温泉へ行こう(※18禁)・7




 大浴場でのセックスにグッタリしてしまったカイジは、半ばアカギに抱きかかられるようにして浴室を出た。
 浴衣を着せられ、アカギに肩を貸してもらいながら部屋に戻ると、畳の間に、すでに二組の布団が敷かれていた。

 倒れ込むように布団の上にダイブして、カイジは長いため息をつく。
「お疲れさま」
 すぐ傍から労いの声がかかり、誰のせいでこうなったと思ってんだよ、と目をつり上げるカイジだったが、目の前にミネラルウォーターのペットボトルをスッと差し出され、目線をあげてアカギを見た。
「水分、とっておいたほうがいいよ」
 カイジは無言でペットボトルを受け取る。

 確かに、喉がカラカラだ。酔いの抜けきらない体は、干枯らびてしまいそうなほど、水分を消耗している。
 寝転んだまま蓋を開け、零さぬようにちびちびと喉奥に流し込む。
 冷たい水は信じられないほど旨く、カイジの体に浸透していく。


 アカギは部屋の照明をすこし暗くして、隣に敷かれた布団に寝転び、肘枕をついてカイジの様子を窺い見る。
 コイツ、こういうとこ気がきくんだよなぁ……
 喉を潤しながら、カイジは思う。
 
 散々な目に遭わされて、文句のひとつも言ってやりたい気分だったのに、差し出された水があまりにも美味しくて、なにも言えなくなってしまった。
 コイツのことだ。これも、計算のうちなのかもしれねぇけど……
 カイジはそう思ったが、明度の落ちた部屋の中、水を飲む自分を見つめるアカギの表情が、まるで慈しむかのようにとても穏やかだったから、すぐにその考えを打ち消さざるを得なかった。

「……うまい」
 水を飲む合間に、ぽつりとカイジが呟くと、アカギは目を細める。
 ありがとう、と、言うべきなんだろう。
 でも……、アカギが自分を見る眼差しがあまりにもやわらかくて、カイジはもごもごと口籠ってしまう。

 そういえば……、この宿に連れてきてもらった礼も、まだ言ってない。

 今日一日、温泉と美味な料理や酒を、思う存分味わわせてもらった。
 普段から怠惰な生活を送っているカイジだが、それでも、この旅行では日常生活から解放され、思う存分、羽を伸ばすことができた。
 それに……、ずっとアカギと一緒にいられたことが、なによりも嬉しくて、この旅行に誘ってくれたことを、カイジは本当に感謝しているのだ。

 言わなきゃ……と、カイジは思って、中身が残り少なくなったペットボトルを枕元に置く。
「あ、のさ……、アカギ……」
 意を決して口を開いたカイジだったが、やさしく続きを促すようなアカギの表情に、やはりなんだか恥ずかしくなって、言葉を詰まらせてしまう。

「カイジさん……?」
 静かな声で名前を呼ばれ、カイジの額に汗が滲む。
 ありがとう、と、たった一言。それだけが喉でつかえて、どうしても出てこない。
 でも、なんとかして伝えなきゃ……と、回らない頭で必死に考えて、ふと思いついたある方法に、カイジは喉を上下させた。

 こんなこと、いつもならぜったいにしねぇけど……

 カイジは無言でゆっくりと体を起こし、寝転んだままのアカギを見下ろす。
 窺うような目で見つめられ、いたたまれない気持ちになりながらも、腹を決めてアカギの足下に移動した。
「……」
 痛いくらいの沈黙の中、カイジは震える手でアカギの浴衣の裾を割り、そこをはだけさせる。
 下着をつけていないので、白い足の間、まだやわらかいアカギの陰茎がすぐに顔をのぞかせた。

 カイジは浅く息をつくと、ゆっくりと身を屈め、アカギのソコに顔を寄せる。
 ちゅ、と音をたてて先端に口づけると、アカギが体を起こす気配がした。
「……カイジさん」
 さっき名前を呼ばれたときとはハッキリと違う、湿り気を帯びた声。
 痛いほどに注がれる視線を感じながら、逃げ出したくなるのを耐え、カイジはアカギの亀頭を口に含んだ。

 言葉で感謝を伝えられないから、せめて、気持ちよくなってもらいたい……
 自分からは滅多にしないことをすることで、それだけアカギに感謝しているのだと、この旅行が愉しかったのだと、伝わればいいと思って、カイジはこの大胆な行為に及んだのだ。
 過ぎた深酒がまだ抜けきっておらず、判断力が低下していることも、カイジをこの行動に走らせたひとつの要因だった。

