ナイトプール(※18禁)・3


 ひどく混乱したカイジはなぜか涙目になりながらも、アカギを問い詰める。
「なんなんだよっ、これはっ……!!」
「なにって……見りゃわかるでしょ」
 顔色ひとつ変えずにしれっとそう答えると、アカギは掴んだままのカイジの腕を引き寄せた。
「っ……!!」
 存外強いアカギの力に、カイジは水中だというのにまろびかけ、アカギの腕の中に凭れてしまった。
「カイジさん……」
 耳許に、湿った吐息。
「っあ……!」
 そのまま耳を舐め回され、カイジはビクリと身を竦ませる。
「いや……だっ、離せよっ……! ひっ……!」
 逃げようと力いっぱいもがくが、水中ではうまく身動きが取れない上、尖ったアカギの舌が耳の穴に潜り込んできて、くすぐったさに力が抜けてしまう。
「いっ、嫌だってっ……! なに考えてんだよっ、こんなとこでっ……!!」
 もはや半ベソをかきながらカイジは喚きたてる。
 見も知らぬヤクザや女ばかりだとはいえ、こんなーー複数の人の目がある中でこんなこと、狂気の沙汰だ。
 カイジがそう非難すると、アカギは喉を鳴らして笑う。
「だから面白いんじゃない」
「アホかっ……! こっちはお前のトチ狂った性的嗜好に付き合うつもりなんざ……んぁっ!」
『うるさい』とばかりに乳首を抓りあげられ、カイジは悲鳴じみた声をあげてしまう。
 クク……と憎たらしく笑うアカギを、カイジはギリギリと睨めつけた。
「お前っ……わかってたんだろっ、こうなることっ……!!」
 アカギのリアクションから察するに、最初から全てわかっていたとしか思えない。
 案の定、アカギはふてぶてしくも「まぁね」と答えた。
「ヤーさんがホテルなんざ貸し切ったら、女呼んでヤることヤるに決まってる」
 そんなことは自明の理だとでもいうように淡々とした口ぶりに、カイジはグッと唇を噛み締める。

 ぐっ……クソっ……なんてアホなんだっ、オレはっ……!
 冷静に考えてみりゃ、怪しさ満載だろうがっ……!
『ヤクザの貸し切りホテルのプール』なんざっ……!
 ちょっとでもコイツに感謝なんてしたのが間違いだったっ……!!

 今まで幾度も騙し討ちのようにしてアカギからの辱めを受けてきた記憶が蘇り、カイジが自分の愚かさにボロボロと涙を零していると、アカギが顔を覗き込んできた。
「カイジさん、泣いてる?」
「っ、泣いて、ねぇ……、っ!」
 しゃくりあげながら言い返すと、アカギの舌が濡れた頬を拭っていく。
「泣かないで」
「ん……ッ」
 そのまま深く口づけられ、カイジは慌てて周りを窺う。
 アカギの体を引き剥がそうとするが、すかさず舌をねじ込まれてしまう。
 アカギのキスに滅法弱いカイジは、こうされるとたちまちおとなしくなってしまい、抵抗する気力までアカギの舌に絡め取られてしまう。
 くちゅくちゅといやらしい音をたてながら、思う存分カイジの口内を舐り回したあと、満足したようにアカギは唇を離す。
 透明な糸がアカギと自分の唇を繋ぐのを、ぼんやりと惚けたようにカイジが眺めていると、アカギがカイジの額に自分の額を押し当てた。
「ヤーさんから誘われたとき、断ろうと思ったよ。プールになんて興味ないし。だけど、あんたとなら……」
 耳触りのよいテノールでそんなことを囁かれ、カイジは胸をドキリとさせた。
 ナイトプールに夢中になってひとりではしゃぎまくり、その後は急転直下の展開にパニックになっていたカイジは、このときになってようやく、アカギの姿をまともに見た。

 しっかりと筋肉がついているのに、鞭のようにしなやかな体。
 均整の取れたその肢体に、抜けるように白い肌はどこかミスマッチなのに、それが返って危ういエロティックさを感じさせる。
 ナイトプールのライトに照らし出され、陰影のくっきりと刻まれたその体は、匂い立つような色気を放っていた。
 艶やかな白い濡れ髪。その隙間から覗く鋭い瞳は、射るようにまっすぐカイジだけを見つめている。

 カイジは唾を飲み込む。汗が滲み、じわりと体温が上がるのを感じた。
「それに、ほら……」
「あ……ッ!」
 カイジは目を見開いて体を跳ねさせる。
 するりと伸びてきたアカギの手が、水中でカイジの陰茎を水着の上から握ったからだ。
「あんただって、興奮してる……」
「んっ、あっ……や、嫌、だっ……」
 形を確かめるように水着の上からなぞられ、カイジの腰が戦慄く。
 アカギの言うとおり、ソコはすでに芯を持ち、水着の中で窮屈そうにしていた。
「他人のセックス見て興奮してるの?」
 耳を舐めながら揶揄われ、カイジはカッと顔を赤くする。
「ちが、違うっ……!」
 これは、お前の裸を見たせいでーー
 思わず本当のことを口走りそうになり、カイジはハッとして口をつぐむ。
「違わないでしょ……」
「ひっ! あっ、ぁっ、んっ……」
「カイジさんのスケベ……」
 水着の中に侵入してきた手に直に握られ、荒々しく扱かれて、カイジは腰が砕けそうな快感に身悶える。

 考えてみれば、カイジがアカギに会うのは数ヶ月ぶりだ。
 その間、カイジは自分の手でしか処理してこなかったわけで。

 だから人の手で弄られるのは本当に久しぶりで、カイジはたちまち目眩く快楽の虜になり、アカギの動きを助けるかのように自ら腰を揺らし始める。
 その卑猥な仕草に、アカギは凶暴な表情で目を眇め、カイジの腰を抱きながらプールの壁際へ移動した。


 広いプールの端に追い詰められ、カイジは不安げにアカギを見つめる。
 あやすようにやわやわと腰を撫でていたアカギの手が下ろされ、水着の中に潜り込んでくる。
「あ、アカーー、んぅっ……!!」
 長い指が一本、つぷりと後ろに潜り込んできて、カイジは語尾を甘く溶けさせた。
 硬く閉じた窄まりを宥めるように、ほんの指先だけを出し挿れされる。
「力抜いて……」
「あっ! ぁ、ふっ……」
 胸をぬるりと舐めあげられ、乳暈ごと口の中に含まれて、カイジはあられもない声をあげる。
 唇をやわらかく押し当てて幾度も吸い上げ、ときおり、意地悪するように乳首に歯を立てられる。
 恋人の悦ぶやり方を熟知したアカギの手管によって、カイジはあっという間に骨抜きにされ、アカギの支えなしでは立っていられないほど、身も心もぐにゃぐにゃにされてしまった。
 ほどよく弛んだところを見計らい、指が増やされる。
「ぁ……んっ、あっ、アカギ……っ」
 付け根まで挿れられた二本の指で中を掻き回され、カイジはとろけた表情でひたすら喘いだ。
 アカギの長い指は的確にカイジのいいところを刺激して、怖いくらいの快感で溺れさせようとしてくる。
 カイジのモノも黒い水着の中でパンパンに膨れ上がり、アカギの指が蠢くのにあわせ、トロトロと白濁混じりの露を先端から溢れさせていた。
 はぁはぁと息をつきながらカイジが俯けば、アカギと視線がかち合う。
 自分の胸に吸いついたまま、ニヤリと口端をつりあげるアカギに、カイジは耳まで赤くなった。



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