演技とはいえ、アカギに対して降伏を示すのが、死ぬほど恥ずかしくて屈辱的なことだということに気がついたのだ。
 しかし、下手すると自分の健康にも関わってくる問題なのだ、そうも言っていられない。
 羞恥心を押し殺すために拳をぐっと握りしめ、カイジは震える唇を開いた。

「……お前の言う通りだよ。オレはお前のもの、なんだから、どうにでもすれば、……いいだろ」

(……言った!)
 羞恥で発狂しそうになりながらも、カイジはどうにか言い切った。
 蚊の鳴くような声しか出なかったが、この距離なら確かに届いた筈だ。
 カイジはアカギの様子を窺おうと、体を起こしかける。

 その瞬間、カイジの体が、ぐるん、と反転した。
 仰向けにベッドへ押し付けられたカイジの体に、すぐさまアカギが覆い被さってくる。
 状況が把握できずにきょとんとするカイジの顔をまっすぐに見て、アカギはすっと目を細めた。

「ずいぶん素直じゃない……かわいい」
「あぅっ!? あっ、アカギっ、んあぁっ!」

 性急に脚を抱え上げられ、ずぶりと猛ったものを押し込まれてカイジの体が激しくひきつる。
 急な挿入に激しく動揺するカイジに構わず、アカギは腰を打ち付け始めた。
「あっ、あっん! アカギっ、ちょっ、待っ……! ふっ、う!」
 じゅぷじゅぷと奥を叩くような激しさで抜き差ししながら、アカギはカイジに言う。
「カイジさん……さっきの、もう一回言いなよ」
 息を弾ませながらの要求に、カイジはぎょっとする。
「あっ、アホか! 言うわけ……っ! あ、ぁはっ!」
「……言って」
 前立腺を容赦なく擦られ、カイジは中にあるモノを強く締め上げながら身を捩った。

 さっきのアレは、アカギを萎えさせるための台詞のはずだった。
 それなのにこのバカは、何で興奮してやがるんだ?

「ほら……早く、」
 中を捏ね回すように動かされ、目の裏がチカチカするような快楽に負けたカイジは、しかしあっさり口にしてしまう。
「あっ、もう、好きに、しろっ……! ばかやろうっ……! ぁあっ……!」

 その瞬間、中で暴れるアカギのモノが、ぐん、と大きさを増し、カイジは仮説が大外れだったことに気がついて総毛立った。

「あっ、あっ……そこ、イヤだっ……んうっ!」
「イヤだなんて嘘ばっかり……だらしない体」
 より狂暴さを増した肉棒に仰け反るカイジの、曝された喉に唇をつけ、アカギは低く笑う。

「なに考えたのか、大体想像つくけど……たまには、こういうのもいいね」

 従順なあんたってのも興奮する、と呟いて、アカギはカイジの喉に軽く歯を立てる。

 ああ、この変態野郎には何をしても無駄なのだ……
 ぼんやりと霞みゆく意識の中で、カイジはそう悟ったのだった。




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