いたいのとんでけ(※18禁) アカギさんが怪我をした話 カイジさんが淫乱



 息を切らしながら障子戸を開け放ったカイジは、畳に敷かれた布団の上で長閑に欠伸する男の姿に絶句した。

「……あぁ、カイジさん。ひさしぶり」
「アカギっ……、どうしたんだよっ、その怪我っ……!!」

 言下に捲し立てるカイジに、アカギはなんでもない風にカイジに向かって言う。
「この間、ちょっとね」
「ちょっとね、ってなぁ……」
 そういうレベルじゃねぇだろ、この惨状は。
 唖然としたまま、カイジは改めてアカギの姿を食い入るように見る。

 真っ白なギプスで物々しく固定された右腕。
 左足のふくらはぎから先も、同じようにギプスで覆われていて、足の下にはクッションのようなものを敷いて高さを出してある。
 ゆるく着付けられた黒い浴衣のあわせから、胸に巻かれた包帯が見え隠れしている。
 右頬には大きな赤黒い痣。口角に滲む、鮮やかな血の跡。
 そしてなにより目を引くのは、左目を覆う白い眼帯だった。


 蒼白な顔で言葉を失うカイジの目の前で、アカギは右腕をちょっと持ち上げてみせる。
「ヤーさんも医者も大袈裟なんだ。こんなもん、たいしたことねぇよ」
「ばかっ、動かすなっ……!!」
 大慌てで嗜めるカイジの剣幕に、アカギは肩を竦めた。

 カイジはとりあえず障子戸を閉め、急いでアカギの傍に座る。
「どうせまた、バカな喧嘩でもしてきたんだろ」
「向こうからふっかけてきたんだよ」
 素っ気ない返答に半眼になりつつも、とりあえず命に別条はなさそうで、カイジは安堵のため息をつく。

 そんなカイジを右目だけで見ながら、アカギは口を開いた。
「もうすこし、警戒心もった方がいいんじゃない」
「……あ?」
「オレの名前が出たからって、見ず知らずのヤーさんの車に易々と乗り込むなんざ、相変わらず大甘だな、あんた」
 つけつけとした物言いに、カイジは渋い顔になる。

 確かに、顔も見たことのない、いかにもヤクザ然とした男にアパートの前で声をかけられたときは、あの悪徳企業絡みかと青ざめ、それなりに警戒もした。
 だが、男の口からアカギの名が出て、さらに大怪我を負って組の屋敷で匿っていると聞かされた瞬間、一も二もなくカイジは黒塗りの車に乗び乗っていたのだ。

 アカギの指摘は的を射ている。
 帝愛に追われる身でありながら、確かに自分は無用心すぎた。
 でも、取り乱すのも心配するのも、当然だろうが。恋人なんだから。

 恨めしげに見つめるカイジを、アカギは愉しそうな視線で受け流す。
 あんたの心などすべてお見通しだとでも言いたげな瞳の色に、カイジは唇を尖らせた。


 屋敷へ向かう道中、カイジがヤクザから聞いた話では、加害者は代打ちでこてんぱんに打ち負かした相手だったらしい。
 どんな麻雀だったのかは知る由もないが、どうやら相当深く恨まれたようで、体格がアカギの二倍くらいはありそうな格闘家崩れの男たち六名に夜道で待ち伏せされ、暴行を受けたそうだ。

 だが、騒ぎを聞きつけた組の連中が現場に駆けつけたとき、屈強な男たちが芋虫のように地面に転がるなか、アカギがひとり、頭から血を被ったような有様で立っていたらしい。
 ヤクザでさえ呆れ果てるほどの酸鼻を極める光景だったが、さすがのアカギも無傷というわけにはいかず、そのまま立ち去ろうとするのを無理やり屋敷に連れ帰って医者に診せると、果たして全治二ヶ月ほどの大怪我と診断され、今に至るということであった。


 ヤクザの話を反芻し、カイジはため息をつく。
 まったく、驚かせやがって。無事だったからいいようなものの、下手したら殺されてただろうが。
 しかし毎度のことながら、アカギの怪我にヤキモキさせられるのはカイジばかりで、どんな状況でもアカギは変わらず、泰然としている。
 クールなその面を憎たらしく思わないでもないが、今回ヤクザがカイジのところへやって来たということは、それすなわち、アカギがカイジに知らせるよう、頼んだということだ。

 アカギが自らの意思で、自分を呼び寄せた。
 男の性格をよく知っているからこそ、それがいかに貴重なことなのか、カイジにはよくわかっていた。

 本当は厳しい表情を保ちたいのに、気を抜くと緩みそうになる顔を引き締めるため、カイジは大きく咳払いをすると、アカギに尋ねた。
「痛むんだろ……?」
「まぁ、すこしは」
 まるで他人事のように淡々と答えたあと、アカギは思いついたように浅く笑った。

「カイジさん。痛み止め、ちょうだい」

 ……痛み止め?

