きらい 甘々 短文 カイジ視点
ものすごく気まぐれで、滅多に会いにこない。
ひとところにじっとしていないから、こっちから会いにいこうとしたって、絶対に会えない。
たまにひょこっと顔を見せたと思ったら、意地の悪いことばかりする。
そのくせ、すぐにふいといなくなって、また、ずっと会えない日々が続く。
半年ぶりに会った赤木さんは、前に会ったときよりすこしだけ痩せていた。
会えない間もやきもきして、赤木さんに振り回されることにすこしだけうんざりしていたオレは、思わず、ぽつりとこぼしてしまった。
「……赤木さんなんか、嫌いです」
苦笑するか、呆れるか、宥めてくるか。
赤木さんの反応は、その中のどれかだろうと思ったが、違った。
赤木さんは、怪訝そうにオレの顔をじっと見て、一言、
「そうか」
と呟いたのだ。
……『そうか』?
『そうか』って、あんたなぁ、仮にも恋人に『嫌い』って言われて、たったのそれだけかよ!?
と、つっこみたくなるのをぐっと耐えていると、赤木さんが、なんだかしみじみと呟いた。
「お前、嘘が下手だなぁ」
思いがけないことを言われて、ひどく動揺した。
声が裏返る。
「なっ、う、嘘じゃねえよっ……!」
「博奕ン時苦労するだろ、そんだけ嘘が下手くそだと」
「だからっ、本当だって言ってんだろ……! おめでたい頭だな……!」
思わずムキになって反論すると、赤木さんは苦笑して、軽く頭を掻いた。
「そんな顔で言われても、説得力ねえよ」
顔?
自分の顔をぺたぺた触るオレに、赤木さんがジッポを差し出す。
咄嗟に受けとると、銀色のケースに映る自分の顔を見て、自覚なく緩みきっていたその表情に、愕然とした。
「な? 俺に会えて嬉しいです、って、でっかく顔に書いてあるだろ?」
終
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