昼下がりの情事(※18禁)・1 アカカイ前提のしげカイ ただのエロ カイジさんが淫乱




 カイジが眠りから覚めたとき、時刻はすでに正午を回っており、隣で寝ていたはずのアカギの姿もなく、しんとした自分の部屋にひとりきりになっていた。

(……行っちまった……のか……?)

 カイジは心中で呟き、軽くため息をつく。
 根なし草である恋人のアカギは、カイジのもとを気まぐれに訪れては、いつもなにも告げずに出て行く。
 その振る舞いにはだいぶ慣れつつはあるものの、やはり朝起きた瞬間ひとりに戻っていたときの、言いようのないやるせなさというものは拭えず、カイジは辟易するのだった。

 昨日まで、この部屋にアカギがいたということが夢なのではないかとすら思えてきて、カイジは布団に顔を埋め、深く息を吸う。
 そこに残るハイライトの香りは、昨日確かにアカギがここにいたという数少ない証であり、カイジはそれを確かめるように、何度か深く息を吸った。

 ……が。
 そんなことを繰り返すうち、起き抜けだということもあって、体の一部に困った変化が現れはじめる。
「……ッ」
 チラリと下へ視線を送ると、硬く、スウェットの生地を押し上げる自身の姿。
 こんなことくらいで、と情けなく項垂れながらも、生理的な欲求には抗えず、カイジはそろそろとソコヘ手を伸ばした。
 
 服の上から軽く触れただけで、ピリッと電気が走るような快感が下半身を痺れさせる。
 たまらずスウェットと下履きを腿まで下ろし、ぷるんと飛び出し天を仰ぐ怒張を掌で直に握る。

 背筋がぞくぞくして、腰が震える。
 全身が燃えるように熱く火照っているせいで、さっき感じたやるせない気持ちなど早くも蒸発してしまい、とっくに理性が焼き切れてしまった心は、ただひたすら気持ちよくなることにのみ集中している。

 アカギと関係を持ってから、カイジは今まで縁もなかったような、性的なことをずいぶん、体に教え込まれた。
 そのくせ、アカギがカイジの部屋にいる期間は極端に短いので、カイジは持て余した熱を、こうしてひとりさみしく慰める羽目になるのだ。

 しんと静かな部屋。誰に憚ることもなく息を荒げながら、くちゅくちゅと卑猥な音を響かせてカイジはひたすら自慰に耽っていた。
 カーテンを閉めきっていてもわかる明るさと、窓の外から時折聞こえる車の走る音、鳥の声が、真っ昼間からこんなことをしているという羞恥と罪悪感と、奇妙な興奮を掻き立てる。

 はぁ、はぁ、と獣のように浅ましく呼吸するたび、布団に染みついたアカギの匂いが鼻腔を擽り、そのことさえも刺激となってカイジの快感を煽る。
 勃起した陰茎の先端からは、既に先走りが大量に溢れ出しており、激しく上下に動いて自身を扱きたてる五指に絡みつき、潤滑剤のようにぬるぬる滑って動きをスムーズにした。

「ん……は……ッ」
 涙目で身を捩りながら、カイジは使っていない左手の指先に自身の先走りをたっぷりと纏わせる。
 その手を後ろへ持っていき、窄まりをつつくと、昨夜一晩アカギを受け入れっぱなしだったソコはほどよく緩み、物欲しそうにヒクヒク蠢いていた。
 やや乱暴な動作で指を突き挿れても、健気なほどすんなりと受け入れて快感を拾おうとする粘膜は、熱く絡みつくようにカイジの指に纏わりついてくる。
 アカギもたっぷりと味わったであろうそのいやらしさに赤面しつつも、前を触るだけではぜったいに得られない強烈な刺激が欲しくてたまらないカイジは、性急に二本指を足し入れて前立腺を探る。
「っ、は……ぁ、」
 やがて、人差し指の腹がそのポイントを掠めたとき、カイジは思わず呻くような声を漏らしてしまった。頭がぼうっと霞むような快感に、汗まみれの体がトロトロととろけていきそうな錯覚を覚える。
 全神経がソコから得られる快楽にだけ集中してしまったかのようで、まともな思考などもはや完全に停止している。
 ぱくぱくと開閉する鈴口から、絶えずだらだらと流れ落ちる先走りの量が、カイジの感じている性感がいかに凄まじいかを物語っていた。

 大きく息を吸い込み、胸いっぱいに酸素とアカギの匂いを取り込む。
 クラクラと目眩を覚えながら、ひたすら後ろのイイところを指で突き、激しく勃起した性器を扱きたてる。
 ぐちゅぐちゅ、にゅぷにゅぷと粘着質な音が大きくなり、ねっとりとしたアカギとの情事を想起させる。
「はぁっ……、アカギ……っ」
 半開きの口から涎を垂らしながら、カイジは虚ろな表情で、つれない恋人の名前を呼んだ。
 当然、それは誰の耳に届くこともなく、ただ空気に溶けて消える……はずだった。