 カイジは頭に疑問符を浮かべたが、アカギが寝たまま左手で手招きをしたことでその思惑を悟り、顔をしかめた。

 仕方なく身を屈め、アカギに顔を近寄せてやると、軽く触れ合うように唇が重なる。
 目を開けたまま、互いの腹を探り合うように、角度を変えて幾度か啄む。
 どちらからともなく口を開け、舌を絡める。
 ぴちゃぴちゃと淫靡な音が響き渡る。ぬるぬるした肉塊が生き物のように蠢く。
 アカギは口の中を切っているのか、混ざりあう唾液はほんのり錆びた味がした。
 アカギの味と匂いに満たされ、カイジの頭がぼうっとしてくる。触れられてもいないはずの下半身が、むずむずと疼く。

 唇を離すと、透明な糸が密やかにふたりを繋いだ。
「こんなんで……、痛み、紛れるのかよ」
 微かに瞳を潤ませながら、吐息の混ざりあう距離で、カイジが問いかける。
 ああ、と嘯くアカギに、カイジは唇を甘く噛んだ。
「じゃあ……、これは……?」
 言下にそろりと手を伸ばし、浴衣の上からアカギの太腿に触れる。
 アカギの顔を見つめながらゆるゆると撫で、前の合わせに手を差し入れてソコをはだけさせる。
 透けそうに白い足の真ん中で一段濃く色づいている肉塊が露わになると、カイジはためらいなくそこに顔を伏せた。

 落ちかかる長い髪を鬱陶しそうに左手でさらえ、竿の根本に舌を押しあてる。
 アカギの反応を窺いつつ舌を滑らかに往復させ、ビクリと動く亀頭にちゅうっと吸いつき、頬張った。

 肉の形を確かめるように舌を這わせつつ、喉奥まで咥え込む。
 口いっぱいに溜めた唾液をこぼさないようにじゅるじゅると啜りながら、カイジは激しい口淫に没頭していった。

「あらら。興奮しちゃった……?」
 嘲る声を無視し、口内を窄めて強く吸い上げる。
 さっきのキスで火がついたのは確かだが、突然こんなことをおっ始めた理由はそれだけではない。

 カイジは今、ものすごく気が立っているのだ。
 自分の恋人を傷つけられた事への怒り。こんな目に遭わされても、平然としている男に対する苛立ち。
 それらは、アカギとつきあい始めてから度々味わわされてきた感情だった。

 しかし、いつの頃からだろう。
 それらの感情に、どす黒い嫉妬が混ざるようになっていた。
 ほんの一時とはいえ、アカギと本気でやり合うことのできた有象無象に対する嫉妬。
 赤木しげるという存在を構成する汗や血が、自分以外の相手に消費されたということへの、狂気じみた嫉妬だった。

 それを自覚した瞬間、カイジの手は自然にアカギの太腿へと伸びていた。
 ためらいや羞恥など、大きすぎるその感情の前では些末ごとだった。

 普段であれば居たたまれなさに伏せてしまう三白眼は、上目遣いで男の顔に固定されている。
 挑発するようなカイジの視線を受け、今は片方だけの鋭い瞳が悠然と細められる。

 会話を交わし、物を食べるためにあるはずのカイジの口は、今や卑猥な性器と化していた。
 じゅぷっ……じゅぷっ……
 障子戸の向こうにまで届くほど激しい水音を響かせながら、口いっぱいの男根を愛撫していると、やがて、口内で熱が弾けた。
「……ッ!」
 どくっ……どくっ……と吐き出される濃厚な液体に噎せながらも、カイジは喉を鳴らしてすべて飲み下す。
 枕元からの熱っぽいため息を聞きながら、尿道口に残った残滓まで、ちゅる、と吸い上げ、カイジは顔をあげた。
 それだけでは飽き足らず、竿を伝い落ちる精液を指先で掬い上げ、荒い息を繰り返す唇の隙間に押し込むと、うまそうに舌を這わせて味わう。
「やべ……、マジで興奮してきた……」
 真っ赤に上気し、催淫剤でも飲んだかのようにとろんと濁った目で笑うカイジの顔を、アカギは黙って見つめている。
 切れ長の奥底に燃えるような劣情が渦巻いているのを見て取って、カイジの息がますます荒くなった。

