真夜中・2(18禁)



 ベッドの上に乱暴に押し倒し、アカギはカイジの上にのしかかる。
 さっきまで心地よく体を満たしていた眠気は、カイジと交わり、絶頂を味わったことによってすっかり去り、今は獰猛な欲望がアカギの中で燃え盛っていた。

 性急な行動に身を竦ませるカイジのスウェットを、アカギは大きくたくし上げる。
 意外に引き締まった腹の上、平らな胸の先端にある小さな粒は、寒さのためか硬く勃起していた。

 軽く指で弾くと、カイジはぎゅっと目を瞑ってしまう。
 左側の乳首を摘み、痛まない程度にクリクリと刺激してやりながら、アカギはカイジの胸に顔を伏せる。

 右の乳首を口に含むと、なんともいえない弾力が舌に伝わる。
 幼い子どもが飴玉を舐るように舌を動かし、乳暈を吸い上げていると、やがてアカギの腰に硬いものが当たった。
 完全に勃ち上がった自身を、慌てて覆い隠そうとするカイジの手を退け、アカギは中途半端に太腿のあたりでわだかまっていたカイジのスウェットを、下履きごとずるりと脱がせてしまう。
「アカギ……、んっ……」
 ふたたびカイジに覆い被さり、舌と唇で乳首をたっぷり可愛がりつつ、両足を大きく抱え上げた。
「もっかい、挿れていい……?」
 先走りに濡れた先端をちゅくちゅくと擦りつけながら、密やかな声でアカギは問いかける。

 あれだけ中出ししておいて、今さら過ぎる問いではあったが、それでも、アカギはカイジが頷くところが見たいのだ。
 今から自分にぐちゃぐちゃに抱かれるということを、カイジに合意させたい。
 雄の支配欲を満たすためだけの、言わばこれは、アカギのワガママであった。

 その意図に勘付いているカイジは、むくれたように唇を尖らせてアカギを睨みつけていたが、軽く舌打ちをして、忌々しげにこくりと頷いた。
 アカギは満足そうに笑い、カイジの頬に鼻先を擦り寄せる。

 こういうとき、自分はふたつ年上のこの人に甘やかされているのだと、アカギは実感する。
 それは存外、悪い気分ではない。

「あっ……入っ……んっ、んぅっ……」
 ズッズッと挿入すると、カイジは瞳を潤ませてシーツを掴む。
 ゆするように腰を動かしながら、アカギはカイジの乱れた髪を掻き上げ、顔中にキスを落とす。
 擽ったそうに笑うカイジに、アカギもまた、低く喉を鳴らす。

 笑い声を重ねながら、ねっとりと濃厚に交わる、恋人同士の甘いセックス。
 昨夜から幾度も交わっているにも関わらず、カイジの中はまるで男を知らないかのように、キツくアカギを咥えこんで離そうとしない。
 ぐちょぐちょに濡れた孔をアカギが激しく穿つと、カイジは恍惚として濡れた声を上げる。

 肌が粟立つほどの快感に、アカギは唇を噛む。
 この体も、声もーー男のすべてが自分のものだと、声に出して言ってやりたい衝動に駆られる。
 喰らいついて噛みちぎって咀嚼して、骨も残さず自分の中に取り込んでやりたい。
 自分の一部にしてやりたい。

 獣のように目をギラつかせ、アカギは舌なめずりする。
 相手の体を貫いた杭で奥を穿つと、組み敷いた獲物は背筋をきれいなアーチ状に反らした。
 アカギは相手の喉笛を噛みちぎる代わりに、晒された白い喉に歯をたてる。
「カイジ、さん、出る……っ」
 弾んだ息に乗せてきれぎれに訴えると、カイジは身も世もなく乱れながらも、宙に浮いた両足をアカギの腰に巻きつけ、己の側にグッと引き寄せた。

 まるでなにもかも承知の上で、すべてを包み込み、許すかのような仕草。
『慈愛』という言葉を想起させられるようなその行動に、アカギは背筋が痺れるような感覚を覚え、歯を食い縛って精を吐き出した。
「……ッ……!」
 今まで感じたことのないほどの、激しい絶頂感。意識が白く飛ぶような、強烈なエクスタシーの快感に、アカギは腰をぶるりと震わせる。

 びゅる、びゅるるっと二度目の精を勢いよく注がれ、カイジは失神しそうなほど感じて喉を引きつらせている。
「ひぁ、んぅっ……なか、あつい……ッイく、オレも出るぅっ! あっ、んぁぁっ……!!」
 切羽詰まった声で叫ぶと、カイジはアカギの腰に絡めた足に強く力を込め、己の腹にうすい精液を撒き散らした。

 カイジがイくと腸壁が収縮し、射精の最中にある自身を揉みしだかれてアカギは低く呻く。
 女の膣のように濡れた尻孔をずぷずぷと突きながら、アカギはカイジの頬をそっと撫で、荒い吐息を重ねながら口づけた。
 すぐさま舌が絡んできて、くちゅくちゅと水音をたてながら互いの口内を舐め回す。
 さっきまで感じていた飢餓感が嘘のように満たされていくのを感じて、アカギはカイジの体をぎゅっと抱きしめてため息をついた。

 隙間なく重なりあった体が熱い。微睡みを誘うようなあたたかさにアカギが目を細めていると、口付けの合間を縫って、カイジが、ふふ、と笑いを漏らした。
「……いっぱいだ……お前ので、腹いっぱい……」
 そう言って、涙と鼻水と涎でぐちゃぐちゃの顔でへらりと笑うカイジは、あまりの快楽に知性まで溶かされてしまったようだ。

 アカギはちょっと眉をあげ、それからフッと息を漏らして笑う。
 アカギが笑うと、未だ挿入されたままの中に響くらしく、カイジは赤面してちょっと身じろいだが、珍しく愉快そうなアカギの笑顔に、不思議そうな顔をする。
 大きな瞳で覗き込まれ、アカギはカイジの唇を啄ばむようにキスをした。

 喰ってやりたい、なんて思っていたのに、気がついたら自分の方が喰らわれていた。
 包み込むようにすべてを受け入れられ、凶暴な欲望も獣性も、すべてをドロドロに咀嚼され、飲み込まれてしまった。

 なんだか、毒気まですっかり抜かれてしまったようで、アカギは体の力を抜いた。
 ーーまったく。負けるよ、あんたには。
 心の中だけでそう呟いて、カイジの額に自分の額をこつんとくっつける。

「なぁ……カイジさん。今夜はこのまま……繋がったままでいようか……?」
 冗談とも本気ともつかない口振りに、カイジの目が点になる。
 だが、腹の中でなにかがピクリと動く感覚に、ギョッとして至近距離にあるアカギの目を凝視した。
「お前……殺す気か……」
「やさしくするよ」
 ーー今夜だけはね。
 声には出さずにそう付け加えて、アカギはカイジの反応を見守る。

 カイジはちょっとびっくりしたような顔をしたあと、アカギの顔を胡乱げにジロジロと眺め回し、やがて、はぁ、と諦めたようにため息をついた。
「お前ってマジ、ケダモノだよなぁ」
 そんなことをぶつくさ言いながらも、カイジはアカギの首に手を回す。
『まて』『おあずけ』などいっさいできない野生の獣に手を差し伸べるみたいに、自分を受け入れようとするカイジに、アカギはケダモノなりのとびきりやさしいキスをひとつ、した。






 

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