「ん……っ、ん……」
 口の中にたっぷりと唾液を溜めて、カイジは慣れないフェラチオで、懸命にアカギに奉仕していた。
 唇で扱くように頭を上下させながら、空いた手で竿を握って、根本から擦るのも忘れない。
 アカギが気持ちよくなれるように、頬が窪むほど強く吸い上げ、雁首にぬるぬると舌を絡ませる。
 顎が疲れたら、アカギのモノを口から抜き、舌で括れや裏筋をなぞったり、手で大きく扱いたりする。
 伸ばされたアカギの手が、労うように頭を撫で、髪を梳くのを心地よく思いながら、カイジは夢中でアカギのモノを頬張っていた。

 やがて、アカギの陰茎は硬くそそり勃ち、天を仰ぐようになった。
 口内に納めるのも大変になってきたが、カイジは精一杯大きく口を開き、喉奥までアカギ自身を迎え入れる。
 涙目になって噎せながら、カイジが口淫を続けようとしていると、頭上から熱っぽいため息が聞こえてきた。
「もう、いいよ……カイジさん……」
 微かに上擦った声で言われ、カイジは怒張を深く咥えたまま、上目遣いでアカギを見る。
 薄暗がりの中、鋭い瞳がうっすらと快感に潤んでいる。
 熱に浮かされたような表情に、後ろがキュンッと疼くのを感じて、カイジはちゅぽん……、とアカギのモノを口から引き抜いた。




「……お前は、寝てろ……」
 アカギの肩を押して布団に寝かせ、カイジはその体の上に跨る。
 はぁはぁと息を弾ませながら、自身の浴衣の帯をもどかしげに緩め、下肢だけを露わにさせて、アカギの上に腰を落とす。
「あ……ッ、はあぁ……っ」
 張り詰めた男根を窄まりに合わせ、辛そうに身を震わせながらゆっくりと受け入れていくカイジの姿を、アカギはじっと見上げていた。

 大きな尻がぺたんとアカギの腿にくっつくと、カイジは深くため息をつき、ふるりとその身を戦慄かせた。
 大浴場で二度、中出しされたカイジの後孔は、アカギの精液の残滓でぐちょぐちょに熱く濡れていた。
 
 アカギがゆるゆると太腿を撫でてやると、カイジはアカギの腹に手をつき、腰を浮かせる。
「あっ、あっ、んっ……アカ、ギ……、」
 自分の上で跳ねるように腰を振るカイジを、アカギはじっくりと視姦する。

 普段の姿からは想像もつかないような、カイジの痴態。
 フェラチオや騎乗位は疲れると、いつも文句を言っている恋人とは、まるで別人のようだった。
 犬のように浅い呼吸を繰り返しながら、頬を染め、しどけなく乱れるカイジの姿に、アカギの腰がずくんと疼く。
「カイジさん……、胸も見たい……」
 吐息混じりにアカギが囁くと、カイジは恨めしげな顔をしながら、震える手で浴衣の前をはだけ、肩から滑り落とした。

 酔いのせいか羞恥のせいか、じんわりと赤く染まった肌。
 胸の突起は触れられてもいないのにツンと尖り、その存在を主張している。
 帯を解いていないので、浴衣はただの布切れのように、カイジの腰のあたりに蟠ったままだ。
 曝け出されたカイジのモノは、反り返って先走りに濡れ、カイジの凄まじい感じようを物語っていた。

 その姿のまま、長い髪を乱れさせながら激しく腰を振りたくる恋人の卑猥さに、アカギの陰茎は爆発寸前まで硬くそそり勃つ。
 前に手を伸ばし、濡れそぼった勃起に触れると、カイジは身を捩って甘い声をあげた。
「あっ! や、アぁっ……あか、ぎ……っ、ソコ、さわられ、たらぁっ……! す、すぐ、イっちまうっ……!」
 いやいやをするように首を振るカイジに構わず、アカギが数度、軽く扱くと、背をきれいな弓形に反らしてカイジは埒をあけた。
「ふぁあっ……んぁっ……、ぁっ……」
 ビュルルッと勢いよく迸った精液は、アカギの浴衣の腹や胸を汚す。
 濃い眉を下げ、半開きの口から涎を垂らし、だらしないイキ顔を晒すカイジに、アカギはひどく凶暴な顔つきになった。
 イっている最中の、激しくうねる中を突き上げると、カイジは衝撃に大きく目を見開いた。
「んあぁっ……! あっ、や……あぁ、んっ……!」
「出すよ、カイジさん……っ」
 アカギがそう宣言すると、カイジはこくこくと頷く。
 今日これまで、すでに何度も中出しされているくせに、カイジの中は早く子種が欲しいと催促するように、アカギの陰茎を吸い上げてくる。
 その貪婪さに歯を食いしばり、アカギは強く腰を突き上げ、カイジの腰を押さえつけてたっぷりと中出しした。
「ぁ、んぅ……、っ、熱ぃ……っ」
 喘ぎながらアカギの精を受け入れるカイジの目から、涙が幾筋も零れ落ちる。