 性急な動作でジーンズと下履きをまとめて脱ぎ捨てると、現れたカイジのモノはそそり勃って天を仰いでいた。
 カイジは唾液と粘液にまみれた手を後ろへ持っていき、躊躇なく指を二本突き入れる。
 微かな抵抗と圧迫感に構うことなく付け根まで挿入し、ぐちゅぐちゅと音をたてながら解していく。
「んっ……、く……っ」
 排泄に使う場所を弄るという不快感と紙一重の快感に、カイジは悩ましげに眉を寄せる。
 勃起したカイジのモノの先端からは早くも先走りが溢れ、竿を伝って黒い下生えをしとどに濡らし、その下で硬く膨れている陰嚢までをも湿らせていた。
 自らの手でしどけなく乱れながら男根に貫かれる準備をする姿に、アカギのモノがふたたびゆるゆると勃ちあがったのを見て、カイジは自らの後ろを掻き回しながら、勝ち誇ったように口端をつり上げる。

 アカギの体に負担をかけぬよう、カイジはアカギの腰をゆっくりと跨いだ。
 痛いほど勃起し、唾液に濡れ光るアカギのモノを支え、尻穴に擦りつける。
 アカギが自由に身動きできないのをいいことに、わざと焦らすように擦りつけ、ピクピク震える男根が硬さを増していく感覚を愉しむ。
 べたべたに濡れた唇をぺろりと舐めるその姿は、娼婦のように淫らだった。

 ひとしきり、そうやって遊んだあと、カイジはいよいよアカギのモノを窄まりにぐっと押し当てる。
「いいか……挿れるぜ……?」
 期待に息を荒げながらニヤリと笑うと、カイジは一気に腰を落とした。
「〜〜ッ……!!」
 ズンッと腹の奥まで串挿しにされる感覚に、カイジは大きく身をよじり、たまらないといった風に歓喜の涙を溢れさせる。
 ハッ、ハッ、と犬みたいな呼吸を繰り返しながら、カイジは汗みどろになってアカギの上で腰を振りたくった。

「んっ、んっ……、ァ、っ、はぁっ……」
 妄りがましい秘めごとが外に漏れないよう、可能なかぎり声をたてずに交わっていると、獣の息遣いと、ぬちゅっ……ぬちゅっ……という下品な水音が、絶えずカイジの耳を犯す。

 硬くしこった乳首が布に擦れる感覚に焦れ、カイジは荒々しい動作でTシャツをたくし上げる。
 ピンと勃った突起に指が触れただけで、ビリビリと背筋が痺れる。
 自らの指で押しつぶし、捏ね回しながら、増幅する快感をひたすら追うように、カイジはアカギの上で跳ねた。

 ときおり、組員が廊下を歩く音や、低い話し声が障子戸越しに聞こえてくる。
 そのスリルさえ興奮材料になって、物音がするたびカイジは媚肉をきつく締め上げる。

 熱く狭いカイジの中でアカギ自身も恐ろしいほど硬くなっており、長くセックスしていなかったせいもあって、カイジは早くも極まった。
「あ、いくいく……でる……っあぁ……ッ!!」
 吐精感にゾクゾクと背筋を震わせながら、カイジはびゅるるっと射精する。
 勢いよく放たれた大量の精液は、アカギの浴衣の胸あたりまで汚した。

 絶頂によるキツい収縮に絞られ、アカギも眉を寄せてカイジの中で二度目の精を吐き出す。
 腹の中でじわりと広がる熱を感じ取り、カイジは甘い声をあげた。
 イッている最中だというのに、中出しされただけで、白濁まみれのカイジのモノはぴくぴく震えながらまた勃起していた。

 ひさびさの性愛の虜になったカイジは、ぜぇぜぇと息を乱しながら、とろけた顔でアカギに笑いかける。
「はぁ、はぁ、ン……っ、足りねぇ……」
 言うが早いか大きく腰を振りはじめるカイジに、アカギは低く囁いた。
「ね……カイジさん。入ってるとこ、ちゃんと見せて……」
 無傷の左手で太腿を撫で上げられ、カイジの陰茎がピクリと震える。
「はっ……、怪我人のくせに、注文だけは一丁前だな……」
 居丈高に言い放ちつつも、カイジの胸はドキドキと高鳴り、後ろもきゅんきゅんと疼いていた。

 いそいそと腰を浮かせ、体の向きを変えてアカギに背を向けると、いきり勃った男根に手を添えながら、腰を落としてグプッ……と根本まで飲み込む。
「あっ、ん……っ、ほら……どうだ? このスケベ野郎……」
 大きな尻をアカギに見せつけるように動かしながら、カイジは嬉しそうに笑う。
 ぶちゅっ……ぶちゅっ……
 中出しされた精液が泡立つほど激しく尻を上下させたり、大きくグラインドさせたり、心地の良い肉壺の中でアカギ自身を翻弄しながら、カイジは男を悦ばすためだけの淫らな動きに惑溺する。

