目と目 短文



 引き入れたカードに走る視線の、わずかな揺らぎすら見逃すまいと、常より大きく見開かれた黒い瞳が、アカギの目を見つめている。
 ずしりとした質量さえ感じるその視線を受け止め、掬いあげるようにしてアカギが見返せば、たちまち視線は絡み合い、互いの体に火をつける。

 美しい目だと、口には出さねど互いに強く惹きつけられている。
 切れ味鋭く光るその眼に、切り込まれまいと躱しながらも、容赦なく深層まで暴かれるのを、頭のどこかで渇望している。

 臓腑が静かに燃え始め、呼吸までもが次第に熱くなっていく。
 賭けるものは端金の、遊びのような賭事でさえも、ふたりは常に本気で挑む。
 きれいな瞳の底に沈むものを、素手で探りあうような視線。
 複雑に絡みあったそれはやがて、二度と解けないくらいに縺れ、爛れていく。

「レイズ」

 呟いて、無造作に積み上げるのは賭け金だけではなく、互いの興奮と期待。

 絡ませ合うのは、視線だけ。
 会話はない。キスもしない。互いの肌に触れることすらない。

 それでも、脳天から突き抜けるような快感が、ふたりの体を隅々まで痺れさせる。

 まるで、目と目でセックスしているかのようだ。
 この快楽を覚えてしまったら、もう体で繋がるだけでは、とうてい満足できない。

 じりじりと、焦らして、焦らして。
 視線の熱で溶け合ってしまいそうになるまで、ふたりは視線で絡み合う。

 もう二度と戻ってこられないくらい、美しい瞳の奥深く、入り込んで溺れてしまうまで。





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