 ゆるゆるとカイジの中を突き上げて長い射精を終えると、アカギはようやく動きを止めた。
 しんとした部屋に獣のような呼吸音だけを響かせ、ふたりは絶頂の余韻に浸っていたが、やがて、カイジがもぞりと身じろいだ。
「は……ぁ、ふ、ふふっ……」
 擽ったそうに笑いだしたカイジに、「なに笑ってるの」とアカギが問いかけると、カイジはとろんと目をとろけさせたまま、自分の下腹部を撫でた。
「お前の、すげぇ気持ちよさそうに、腹ん中でピクピクしてる……」
 おそらく、まともな思考力など、雲散霧消してしまったのだろう。
 なんの躊躇もなく淫猥な言葉を口にして、子どものように無邪気に笑うカイジの姿が、ようやく回復しつつあったアカギの理性を、呆気なく破壊した。

「ぅあぁっ……!? あっ、あかぎ……っ? ぁ、あ、くぅっ……!!」
 黙ったまま、ぬるぬるした精液に満たされた肉壺を容赦なく突き上げると、不意打ちのように襲いくる快楽に、カイジは大きく仰け反る。
 ぐちゅっ……ぬちゅっ……
 アカギのモノが出入りするたび、カイジの中を満たす大量の雄汁が空気を含んで泡立ち、結合部からぶちゅぶちゅと溢れ出る。
「っ、は……やらし……、すぐイっちまいそうだ……」
 額にうっすら汗を滲ませ、余裕のない声でアカギが囁くと、カイジは崩れるように上体を倒し、アカギの体に抱きついた。
「あっ、んっ……、な、中に出して、ぃ……いいから……あっ、アカギ……っ!」
 ちいさな声で、でもはっきりとそう呟き、赤くなった顔を見られまいとするように、カイジはアカギの唇にむしゃぶりつく。
 限度を超えたカイジのいやらしさに、アカギは思考が止まり、カイジの尻を鷲掴みにして、本能のまま滅茶苦茶に雄膣を突きまくる。
「んーーっ!! ふあぁっ……!! あっぁ、激しッ、アカギぃっ……!」
「ッ……!」
 最奥まで届くように腰を強く突き上げ、アカギはカイジの中で射精する。
 もう何度も射精しているというのに、アカギの肉棒は自分でも驚くほどの大量の精液を吐き出す。
 一方のカイジも、いつの間にかまたイっていたようだが、ひくひくと震える鈴口からは、なにも放出されていなかった。
 どうやら、ドライオーガズムに達していたらしい。

「はぁ、はぁ、ん、んっ……ぁ、」
 惚けた表情で放心するカイジの唇にアカギが吸いつき、ふたりは繋がったまま濃厚なキスを交わす。
 ぴちゃぴちゃと音をたてて舌を絡ませあっていると、また気分が高まってきて、どちらからともなく、体を擦り合わせ始める。
「……カイジさん……」
 熱を孕んだ声で囁いて、アカギはカイジの体を抱きしめたまま、体を反転させる。
 正常位の体勢でアカギに組み敷かれたカイジは、すぐさまぬちゅぬちゅと突かれる刺激に息を荒げながら、恍惚の表情でアカギを見上げた。
「あっ、あっ、んっ……、きもちぃ……、すき、アカギ、すきだ……っ」
 今までほとんど聞いたことのなかった、カイジからの気持ちの吐露。
 この人はどこまで自分を焚きつけるつもりなのかと、より乱暴に腰を打ちつけながら、アカギはカイジの唇を塞ぐ。

 誰にも邪魔されることのない旅館の一室で、ふたりは心ゆくまで、恋人同士の濃密なセックスに耽ったのであった。



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