 男根をうまそうに咥え込む尻も、男に媚びる淫乱な動作も、余すところなくアカギに見られている。
 背後から絡みつくような視線を感じ、カイジはますます貪婪にアカギの上で乱れ、よがり狂った。

 だが、黙ってされるがままになっていたアカギが、いきなり腰をグッと突き上げたので、不意をつかれたカイジは衝撃に大きく目を見開き、仰け反った。
「ひぁっ!? あ、ぁんっ、ばか、うご、くなぁっ……!!」
 突如襲ってきた激しすぎる性感に飲まれながらも、アカギの体を気づかうカイジは必死に咎めたが、男は聞く耳など持たず、欲望のまま、ひたすらカイジの中を突き上げてくる。
「んうっ……こら、やめ、ろって、アっ、ん……っ」
 意思を持って動く肉茎に犯されるのは、自ら腰を振って一方的に貪るのとは比べ物にならないくらい気持ちいい。
 カイジは涙と涎で顔をぐちゃぐちゃに汚しながら、あられもなくよがる。
「あっ、はぁっ、きもちぃっ……! あかぎっ、アっ、もっとっ……ふぁあっ、あッ!!」
「……痛いの飛んでく前に、あんたがトんじまいそうだな」
 嘲りを含んだ声も、カイジにはもはや届かない。
「あッぁ、だめ、もうイクっ、でるぅっ、……あぁア……っ!!」
 背をしならせてひときわ高い声を上げると、カイジは二度目の精を放った。
 一度目よりも薄い色をした精液が、震える怒張からぴゅるぴゅると迸る。
「……っ、出すよ、カイジさん……っ」
 びくんびくんと暴れながら締め上げてくる内壁を割り開くようにグッと腰を突き上げ、アカギもカイジの最奥で射精した。
「ふぁぁ……あ……すげぇ、でてる……、っ」
 グリグリと腰を押しつけて容赦なく子種を注がれる感覚に、カイジは恍惚の表情でガクガクと全身を痙攣させた。

 濃密な空気の漂う部屋に響く、ふたりの荒い呼吸音。
 散々吐き出された大量の精液が、気だるくふしだらな匂いを漂わせている。

 しばらくの間、カイジはアカギの上で息を整えていたが、やがてアカギを振り返ると、うっそりと笑った。
 ゆっくりと腰を上げると、白濁にまみれた竿がぬる〜っと姿を現し、亀頭が充血した窄まりに引っかかってから、弾むようにちゅぽんっと抜ける。
 栓を失ったカイジの後孔からは、二度中出しされた精液がぼたぼたと落ち、白い糸がくちゅりと音をたててアカギの鈴口とカイジの後孔を繋ぐ。
「は、は……すげ……」
 その光景に唾を飲み、嬌然と笑うカイジは、普段とはまるで別人のようだ。
「……すこしは痛み、紛れたか?」
 カイジはアカギを振り返り、茶化すように尋ねたが、アカギはそれに答えずに、左手を伸ばしてカイジの尻を撫でまわす。

「今すぐあんたを羽交い締めにして、後ろから滅茶苦茶に突いてやりたい……」
 欲望に淀んだ息遣い。
 本能を剥き出しにした雄そのものの表情に、カイジの背がゾクリと粟立つ。

 アカギはカイジの濡れた尻穴に、指を二本突き挿れる。
 長い指の付け根まであっさりと飲み込んで、物足りなさそうにヒクついている雌穴をくちゅくちゅと掻き混ぜてから、指を開く。
 ドロリと太腿を伝い落ちる白濁。そこに注がれる粗野な眼差しを感じながら、カイジは片頬をつり上げた。
「せいぜい、早く治すこったな。それまでは、オレの好きにさせてもらうぜ」
 優越感に満ちた顔で煽ると、アカギは苦々しげに舌打ちをする。
 主導権を握られるのが、面白くないのだろう。

 いい気味だ。
 カイジは気分良く喉を鳴らす。
 これに懲りて、すこしはおとなしくなるがいい。

 オレのすべてはお前のものだけど、同時に、お前もちょっとはオレのものなんだよ。そのこと、ようく思い知れ。
 赤の他人なんかに、易々と傷つけさせんじゃねぇよ。

 欲望と嫉妬の炎がちらつく黒い目を細め、カイジは今抜いたばかりのアカギのモノを手で支えながら、ふたたび体の中に沈めていくのだった。




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