無題・2(※18禁)
アカギがちょうど3本目のハイライトを灰皿に押し付け、そろそろトイレのドアを蹴破ってやろうかと考えていたところで、ガチャリとドアの開く音がした。
細く開いたドアが、近づくアカギの足音に反応して慌てて閉じようとするのを、手と足を挟み込んで強引にこじ開ける。
「ひっ」
引きつるような声を上げ、中にいたカイジが自分の体を隠すように前屈みになる。
縮こまるようにして立っているカイジの姿を、アカギはしげしげと眺めた。
これは……最高に……
……似合わない。
もとは、女性が着るためにデザインされたものなのだから当たり前だ。これを着るには、カイジではガタイがよすぎる。
男性向けにサイズは大きいが、肩幅は広すぎるし、膝丈のスカートから覗く脚は筋肉質で太い。胸だってまな板のように平らだ。
格好は少女のそれなのに、全体的にゴツゴツしていて女らしいやわらかさの欠片もない。
だがそのアンバランスさに、アカギはなぜか焚き付けられた。逃れられないことを悟ったのか、逆に開き直って堂々と仁王立ちなどしているが、情けなさは隠しきれないようで、目が潤んでいる。
そのいじめ倒したくなるような表情が、女装の不格好さを補って余りあるほど、良かった。
「もう……十分見ただろっ……」
そう言いながら、カイジはそそくさとアカギの体を押し退けてトイレから逃げようとする。
アカギはその腕をはしっと掴み、
「まだ、だよ。これもちゃんとつけないと」
カイジの手に握られたスカーフをしゅるりと引き抜いた。結び方がわからなかったから、つけられなかったのだ。やけに拘るアカギに、今度こそカイジはドン引きした。
「お前、マジで頭沸いてんじゃねえのか」
蔑むようなカイジの視線をさらりと受け流し、アカギは「これつけたら、もう、なにもしないから」と言った。
仕方なく、カイジはアカギがスカーフを結びやすいようにじっと動きを止めた。アカギはニヤリと笑い、カイジの後ろに回ると、その両腕を素早く捻り上げる。
「いでででででっ!!」
油断しきっていたカイジは、突如走った腕の痛みに悲鳴を上げる。その声に被さるように、しゅるしゅると衣擦れの音がして、カイジの両の手首はあっという間にスカーフで後ろ手に縛りあげられていた。
「ククク……ちょろいな……」
「てっめえ!! っざけんなよっ!!」
顔を真っ赤にして激昂するカイジに背後からぴたりと体を寄せ、アカギはカイジのスカートをめくる。
「!!」
カイジは慌てて前屈みになって隠そうとする。しかし両腕を動かせないのでスカートを押さえることすらできず、アカギに見られてしまった。
薄い生地の、女物の下着。色は白。
「ここも、ちゃんと着替えたんだ?」
――だって仕方がなかったのだ、これも穿かないと女装なんかよりもっとエライ目に逢わされるのは明白だから。
きっとねめつけるカイジの目線に、アカギは笑みで返す。
そして、下着の中に手を差し入れた。カイジはぎょっとして身じろぐ。
「なっ、なにも、しねぇ……って……」
「ん? クク……言ったかな? そんなこと……」
「てめぇ……ッ」
そんな応酬を続ける間にも、アカギの手は薄い下着の中で動き、カイジのモノを捉える。
「あっ」
思わず声をあげ、息を飲むカイジ。鼻筋に何度も口づけながら、アカギは揉みこむように扱いていく。
「あ……アカギ……」
カイジの声が震え、甘えるような響きがでてくる。それにあわせて抵抗は少しずつ弱くなり、やがて形だけのものになっていった。
溢れた液で下着が透け、カイジのモノの形がくっきりと見えるようになる。
そこでアカギは手を止めた。
スカートの、前側の裾をめくって大きく持ち上げ、カイジの唇に押し当てる。
「くわえて」
カイジは嫌そうな顔をしたが、しぶしぶ小さく口を開けて固い布を噛んだ。
アカギはカイジの前に移動する。
両腕を縛られ、スカートを口で持ち上げるカイジの姿は、アカギの中の倒錯した欲望を煽るのに十分だった。
不本意そうな、それでいてなにかを期待しているような目と目が合い、アカギは唇を歪めて笑みをつくる。
そして、カイジの前に膝をつき、目の前にあるカイジのモノを下着ごとパクリと口に含んだ。
「!! んんッ、」
ゾクリと背筋に震えが走り、カイジは口の中の布を強く噛みしめる。思わず下を見て、自分のモノをくわえながら見上げてくるアカギと目が合う。すっと細められた双眸に、カイジは居たたまれなくなって視線を斜めに外す。
「ん、んぅ……っ」
カイジの体を知り尽くしているアカギのフェラチオは的確で、カイジの体はどんどん熱を帯びていった。あのアカギが、トイレの床に膝まづいて、こんな姿の自分のものをしゃぶっている、その光景の異常さすら興奮材料になる。
だが同時に、カイジは物足りなさも感じていた。下着越しの愛撫のせいで、決定的な刺激は与えられない。いや、アカギならこんな布一枚隔てていたって、カイジを好き勝手によがらせることができるはずなのだが、わざと手を抜いているのだ。
それがわかっているから、カイジは腹立たしかった。中途半端な刺激をだらだらと与え続けられたせいで、脳が慣れて快感を快感と受け取ってくれなくなり、アカギに触れられるたび痛痒いような感覚がカイジを苛むようになっていた。あまりの苦しさに、カイジの目にじわりと涙が膨らむ。
ぽつり、と頭上に降ってきた滴の感触に、アカギは口を止めて顔を上げた。
さっきまで顔を背けていたカイジが、救いを求めるような顔でアカギを見下ろしている。眉を下げきり、頬を紅潮させながら、それでも従順にスカートをくわえている。その瞳から大粒の涙が零れ、アカギの顔にぽたぽたと落ちた。
アカギはクスリと笑い、宥めるような声音で囁く。
「苦しいの?」
カイジは小さく頷く。その拍子にまた、涙が落ちた。口の端に垂れてきたカイジの涙を舌で舐めとり、アカギは一層柔らかく言う。
「助けてほしい?」
それは悪魔の言葉だったが、カイジは再び、頷くしかなかった。
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