ボール遊び(※18禁)・1しげカイ 大人のオモチャ ふたりとも変態


「今日はねカイジさん。あんたにプレゼントがあるんだ」

 しげるはそう言って微笑み、カイジを見上げた。
 そんなやわらかな表情、しげるはカイジ以外に絶対に見せない。カイジと出会う以前のしげるが、したことのない笑い方だった。

 しかし、しげるがこの顔をするときは、一見やさしげな微笑みの裏で、なにかよからぬ事を必ず企んでいるのだ。
 それがわかりきっているから、カイジは強張った表情を崩さない。

 警戒心剥き出しのその様子に、しげるはわざとらしく肩を竦めると、スラックスのポケットに手を突っ込んだ。
「手、出して」
 カイジは仏頂面でしげるを睨んでいたが、渋々といった風に、右手を差し出す。
 気に入ってくれるといいんだけど、と言いながら、しげるは握り拳の中になにかを隠してポケットから手を抜き出し、まるでお手をするみたいにカイジの掌の上にそっと置いた。
 カイジの視線が自分の拳の上に注がれているのを見ながら、しげるはぱっと手を離す。

 コロンとした、黒くて丸い物体が、カイジの掌の上に乗っかっていた。大きさと形だけなら、縁日などでよく見かける、スーパーボールによく似ている。

 一見しただけではそれがなんなのかわからず、カイジは眉を寄せる。
 掌を顔の間近まで近づけてその物体を眺めたり、指でつついたりしているカイジに、しげるは酷薄な笑みを浮かべると、さっきとは逆側のポケットに手を突っ込んだ。
「握ってみて」
 訝しげな顔をしつつも、恐る恐るといった風にカイジがそれを握り込むと、次の瞬間、球体が低い電子音をたて、小刻みに激しく震え始めた。
 限界まで目を見開き、カイジは悲鳴じみた呻き声を漏らす。
「ぅ……あ、あ……」
『ソレ』がいったいなんなのか、一発で理解したらしいカイジの、如実な表情の変化を愉しげに眺めつつ、しげるはポケットの中からちいさなリモコンを取り出して、カイジに見せつけるようにしてスイッチを切った。
「今日はこれで遊ぼう。……準備はもう、してあるでしょ?」
 しげるはリモコンをポケットに仕舞うと、力なく開かれたカイジの掌の上のボールをそっと取り上げる。
「いっ……嫌だっ……!」
 カイジは首を左右に振りながら、青ざめた顔でしげるから離れようとする。
 その手首をいともたやすく捕らえ、しげるはカイジの体を強く抱き寄せた。
「ふふ……体は嘘をつけないね、カイジさん……」
 嘲笑われて、カイジは顔を赤くして唇を噛む。
 しげるの言うとおり、倒錯したセックスに慣れてしまったカイジの体は、本人の意思とは裏腹に、しげるの体に沿うようにして力を緩めてしまうのだった。

 屈辱に歯を食いしばり、せめてもの反抗のように自分を睨めつける黒い瞳を見つめながら、しげるはカイジのジーンズを寛げ、下履きの中に手を忍び込ませる。
「……っ!」
「ココも、ちゃんと言われたとおりに濡らしてるじゃない……」
 尻の割れ目をなぞり、人差し指を中に押し入れて、ソコが事前にカイジ自身の手によって十分に潤されているのを確認するように、わざとグチュグチュと音をたてて掻き回す。

 こういう関係になってから、しげるが訪れる際には前もってカイジが準備しておくのが、ふたりの間で暗黙のルールとなったいた。
 いつまでもだらだらと矜持を捨てきれないカイジは、完全に陥落するまで不本意だという態度をとり続ける。
 だがその実、しげるが来るときは誰に言われずとも、必ず中を解して待っているのだから、しげるから見ればその態度は滑稽であり、また憐れでもあった。

 しげるはカイジに軽く口付けると、手中のボールを孔に宛がう。
「っ、う……」
 そのまま軽く押し込んだだけで、くぷっ……といやらしくカイジの孔は球体を簡単に飲み込んだ。
「ぁ……あっ、あっ……」
 指で探りながら、うまく前立腺に当たるよう調節する。
 ときどき、しげるがわざと間違えたように腸壁を細い指で引っ掻くと、その度にカイジは身を捩って甘い声を漏らす。
 いちばん感じる部分にぐりぐりとボールを押し付けると、カイジはしげるの腕にしがみついてビクビクと体を痙攣させ、うっすらと濡れた眼差しを送ってくる。
 しげるは今すぐカイジを押し倒してやりたくなるのを必死に堪えながら、指を引き抜いてカイジのジーンズを上げた。
「……? しげる……?」
 てっきり、いつものようにこのままベッドへ移動し、思うさま淫行に耽るものだとばかり思い込んでいたカイジは、しげるの行動に首を傾げる。
 しげるは片頬を吊り上げ、悪辣な笑みを浮かべると、ポケットの中のリモコンを取り出しながら言った。

「散歩しよう。たまには、外で遊ばなきゃね」

 カイジはしばし、ぽかんとしていたが、徐々にその言葉の意味するところを理解すると、みるみるうちに悲劇的な形相になった。
「嫌だっ……! む、無理に決まってんだろっ……!」
 さきほどよりも強い拒絶の色を示すカイジに、しげるはふと無表情になると、リモコンをカイジの顔の前に突きだして、その眼前でスイッチを入れた。
「……くうっ!? ふぁ、あっ……!」
 途端に、カイジが体を折るようにして震え始める。
 中で微弱な振動を放つボールが、カイジのイイところを容赦なく抉る。
 深く前屈みになって身悶えるカイジの姿は、まるでひどい腹痛に苦しんでいるようだった。
「あらら……大丈夫? そんな状態じゃ、周りの人たちに怪しまれるよ?」
 まだいちばん弱いのに……、と、リモコンを見ながら呆れたように言うしげるを、カイジは下からきつく睨み上げたが、絶え間なく襲い来る快感の波に気が狂いそうになって、とうとう喘ぎ混じりに懇願した。
「はっ、あッ、しげ、るっ……! お願、これ、止め、止めて、くれっ……!」
 途切れ途切れの訴えを聞き、しげるはカチリとスイッチを切ってやる。
「はぁ……は、ぁ……んっ、……あ、」
 膝に手を突いて、まるで全力疾走した直後のようにぜえぜえと息を荒げるカイジの口からは、強すぎる快感の余韻か、鼻にかかった艶めかしい声がときどき漏れていた。

 抵抗する気力をすっかり奪われ、くったりとしてしまったカイジの様子に目を細め、
「おいで、カイジさん。ゆっくり、慣らしていこう?」
 しげるはふらつくカイジの手を引いて、玄関へと向かった。
 



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