会話がしたい(※18禁)・4


 水を打ったように静まり返った室内。
 乱れたベッドの上、もう動けないほど疲弊したカイジは、アカギに腕枕されながら、静かに涙を流していた。

(うぅっ……くそっ……結局こうなるのかよっ……!!)

『会話がしたい』という、ごく当たり前の願望を口にしただけなのに、気がつけばアカギにヤられっぱなしで、あられもない痴態を晒しまくってしまった。
 おまけに……、とんでもない台詞の数々を、自分から口にしてしまった気もするし。
 思い出したくなくて、カイジはぎゅうっと目を瞑る。
 ちぎれた涙が熱く頬を伝うと、アカギの唇がそれを掬いとった。

「悪かったよ。機嫌、直して」
 これっぽっちも悪く思っていなさそうな声に、カイジは赤くなった目を開く。
 恨めしげに自分を睨みつける半眼などまったく気にも留めていないように、アカギはカイジの長い髪を撫で、次から次へと溢れる涙を唇で拭っていった。
 その様子にカイジは怒りを覚えたけれど、同時に、こんな奴に怒るだけ無駄なんじゃないかとも思い、グッタリと深くため息をついた。

 肺の中の空気を吐ききってしまうと、カイジはぐすんと鼻をすすり、キッとアカギの顔を見据える。
「……お前も、オレの質問に答えろよ……」
 憤懣遣る方ないが、とりあえずはそれで勘弁してやる、とでも言いたげなカイジの表情に、アカギはクスリと笑って「いいぜ」と答えた。

 カイジはすこし考えるような間をおいたあと、ぼそりと呟く。
「……名前」
「赤木しげる」
「……歳は」
「十九。あんたより歳下」
 ぶっきらぼうな質問にも、丁寧に答えるアカギ。
「……好きなもの」
「博奕。……あと、あんたの作るカレー」
 衒いのないアカギの答えに、カイジはちょっと固まって、それから、赤い顔でなにやらモゴモゴと口籠ったあと、ひとりごとのように呟いた。

「……お、オレのこと、は?」

 おずおずと投げかけられた問いに、アカギは目を閉じ、やわらかく笑う。
 そして、わかりきった返事の代わりに傷のある頬をやさしく撫で、恋人の唇を塞いだ。






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