学校で(※18禁)・4


 音楽室は三階にあるようで、階段を上りきる前から、カイジの耳にもピアノの音が聞こえていた。
 三階に着くと、しげるは廊下をまっすぐに歩いていく。
 左に曲がると三年生の教室があるようだが、まっすぐ進むと家庭科室や理科室、図書室などが並ぶ特別教室棟になっているらしい。

 と言っても、今すべての部屋で授業が行われているわけではないらしく、遠くピアノの音が聞こえる以外は、生徒の声も教師の声もせず、廊下は薄暗くがらんとしていた。
 それでも、バレたら社会的に抹殺される身であるカイジの気は、すこしも休まることがない。

 息を潜め、執拗に辺りを気にしながら、泥棒はだしの抜き足差し足で進んでいたカイジだったが、突然、前を行くしげるが立ち止まったので、ビクッとして急ブレーキをかけた。
「っ、おい! 急にどうしーー」
 文句を言おうとしたカイジの声は、しかし途中から言葉にならなかった。
 ものすごい速さで伸びてきたしげるの手に腕を掴まれ、すぐそばにあった空き教室の扉の中へと、あっという間に引き摺り込まれたからだ。
 
 あまりの早業にカイジは一瞬、自分の身になにが起こったか理解できず、気がつけば分厚いカーテンを閉め切った、薄暗い教室の中に連れ込まれていた。

 六人掛けの四角いテーブルが並ぶこの教室は、どうやら美術室らしい。
 描きかけの絵や石膏像が棚に並び、油絵の具の匂いが鼻につく。

 脳の情報処理速度が追いつかず、呆然と瞬きを繰り返すカイジの腕を掴んだまま、しげるはゆっくりと振り返る。
 その顔が相変わらずのポーカーフェイスで、カイジはますます混乱しかけたが、やがてしげるの奇矯な行動の意味に思い至り、「あっ!」と声を上げた。
「あっ、ーーありがとなっ……! しげるっ……!!」
 しげるが軽く目を見開いたのにも気がつかぬまま、カイジは矢継ぎ早に続ける。
「廊下に誰かいたんだろっ……!? 見つかりそうになったから、ここに逃げ込んだんだよなっ……!?」
 しげるが自分を助けてくれたのだと思い込み、興奮気味に感謝の気持ちを伝えるカイジ。
 恋人の突拍子もない行動になんの疑いも抱かず、安堵にうっすら涙ぐんでさえいるその様子に、しばらくののち、しげるは肩を揺らして笑った。

「クク……こっちがああだこうだ言い包める前に、勝手にそう思い込んでくれるなんざーー」

 いきなり笑い始めたしげるの様子に不穏なものを感じ、さすがのカイジもハッとした。
 が。

「あんた、チョロすぎ……そんなだから、オレみたいなのにつけ込まれるんだぜ」

 嘲るようなその台詞とともに掴んだ腕ごとテーブルに押さえつけられ、身構える暇もなくカイジはしげるにのし掛かられた。

「……ッ!!」
 テーブルに背中を強く打ちつけられ、衝撃に顔を歪めるカイジ。
 だが、自分を見下ろすしげるの悪辣な笑みを見て、すぐさま吠えかかった。
「テメェっ……! どういうつもりだよっ……!!」
「どういう、って」
 目を剥いて激昂するカイジに、しげるはクスクス笑いながら囁く。
「そんな野暮なこと聞かないでよ。薄々、勘付いてるくせに」
「!! ん、ぐっ……!!」
 顎を固定されていきなり唇を塞がれ、カイジは零れんばかりに目を見開く。
 押さえつけられた体で力いっぱいもがくが、抵抗すればするほどしげるの拘束はキツくなっていくようで、どんどん自由が奪われていく。
 唯一思い通りになるのは口だけで、侵入してきたしげるの舌に噛み付いてやろうとするが、猫のように薄くちいさな舌は、カイジの口内をひらりひらりと器用に逃げ回る。
 最初は躍起になって追い回していたカイジも、口腔内を艶めかしく這うしげるの舌に図らずも官能を刺激され、すこしずつ骨抜きにされていく。

 敏感な上顎を舐め上げられると、くすぐったさと紙一重の性感に力が抜ける。
 そこを責めるのが効果的だと悟ったしげるに、執拗にそこを舐め回され、ようやく解放される頃には、カイジの体は持ち主の意思に反し、くったりと力が抜けてしまっていた。
「……カイジさん……」
 くちゅ……と音をたててしげるが唇を離すと、カイジは潤んだ目でしげるを睨む。
「お前……、全部嘘、だったのかよ……っ」
 震える声で精一杯怒りを露わにするカイジだったが、当然そんなものしげるに効果があるはずもなく。
「ッ、あーー! んッ、アホ、やめろ……って……!」
 敏感な首筋に舌を這わされ、カイジはテーブルの上で大きく身をよじる。

 軽く歯を立てられると、まるで神経に直接噛みつかれているみたいで、体が昂ぶるのを止められない。
 目敏いしげるには当然、そんなカイジの変化はお見通しのようで、首筋に吸いついては性悪に喉を鳴らした。
「やめないよ……だってカイジさんの体、こんなに嬉しそうにしてるじゃない」
 言いながら着ていたシャツを首許までたくし上げられ、背中に直接触れた冷たい机の感触にカイジはビクリと体を跳ねさせる。
 抗議の声を上げようとしたが、しげるの指に両胸の尖りを押し潰され、予期せぬ刺激に妙な声を漏らしてしまった。
「……っ、ぁ……!」
 ハッとして唇を噛みしめるも、静かな部屋の中でのこと、しげるにはバッチリ聞かれてしまっていたようで、
「かわいい声。もっと聞かせて……?」
 そんな台詞とともに右の乳暈を口に含まれ、カイジはギュッと目を瞑って自らの口を両手で塞いだ。

 ぬるりとやわらかく、あたたかい舌が、飴玉を舐るように乳首を転がし、乳輪をなぞる。
 一方で、左の胸は乳首を指でつまんで引っ張ったり、強めに爪を立てたりと、痛いくらいの強い刺激を与えられ、左右それぞれ違う愛撫にカイジは悩ましく身悶えた。

 扉は閉まっているとは言え、いつ誰が来るかわからないし、部屋の前の廊下だって、誰が通るかわからない。
 こんな状況でのセックスなど到底正気の沙汰とは思えず、生きた心地のしないカイジだったが、体はそれすらも勝手に興奮材料にして、ヒートアップしていく。



[*前へ][次へ#]
[戻る]