初夜・1(※18禁) しげカイ初夜話 ゲロ甘 しげるが猫かぶってます


 しげるには最近、気に食わないことがあった。
 その原因は、目の前で風呂上がりの濡れた髪を拭きながら、深夜のつまらないテレビ番組をぼーっと眺めるカイジである。

 カイジとしげるは、つい最近恋仲になったばかりなのだが、10近い歳の差のためか、カイジはしげるを軽んじている部分がある。

 博奕のことを除けば、しげるは一般的な中学生よりも世間に疎い。なにせ、学校にもほとんど通っていないのだ。
 しかしそこが、カイジを増長させる大きな要因になっていた。
 しげるが無知を露呈させるたび、カイジはまるで兄のように世の中の常識について教えてやるのだが、その時のカイジの、優越感に満ちた表情が、しげるにとっては頗る面白くないのだ。

 日々の行動の端々で感じられる、子ども扱い。
 その最たるもので、しげるにとってもっとも疎ましい瞬間は、1日の終わりにやってくる。


 時計が深夜2時をまわったころ。
「そろそろ寝るか……」
 カイジは大あくびをしながらテレビを消し、ベッドに上がる。
 そうして当たり前のようにベッドの端につめ、掛け布団を捲ってしげるを見た。
「ほら、来いよ」
 しげるは眉間に皺を寄せ、渋い顔になる。

 寒くなってきたので、カイジは湿った薄い布団にしげるを招き入れるようになっていた。
 そのくせ、ただ並んで眠るだけで、指一本体に触れてこない。
 つまりしげるは、布団をあたためる電気アンカ代わりにされているのだ。

 恋人同士になりたてほやほやのふたりが、夜、一緒の布団で寝るということが一体どういうことなのか。
 わかっていないカイジでもあるまい。

 それなのにカイジは、よもやしげるが自分に対して劣情など抱くまいと思い込み、安心しきって寝顔を晒す。
 カイジにとってしげるはまだまだ無知な子どもだし、ましてや男同士だし、性的な関係になるなんて夢にも思えない。なるとしても、まだまだ先のことだろう……大方、そんな風に高をくくっているのだとしげるは推測する。

 そんなカイジに、しげるは悶々とさせられるのだ。
 裏社会では悪漢だなんだと騒がれるしげるだが、その体は至って普通の中学生。
 風呂上がりのいい匂いをさせている恋人と同じ布団に抱まれば、思春期の体には起こるべくして起こる変化がある。
 完全に無意識でやっているのがまた、しげるの苛立ちと劣情を煽る。

 しかししげるは耐えた。
 自分に向けられる好意に恐ろしく鈍感なカイジをあの手この手で口説き落として、ようやく恋人同士になったのだ。
 ここで不信感を抱かせては今までの積み重ねが水の泡だと自分に言い聞かせ、襲いかかりたくなるのを自制しつづけた。
 しかし、そんな葛藤も露知らず、カイジは暖をとるためだけに毎日しげるを隣に招き入れるのだ。

 そんなことが何日も続けば、流石のしげるもそろそろ限界である。
 ベッドの脇に立ったまま、睨むように自分を見下ろすしげるに、カイジは訝しげな顔をする。
「お前、なに変な顔してんだ? さっさと来いよ、布団冷てぇから」
 その台詞に、とうとうしげるの中のなにかが音をたてて切れた。
(もう、実力行使しかねぇか……)
 ただし、あくまでも無理矢理という形は避けなくてはいけない。
 今後のことも考えると、多少コスい手を使ってでも、カイジに合意させた上でコトに及ばなくては。

 顔にはそんな不穏な考えをおくびにも出さず、しげるはカイジの隣に滑り込む。



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