温泉へ行こう(※18禁)・5



「はぁ〜〜……呑んだ食った……」
 満足げな息を吐きながら、カイジはコイン式のロッカーに百円玉を入れる。
 ふわふわと怪しい手つきで鍵を回すカイジを、アカギは隣で見つめていた。

 正直、かなりの深酒をしていたカイジには、大浴場での入浴など到底無理かとアカギは思ったのだが、予想に反し、カイジは意外なほどしっかりとした足取りで、アカギと肩を並べて大浴場に向かったのであった。


 カイジの隣のロッカーを開け、浴衣の帯を解きながら、アカギの目線は相変わらずカイジに固定されている。
 酔いのせいで手許が怪しいカイジは、帯を解くのにさえもたもたと手こずっていたが、ようやく解き終えて浴衣の肩をはだける。

 その体は、薄紅色に染まっていた。
 湯上がりのときの火照った肌とはまた違う、酔いによって鮮やかに彩られた肌を惜しげもなく晒し、カイジはぼうっとした顔で、半開きの口からふうと息を漏らす。

 熱っぽいその表情と、熟れたような生肌を、喰い入るように見つめる隣からの視線に気づかぬまま、カイジは脱いだ浴衣を丸めてロッカーに突っ込み、「先に入ってるぞ」とアカギに声をかけて、大浴場の入り口へと歩いていったのだった。


 もともとの宿泊客もそう多くないせいか、幸運なことに、大浴場はカイジとアカギの貸切状態だった。
 広い内風呂には、大小六つの変わり湯がある。
 どの湯も個性に富んでいて、温度も香りも、湯のやわらかさもまるで違うが、肌に染み入るような心地よさだけは共通していた。

 ここでも貧乏性を発揮したカイジは、片っ端から湯に浸かり、温泉を満喫した。
 サウナや水風呂まで堪能して、さすがにちょっとクラクラしながらも、やはり締めは露天風呂だろうと、覚束ない足取りで外へ続く扉へと向かった。



 露天風呂へ続くガラス戸をガラリと開けると、立ち込める湯気の向こう、大きな檜の浴槽が姿を現した。
 既にアカギが湯舟に浸かっていて、冷たい外気に追い立てられるように、カイジもいそいそと湯に体を沈める。
 
「はぁ〜〜っ……」
 アカギからすこし離れた場所で、カイジは全身を弛緩させる。

 この露天風呂は、他の内風呂よりも低めの温度に設定されているようだ。
 のぼせかけているカイジにとっては、ちょうど心地のよい温度で、長く浸かっていられそうだ。
 雪は一時的に止んでいる。星のない、真っ黒な冬の夜空が頭上に広がっている。
 湯口から湯の迸る音を聞きながら、カイジは静かに目を閉じる。

 体も心も、ひどくリラックスしていた。
 頭を空っぽにして、ただひたすら湯に浸かるということが、どうしてこんなに心地良いのだろう。
 ずっとここで、こうしていたい……

「カイジさん」
 ふいに、すぐ傍から声をかけられて、カイジは驚いて目を開けた。
 いつの間にか、音もなくアカギがすぐ隣に来ていて、カイジは身構える。
 案の定、湯の中で白い手が不穏な箇所へ伸ばされようとしているのを見咎めて、カイジはすぐに立ち上がり、そそくさと内風呂へと引き返していった。


(まったく……油断も隙もありゃしねぇっ……!!)
 憤慨しながら、カイジは洗い場に立って体を洗う。
 さっきあれほどしたというのに、飽かずにまだ体を触ろうとしてくるアカギに呆れつつ、カイジは泡立てたボディソープで全身を包む。
 掌で首や腕を擦り洗いしていると、ガラリと露天風呂の扉が開く音がして、足音がひたひたとカイジの方に近づいてきた。
「……」
 傍に立って自分を見つめてくる気配を無視し、カイジは黙々と体を洗う。
 すると、アカギは諦めたように、カイジから離れていった。

 ホッとして、カイジが泡を流そうと、シャワーのコックに手をかけた、そのとき。
「……ッ!!」
 後ろからガバリと抱きつかれ、カイジは息をのんだ。
「なっ、なに、してんだよ……っ」
 ここは、部屋付き露天風呂ではない。今は貸切状態とはいえ、いつ誰が入ってくるかもわからない大浴場だ。
 そんな場所で抱き竦められ、カイジはパニックになりそうになる。

 逃れようともがくカイジの体は、いとも簡単にアカギの腕によって押さえつけられた。
「洗ってやるよ……」
 耳許で低く囁かれ、カイジは表情を凍りつかせた。
「へ……変態っ……!!」
 ジタバタと暴れるカイジの体に、アカギの体が密着してくる。
 するりと前へ伸びてきた手で乳首を摘まれ、カイジは思わず声を漏らした。
「ぁっ……あ、や……っ」
 艶のある甘やかな声が静かな浴場に響き渡り、カイジは慌てて唇を噛む。
 その声に気を良くしたように、アカギの手は卑猥な動きをエスカレートさせていき、泡だらけのカイジの体を、ぬるぬると愛撫した。
「ぁ、んっ……! そこ、さわるなって……、アカギ、んぁっ……!!」
 足の間の肉棒に触れられ、カイジは背を引きつらせる。
 泡にまみれた掌で包み込まれ、にゅるにゅると扱かれて、快感にカイジの目が潤んでくる。
「んっ、はぁっ、あっ……」
「……カイジさん、」
 アカギは一旦カイジの体を離すと、今度は真正面から抱きしめ、唇を塞いだ。
「ぁんっ、ん、んぅ……」
 くちゅくちゅと舌を絡めながら、泡だらけの体を擦り合わせる。
 密着した腰に当たるアカギの陰茎は、すでに痛いほど勃起していて、それを肌で感じたカイジもまた、自身を硬くさせていた。

「んっ、んっ……」
 こんな場所で、こんなやらしいこと……
 誰かに見られたら、と思うと怖くてたまらないのに、体はどんどん熱くなってきて、カイジはもう訳がわからないまま、気がついたらアカギの体に縋り、貪るように自ら舌を差し出していた。



 たっぷりと互いの体を擦り付けあったあと、アカギはカイジから唇を離す。
「挿れたい……」
 幾度も陰茎を受け入れ、すでに慣らす必要もないほど緩んでいる尻の割れ目を撫でながら、アカギは囁く。
 カイジはビクリとして、困ったように眉を下げた。
「で、も……、こんなとこで……っ」
 そう言いながら、カイジはもはや、肉体的な抵抗を見せなかった。
 逃げ出そうとするとか、暴れるとか、そんな素振りはいっさい見せず、ただひたすら困惑している。

 拒否されているわけではないことを感じ取ったアカギは、カイジの尻にゆっくりと指を出し挿れしながら、空いた手でシャワーのコックを捻る。
 ふたりの頭上からあたたかい湯が降り注ぎ、きれいさっぱり泡が洗い流されると、アカギはカイジの手首を掴み、有無を言わさず引きずるようにして、一番大きな内風呂へと向かった。



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