温泉へ行こう(※18禁)・4
その後、部屋でテレビを見ながらうとうとしたり、他愛もない話をしたりしてまったり過ごすうちに、外は日が落ち、夕食の時間となった。
アカギとカイジは連れ立って、館内のレストランに向かう。
広く小綺麗なレストランには、数えるほどしか客がいなかった。
黒い海を臨む窓際の席にかけると、すぐさまウエイターがやってくる。
いらっしゃいませ、とにこやかに言う男に、アカギは二枚のチケットを手渡した。
どうやら、入館したときにあらかじめ、夕食のチケットを渡されていたらしい。
少々お待ち下さいませ、と言ってウエイターが下がると、カイジは大きくため息をつく。
「腹減った……」
「たくさん、運動したからね」
しれっとそんなことを言うアカギを、カイジはじろりと睨みつける。
「お前、ほんと、すこしは自重しろよな……」
「あんたはもっと、体力つけたほうがいいよ」
恨めしげな目線を涼しい顔で受け流し、頬杖をついてアカギは真正面からカイジの顔を見た。
「あんたとふたりっきりで、自重するなんて無理。だから、諦めて」
淡々とした口調でそんなことを言われ、カイジはすこし面喰らった顔をしたあと、「……ばっかじゃねえの」と呟いて、窓の方へ顔を背ける。
くそ、この色魔が、妙なこと言いやがって……
調子が狂うだろうがっ……
頬が熱くなっていくのを感じながら、カイジは心中でアカギを罵倒することで、平静を装っていた。
だが、そんなカイジのぶすくれた態度も、料理が運ばれてくるとあっさりと溶け崩れた。
「うまっ……!! なんだこの刺身っ……!?」
「金目鯛だって。今が旬の魚だね」
「こっちの肉もうめぇぞっ……!」
「この辺りのブランド牛だって書いてあるぜ」
料理をひとくち頬張るごとに目を輝かせ、カイジが歓声をあげるたび、お品書きの内容を説明してやるアカギ。
海のそばにあるこの宿は、新鮮な魚はもちろん、肉や野菜も直営農家から仕入れているらしい。
それら最高の食材が、一流の料理人の手によって調理されているのだ。
当然、テーブルの上に所狭しと並べられた料理は、どれも舌がとろけそうなほど美味で、箸を動かすカイジの手は止まらない。
顔を輝かせながら、口いっぱいに料理を頬張る恋人の姿に目を細め、アカギは日本酒の徳利を差し出す。
「ん、悪ぃ……」
口をもぐもぐさせながら、カイジが猪口を持ち上げる。
とくとくとアカギが熱燗を注いでやると、旨そうにくいっと飲み下して、カイジは「くぅ〜〜っ……!!」と声をあげる。
「この日本酒も最高だなっ……!!」
「滅多に手に入らない、新潟の酒らしいけど……」
そこで言葉を切って、アカギはカイジの顔を見る。
「カイジさん、かなり呑んでるね」
アカギの言う通り、カイジは旨い料理のおかげで酒が進み、これまでに生ビールの中瓶二本と、日本酒を二合、ほとんどひとりで飲み干している。
カイジは真っ赤な顔で、カラカラと愉しそうに笑う。
「だってよぉ。こんな旨い酒、今度いつ呑めるかわかんねぇんだから、たらふく呑み溜めしとかねぇと」
人としてどうかと思われることを最もらしく言って、カイジはお猪口をくいっと干す。
「でも、このあと、大浴場にも行きたいって言ってなかったっけ」
「おう……! もちろん、ちゃぁんと行くぜっ……! だぁいじょうぶだよ、オレ、そんなに酔っ払ってねぇからっ……!!」
なにが可笑しいのか、ハハハッと声をあげて陽気に笑うカイジは、まるで人が変わったようで、アカギはカイジの言葉を怪しく思いつつも、急かされるままに徳利を持ち上げ、カイジに酌をしてやるのだった。
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