玩具遊び・1(※18禁) 神カイ 大人のおもちゃ アホエロ(特に神域がアホ)



 おとぎ話に出てくる宮殿のような、白い壁の建物。
 それが、七色のネオンによって彩られ、夜闇の中に浮かび上がっている。
 さらに、スポットライトが下から照らし出すのは、入り口の両脇に、狛犬のように配置された、マーライオンのレプリカ像。
 なぜ唐突にマーライオンなのか? 設計者の意図がまったく理解できない。

 うら寂れた真冬の風景から明らかに浮きまくっている、ド派手なその外観。
 それに圧倒されるように、カイジは口をあんぐり開けたままその建物を見上げていた。


『一度、お前と行ってみたかった場所があるんだよ』
 珍しく、赤木からそんなことを言われたものだから、カイジは二つ返事で了承した。
 そうしたら、ヤのつくお方の運転する黒塗りの車に乗せられて、連れてこられた場所が、ここだ。

「変な建物だろ? ずっと気になってたんだよな」
 どこかウキウキしたようすの赤木に、カイジは恐る恐る問いかける。
「……赤木さん、ココがなんだか、わかってます……よね?」
「ん? ラブホだろ?」
「あ……ご存知で……」
 それを承知の上でこんなに浮かれているのなら、それはそれで問題だ。
 カイジは頭を抱える。

 誰もが憧れ、頼りにする神域の男。
 その男が、こんな安っぽいラブホに、子どものように目を輝かせているなんて。

「コレのなにが、そんなに気になったんですか……」
「なんかキラキラしてて、面白そうじゃねえか」
「あんたガキかよ……」
 呆れ顔のカイジを気にも止めず、赤木はカイジの腕をぐいと掴んだ。
「ほら、行くぞ」
 意気揚々と宮殿の入り口へと向かう赤木に引き摺られながら、カイジはげんなり肩を落とした。






「おー」
「……うわ」
 部屋に足を一歩踏み入れると、そこにあったのは白いレースの飾りがたくさんあしらわれた、丸い形のベッド。2つ並んだ枕は、真っ赤なハート型だ。
 その趣味の悪さにカイジは顔をひきつらせたが、赤木は早速ベッドに近づき、物珍しそうに観察していた。

「なんだ、このスイッチ……あ!」
 赤木が枕元のスイッチを押すと、やかましい機械音とともにベッドが回りだした。
「カイジ、これ回るぞ!」
「……見ればわかりますって……」
 赤木はひとしきり回るベッドを眺めたあと、満足したのかスイッチを切り、部屋の中をうろうろし始める。
 カイジはため息をつき、「ちょっと、トイレいってきますね」と声をかけてトイレへ向かった。

 トイレのドアをあけ、カイジはギョッとした。
 なぜか、照明が燃えるような真紅だったのだ。
 とりあえず、壁際のスイッチを何度か切り替えてみたが、赤い照明が点いたり消えたりするだけで、色は変わる気配を見せない。
 仕方なく、真っ赤な空間で用を足す。ちっとも落ち着かなかった。


 寝室に戻ると、一通り探検を終えたのか、赤木はベッドの上に胡座をかいて座っていた。
 白い掛布団の上に、さっきまでなかったカラフルな物体が散らばっている。
 ベッドに近づき、それが何だかわかったカイジは、思わず足を止めて叫んだ。

「あ……あんた、なに買ってんだっ……!」

 グリーンとイエロー、2色のパステルカラーのローター。
 大小さまざまな球体が連なる、クリアレッドのアナルパール。
 爽やかなアクアブルーの、卑猥な形状をした極太バイブ。
 透明なボトルの中に満ちた、薄ピンク色のローション。

「おお、カイジ。最近は、こんなもんの自販機まであるんだなぁ」
 面白くて、つい買い込んじまったよ、と晴れやかな顔で言う赤木に、カイジはくらくらと目眩を覚える。
 さっきは気づかなかったが、確かに、部屋の隅にはラブグッズの自販機がある。
 でも、まさか買うなんて。しかも、こんなにたくさん。

 赤木はおもちゃを手にとって眺めたり、スイッチを押して動かしてみたりしている。その様子はまさしく、新しいおもちゃを与えられた子どもそのものだ。
「なんだこのボタン……」
 バイブについている小さなボタンを押すと、先端の穴からぴゅっと透明な液体が噴射された。
 どうやら、ローションを仕込んであるらしい。
 その生々しい仕掛けに、カイジの口から乾いた笑いが漏れる。
「……うわ……キモ」
「……」
「ひっ! こ、こっち向けんな!」
 ローションで濡れたバイブを片手に、じりじりと近づいてくる赤木に、カイジは思わず逃げ腰になる。
「なぁ、カイジ。これ使って遊ぼうぜ」
 セックスを誘うときのように、赤木は声を低くして囁く。
「イヤです」
 にべもなく断られ、赤木は少しムッとした。
「なんでだよ、せっかく買ったのに。おもちゃってのは、遊ぶためにあるもんだろ?」
「あんたが勝手に買ったんだろ。だったら、ひとりで遊べばいいじゃねえか! お、オレを巻き込むなっ……!」
 言い合いをしている間にも赤木が近付いてくるので、カイジはくるりと赤木に背を向けて部屋の出口へ猛ダッシュをかける。
 しかしあっけなく追い付かれ、引き寄せられて背後から抱き込まれた。
「ちくしょうっ、は、離せっ……!」
 がむしゃらにもがいて逃げようとするカイジの耳を隠す髪を掻き上げ、赤木は言葉を区切って言い聞かせるように囁く。
「俺は、お前と、遊びてえんだよ……」
「! あ、っ」
 そのまま、わざとぴちゃぴちゃ音をさせて耳を舐め回すと、たちまちカイジの体から力が抜ける。
 赤木はカイジの顎を持ち上げ、口付ける。
 軽く啄みながら、太股を撫でまわすとカイジはぎゅっと赤木の腕にしがみついた。
「ん、ん……ふ、ぁ……」
「カイジ、口、開けろ」
 威圧的な口調に逆らえず、言われるままに唇を開くと、ぬるりと赤木の舌が入り込んでくる。
「んっ……! んく、んんっ……!」
 マズイ。これは、どう考えても流されるパターン……。
 頭のなかで警鐘が鳴り響き、カイジは必死で口付けを解こうとする。
 しかし抵抗すればするほど、赤木の舌や手の動きは大胆になり、カイジの体を骨抜きにしてしまうのだ。


 赤木はカイジとキスしたまま、二人してベッドに倒れこむ。
「いっ……てぇ!?」
 ベッドの上に散らばっているローターのリモコンに頭をぶつけ、カイジは少し涙目になった。
 そんなカイジを見て赤木は失笑する。
「お前……アホだな」
「うるせぇ! あんたが下らねえもん買うからだろうがっ……!」
 吠えるカイジの頭の下からローターをどけてやり、赤木は再度カイジに口づける。
「っ! ん、ん……」
 舌を絡ませながら、カイジの着ているシャツをするするとたくし上げていく。
 ささやかなカイジの抵抗をものともせず胸を露にさせると、ちゅく、と唾液の糸を引きながら唇を離す。
 至近距離で見る赤木の目が、欲を剥き出しにしたような、獣みたいにぎらぎらしていて、くそ、こんな目をするなんて卑怯だ、と思いながら、キスの余韻も手伝って、カイジはすっかりのぼせ上がってしまったのだった。




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