No title・7(※18禁)


「……おいっ……いい加減離れろっ……」
 絶頂の余韻に浸る間もなく、アカギは涙目のカイジにギロリと睨まれる。
 アカギは仕方なく体を離すと、ゆっくりと自身を引き抜いていった。
 白濁にまみれた陰茎が抜け出ると、粘っこく白い糸がその先端とカイジの尻孔とを繋ぎ、すぐに切れる。

 萎えたモノが体から出ていく感触に眉を寄せ、カイジは怒りを湛えた声でアカギに向かって言う。
「てめぇ……こんなことして、タダで済むと思うなよ……」
「あんただって、割と愉しんでたじゃない」
「だっ、誰がっ……! ふざけるなっ……!!」
 またジタバタと暴れ始めるカイジをいなしつつ、アカギはいけしゃあしゃあと言った。
「それより、あんたこのままじゃ困るだろ。今度こそちゃんと手伝ってやるから、もう一回やってみようぜ」
 胡乱げな顔でアカギを見て、カイジはぼそりと呟く。
「……その、『やってみる』って、他意はねえだろうな……」
「ないよ。……なに言ってんだ、あんた」
 鼻でせせら笑うアカギに、カイジは怒りでカッと顔を赤くする。
「元はといえば、お前がっ……!!」
「はいはい……じゃあ、いくよ?」
 わぁわぁと煩いカイジの腰を掴むと、アカギはぐっと押したり引いたりしてみる。
 すると、確かにさっきとは違う手応えをアカギは感じた。カイジの体が、わずかに動いた気がするのだ。
「ひょっとすると、いけるかも」
 アカギが呟くと、カイジはぱっと顔を輝かせる。
「マジかっ!? は、早くっ……!!」
 アカギはより力が入りやすいよう、カイジの脚を両腕で抱え、思いきり引っ張ってみる。
 すると、ほんのすこしずつではあるが、カイジの体は確実に部屋の中へと引き摺られていく。
 さっきまでビクともしなかったのに急に動くようになったのは、大量にかいた汗で滑るようになったせいかもしれない。

「おっ、おお〜〜っ! アカギっ、もう一回! もう一回だっ……!!」
 俄然盛り上がるカイジに促されるまま、アカギは何度かカイジの体を引っ張ってやったが、ある程度カイジの体が抜け出たところで、ふとその手を止めた。
「? どうしたんだよっ、早くっ……」
 怪訝そうな顔をするカイジの脚は、もうしっかり床についている。
 完全に抜け出せるのも、時間の問題だろう。
 多少、時間はかかるかもしれないが、ここまでくれば恐らくもう、カイジひとりでも抜け出すことができる。

 アカギはそっとカイジから離れると、己の下穿きとジーンズを上げ、速やかに玄関へと向かった。
「えっ、おい……アカギっ……?」
 遠ざかる足音に、カイジが不安そうな顔になっていると、しばらくして、アカギが玄関から出てきた。
 訳がわからない、といった風にぽかんとするカイジに、アカギは近づき、しれっと言い放つ。
「それじゃ……あとは頑張って」
「は、はぁっ!? どういうことだよっ……?」
 信じられない言葉に愕然とするカイジに、アカギはクク、と喉を鳴らした。
「もう、ひとりでも抜けられるさ。オレは帰るよ。あんたに殴られたくないんでね……」
「なっ……!!」
 いくらカイジがマザーテレサだとはいえ、あれだけのことをしておいて、お咎めなしで許してくれるはずがない。
 アカギはそのことをよくわかっているから、カイジが抜け出してしまう前に、逃げてしまおうという魂胆なのだ。
「こっ、この野郎っ……!! ふざけるなっ……!!」
 手をバタバタさせながら憤怒の形相を浮かべるカイジに、アカギはなにかを思い出したように「あ、そうだ」と呟く。
 そして、ずいとカイジとの距離を詰めると、その顎を捕らえて唇を重ねた。
「……!!??」
 予想外の行動に、大きく見開いた目を白黒させるカイジの口内を一方的に舐め回すと、アカギは唐突に口づけを解き、唾液に濡れた唇をペロリと舐めた。
「さっき、できなかったから」
 そう言って満足げに目を細め、「それじゃ……」と踵を返すアカギに、カイジはハッとして騒ぎ始める。
「おい、なぁ、冗談だろっ……? なあって、アカギっ! おいコラてめぇっ、待ちやがれっ……!!」
 歩を進めるごとに、縋るようだった口調が段々と荒々しくなっていくのにくつくつと笑いながら、アカギは罵詈雑言を背中で受け止めつつ、軽やかな足取りで錆びた階段を下りていく。


 ひとり取り残されたカイジは、怒りにワナワナと体を震わせた。
「あいつ……次会ったら、ぜってぇ、殺す……ッ!」
 自分をさんざ弄んだ悪漢への復讐のみに胸を燃やしつつ、カイジは窓から抜け出すため、しんとした廊下でひとり寂しく奮闘するのだった。






 


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