No title・1(※18禁) カイジさんが窓に嵌まって抜けなくなる話 なんでも許せる方向け
東の空がようやく白み始める頃、夜通しの勝負にケリをつけ、通い慣れたアパートに向かったアカギが目にしたものは、
「たっ……助けてくれっ、アカギぃっ……!!」
幅の狭い窓から廊下に向かって突き出している、家主の上半身だった。
あまりに唐突で意味不明な光景に、アカギは徹マンで疲労した脳に見せられた幻覚なのかと一瞬思ったが、どうやらそうではないようだ。
「……なにしてんの、カイジさん」
至極冷静に問うアカギに、カイジは情けなく泣き濡れた顔を向ける。
「それが、おっ……オレも、よく覚えてねぇんだよっ……!
昨日パチンコ負けちまって、適当な飲み屋でヤケ酒かっ食らってたら泥酔しちまって……
なんとか自力でうちについたトコまでは記憶にあるんだけど、そこから先がさっぱりで、さっき目を覚ましたら、こんなん、なってて……っ!」
そこで言葉を切り、カイジは眉を憐れっぽくハの字に下げた。
「体がつかえちまって、身動きが取れねぇんだっ……! なぁ、頼む、どうにかして……オレを、ここから抜いてくれっ……!」
そう言って、カイジは縋りつくようにアカギに向かって両腕を伸ばす。
しばし、なんともいえない顔でカイジを眺めていたアカギだったが、「おい、聞いてんのかよっ……!?」とどやされて、ようやくカイジの両腕を掴んだ。
近づくと、カイジの体から濃いアルコールの匂いが漂ってくる。どうやら、昨晩は相当な量飲んだらしい。
「じゃあ……引っ張るよ」
「た、頼むっ……!」
カイジが力強く頷くのを見てから、アカギはその両腕を力の限り強く引く。
が。
「いっ、いててててっ……!! や、やめ、アカ、む、無理……ッ!!」
窓に嵌まった体は微動だにせず、肩が抜けそうになったカイジが苦悶の声を上げるだけだった。
アカギが力を緩めると、カイジはぜえぜえと肩で息をする。
「抜けねぇっ……、ど、どうしようっ……!」
どっと額に汗を滲ませ、切羽詰まった声を上げるカイジは、酔いが完全に抜けきっていないのも手伝って、軽いパニック状態に陥っている。
絶望的な表情で涙目になるカイジを、宥めるようにアカギは言った。
「こっち側からじゃダメみたいだから、部屋の中から押してみる……鍵、開いてるよね?」
静かな声に多少落ち着きを取り戻したのか、カイジはアカギを見てぶんぶんと頷く。
「すまねぇ、アカギっ……ホント、頼れるの、お前しかいねぇんだよっ……!」
酔いで上気した頬に透明な涙をボロボロと溢しながら、カイジは縋りつくような目でアカギを見る。
その表情。
普段のカイジには決して見られない、己をひたぶるに信じきって頼ろうとする弱々しい様子に、図らずもアカギは心擽られてしまった。
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