ボール遊び(※18禁)・5



 雀荘を出ると、辺りはすっかり闇に包まれていた。
「すごいねカイジさん。さすが、逆境に強い」
 白々しく褒めるしげるを、カイジは横目で睨んだ。

 あの後、南場でカイジは起死回生の大逆転を果たした。
 しげるの飴と鞭が功を奏したのか。呆気にとられる三人の男たちから、点棒をザクザク毟り取り、反則じみた強さでトップをもぎ取った。
 多重人格のようなカイジを、男たちはひたすら気味悪がるばかりで、最後の方になると、勝負の行方などもはやどうでもよくなっているみたいだった。


「そんなに、あの三人にバレるのが嫌だったの? それとも……」
 トイレでのカイジの様子を思い出しつつ、しげるは妖艶な表情でカイジに笑いかける。
「オレに、いっぱいきもちよくしてほしかった……?」
 カイジは苦々しい顔でそっぽを向いたが、赤くなった耳までは隠せない。
 その様子にしげるは笑みを深め、「でも、」と呟いた。

「でも、途中ちょっと危なかったから、おしおきかな……」

 瞬間、目の奥が白く飛ぶような感覚が腹の底を突き上げてきて、カイジは短く悲鳴を上げた。
「し、しげ……ッ!? うぁっあっ……!」
 もう許されたものだとばかり思い込んでいたところに、いちばん強い刺激を与えられ、カイジは目を見開いてその場にくずおれる。
「クク……油断大敵。最後まで気を抜いちゃダメだよ、カイジさん?」
 ポケットに手を突っ込んでリモコンを操作しながら、しげるは口端を吊り上げる。
「あ、ああ、あ……ッ!!」
 完全に気を抜いていた分、衝撃も強く、カイジは喘ぎ声を押さえることもできぬまま、冷たい地面に蹲った。
 ただ事ではない光景に、街行く人々がざわつき始める。

 端から見れば、カイジは地面に爪を立て、激しく咽び泣いているようだった。
 地面に蹲って泣く男と、それを無表情に見下ろす学生服の少年。
 その異様さに、周りの人々はカイジを心配する素振りを見せつつも、結局誰ひとりとして声をかけられずに立ち去っていくばかりだった。

「あっ、ああ……っくぅ、っ……! あっ、しげ、るっ……!」
 悩ましげに体をくねらせ、涙に濡れた目で見上げてくるカイジに、しげるは平らな声で言い放つ。
「立ちなよ、カイジさん。頑張って、自分の足でここまでおいで……」
 カイジは顔を上げる。
 しげるは感情の読み取れない表情をしていたが、その目ははっきりとカイジへの欲望で燃えていた。
 それを見たカイジも背骨を痺れさせるようなしげるへの渇望に突き動かされ、わななく足で立ち上がると、ふらふらよろめきながらもしげるの方へ一歩足を踏み出した。
 




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