泥濘にて・1(※18禁)モブカイ→アカカイ 強姦 愛なし
不鮮明な映像の中。複数の男が、よってたかってひとりの男に群がっている。いかつい背中の向こうに見え隠れする、床に転がされた裸体。その脚は胸につくくらいきつく折り曲げられ、腕は頭上で一纏めにされ、それぞれ赤い縄で縛られている。
機械的に性感を高めるためだけに、数多の武骨な手がその肢体の上を蛇のように這い回る。
『ほら、入ったぞ』
興奮に塗れた声を上げる男の体は、縛られた男と繋がっていた。
蛍光灯の灯りのもとにさらけ出された秘部。本来湿り気を帯びるはずのないそこは、他の男によって出されたもので潤沢に濡れており、男が性器を抜き挿しする度、ぐちゃぐちゃと咀嚼するような音をたてる。赤黒い肉棒に、白いものが絡んでぬらぬらと光る。
激しく揺さぶられ、縛られた男はきれぎれに声を上げた。
『あ、っあっ、い、嫌だっ……』
『はは……嫌だって割に、すげぇ勃たせてんじゃん』
別の男が剥き出しのものに触れ、揶揄するように言う。男の言うとおり、それは硬く勃起してしとどに濡れそぼっていた。そのまま乱暴に扱かれ、男の口から上がる声が悲鳴じみたものに変わる。
『やめろっ……! この下衆ッ、変態っ! あっ、さわる、なぁっ……』
『さわるなぁ、だって。かぁわいい』
馬鹿にしたような言い方に、狂ったような笑い声が上がる。
肌の打ち付けられる乾いた音と、接合部から漏れる湿った音。
それらを掻き消すように、苦痛と快楽の喘ぎに混ざった呪詛のような言葉が撒き散らされていく。
『あっ、んっ、畜生ッ、殺すっ、くそっ、殺してやるっ……!』
「実によく吠えるなぁ。まぁ、こういう輩の方が案外喜ばれたりするんだが」
そう言って、スーツの男は低く喉を震わせた。
薄暗い部屋の中、男の目の前で四角いモニターがぼんやりと光っている。
「弱い犬ほどよく吠えるというのは真理だが、よく吠える犬が必ずしも弱いとは限らない。実際、このカイジくんには中々手を焼かされていてな。正直な話、今回君が依頼を引き受けてくれて、助かったよ」
画面の中で繰り広げられる陰惨な光景を愉快そうに眺め、その男は自分の斜め後ろに立つ男に視線を投げる。
「それにしても驚いたな。今回の話、蹴られて当然だと思っていた。勝負はともかくとして、その後の条件が――君にとっては、なんの面白みのないものだろうと思っていたからね。
それほど、この男がお気に召したということかな。なぁ、赤木君」
含みをもたせた声で名前を呼ばれても、アカギは返事をしない。
モニターの中で蹂躙されているのは、先程までアカギと死闘を繰り広げていた男だった。
この男は、その企業に相当の借金と、浅からぬ因縁があるらしい。
顔見知りのヤクザをつてにしてに紹介された、とある企業からの依頼。
企業側は男の実力を多少なりとは認めているらしく、借金の帳消しを条件に有名なギャンブラーと勝負をさせ、そういう余興のためなら金を惜しまないという連中から見物料をたんまりせしめようという魂胆らしかった。
単身勝負を挑んできたその男と、アカギは企業側の代打ちとして戦った。
無資力であるその男に課せられた代償は、体。とはいっても、こんな――凌辱を受けるといった内容までは聞かされていなかったようだし、まして想像もしていなかったのだろう。
勝負に負けた人間がこんな扱いを受ける場面など、アカギは今まで腐るほど見てきたし、もっと酸鼻を極める場面に立ち会ったことだってある。
そんなアカギにとって、こんな映像など別段珍しくも面白くもないものだった。
だがその視線は今、モニターに固定されている。四角い光を映す漆黒の瞳は、風のない湖面のように揺れ動かない。
スーツの男は眉を上げた。どうやら自分の言ったことはあながちはずれでもないらしい。モニターの中で凌辱の限りを尽くされているこの男――伊藤開司のなにかが、アカギの琴線に触れたのだ。
男はひとつ咳払いをし、やんわりと牽制する。
「まぁ……なんでもいいが、妙な気まぐれだけは起こさんでくれよ。お客様方は、こんな茶番ではなく、この後のことを一番の楽しみにしておられるのだから」
男の言葉が終わるか終わらないかのうちに、アカギは口を開く。
「それも含めての依頼だと言いたいんでしょう。いちいち釘をささなくても、言われたことくらいはちゃんとこなすさ」
うるさいと言わんばかりの口調に、スーツの男はわざとらしく肩を竦める。
モニターに視線を戻すと、さきほど腰を振っていた男がちょうど果てたようだった。
引き抜かれたものを追うように白いものを溢れさせるそこに、息をつく暇もなく、別の男が猛ったものを押し当てる。
『おいおい、寝るなよ。まだ4人目だろ?』
『あぁ、あ、』
一息に貫かれ、弛緩していた体がびくりと仰け反った。
きつい締め付けに感じたのか、挿入した男が微かに声を漏らす。
『そうそう、その調子。まだまだ後がつかえてるんだから、がんばって』
『たっぷり注いであげるからさぁ。お兄さんのココに、ね』
鼓膜から犯されていくような、不快な笑い声が響く。
終わらない責め苦に対する恐怖と怒りのためか、映像からでもはっきりとわかるほど大きく肩を震わすその男を、アカギは無感動な瞳でただ見詰めていた。
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