「……カイジさん?」

 ところがそれに答えるように、静かな声が己の名前を呼んだので、カイジは心臓が止まりそうなくらい驚いて、飛び上がるようにして跳ね起きた。

「し……しげる……っ!」

 いつの間に入ってきたのだろう。部屋の入り口に立っていたのは、アカギを一回りちいさくしたような少年。

 このしげるという中学生とアカギとの関係を、カイジはよく知らない。
 アカギとつき合い始めてから、ときおりカイジの部屋を訪れるようになったのが、しげるである。

 だが、どういうわけか、しげるはアカギのいないときにしかカイジの部屋にやって来ないから、カイジはふたりが言葉を交わすのを、未だかつて見たことすらない。
 が、どうやら互いの存在は認識しているようで、前に一度、アカギの前でしげるのことを話題に出したら、とんでもなく機嫌を損ねてしまった。
 それで結局、詳しいことをなにも尋ねることができないまま、今に至るのである。

 これだけ容姿が似通っているのだ。血縁があることは、まず間違いないだろう。
 弟、あるいは甥なのではないかとカイジは踏んでいるのだが、ただ問題なのは、ふたりとも『赤木しげる』という名を名乗っているということ。
 どちらかが偽名を使っているとも考えがたいし、いったいどういうことなのか、カイジにはさっぱりわからず、ただただ首を傾げるばかりなのだった。

 ……で。
 その、一回りコンパクトなもうひとりの赤木しげるに、カイジは今、自慰の現場をバッチリ目撃されてしまったわけである。

 カーっと赤くなりながら、カイジは慌てて自身を手で覆い隠す。
 オナニーに夢中になりすぎて、しげるの存在にまったく気がつかなかった。……気配も足音も、まったくなかったし。

「ねぇ……カイジさん。ひとりで、なにしてたの?」
「……えっ!」

 不思議そうな声に、カイジは目を見開く。
 すたすたと部屋に踏み込んでベッドの傍までやってくると、しげるはくんくんと空気の匂いを嗅ぎ、細い眉を微かに顰めた。
「なんだか……変なにおいがする」
「……!! き、気のせいじゃねえ?」
 不審げな発言にビクッとしつつも、咄嗟にカイジはシラを切る。
 この、とんでもなく初心なリアクション……おそらく、しげるはまだ、自慰というものがどういうものかすら知らないのだ。
 そうとしか思えない。だからカイジはこれ幸いと、ことをウヤムヤにしようと目論んだ。
「あー……っと、もう昼だよな。お前、メシは? 腹減ってねえ?」
 やや上擦った声で、素早く話題をすげ変えようとするカイジ。
 変な汗をダラダラかきながら薄っぺらな笑みをその顔に貼り付けている、怪しさ満載の年上の男をじっと見て、しげるはボソリと言った。
「ねぇ、カイジさん……」
「は? ……っ!」
 急に手首を掴んで強く引かれ、カイジは焦った声を上げる。
 だがその手をスラックスの上からしげるの足の間に強く押し付けられ、瞠目して息を飲んだ。

「ひとりでなんかやってるカイジさんのこと見ながら、このにおい嗅いでたら、なんだか、体が熱くなってきて……」

 カイジの掌の下で、ソコは布越しでもハッキリとわかるほど硬く脈打っていて、しげるは戸惑いを隠せないといった表情で熱いため息をつく。
 切れ長なその瞳は劣情に潤んでいて、自分のオナニーを見てしげるがこんな風になってしまったのだと思うと、カイジは不覚にも興奮してしまった。
 さっき、イク寸前まで弄っていた陰茎が思い出したかのようにピクピクと揺れ、カイジはモゾモゾと太股を擦り合わせる。

 ーー触りたい。

 掌に感じるしげる自身の硬さと熱さに欲望を掻き立てられるカイジだが、そこでハッと我に返り、ブンブンと首を横に振る。
(なに考えてんだオレっ……、こんな子供相手にっ……!)
 喘ぐように激しくなる息を抑えながら、カイジはしげるの股間から手を離そうとする。
 しかし、手首を掴むしげるの手に阻まれてそれは叶わず、逆により強く押し付けられてしまった。

「カイジさん……どうしよう……オレ、おかしい……」

 あの、しげるが。
 いつも小生意気で、普段は子供らしさの欠片もない少年が、その淡い瞳を不安げに揺らし、縋るようにカイジを見つめている。

(う……っ、反則だろっ……! その顔……っ)
 いやに扇情的なその表情に、カイジはゴクリと喉を上下させる。
 性欲を煽られるのと同時に、こんなにも頼りなさげなしげるを見るのは初めてで、自分の手で楽にしてやりたいという気持ちも湧いてきて、カイジの心はあっさりと翻ってしまった。




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