台所(※18禁) ただのエロ



「今日のメシはなんだ? カイジ」
 そう言って、背後からひょいと顔を出した男に、カイジは呆れ顔で答えた。
「親子丼。鶏肉と卵が安かったから」
「へー。うまそうだな」
 カイジの肩に顎を乗せ、男は待ちきれない子供みたいに手許を覗き込む。
 やわらかい髪が頬をくすぐって、カイジはちょっと身じろぎしながらため息をついた。
「赤木さん……手許が狂うから、あんまり身を乗り出さないでください」
 生真面目な口調に、赤木は細い眉をあげる。
「そんな大げさな」などと言い返そうとして、白いまな板の上、鶏肉をぶつ切りにする男の手が微かに震えているのに気づき、赤木は言葉を飲み込んだ。

「……この台所、寒くねぇか?」
 赤木はぐるりと部屋を見渡して言う。
 暖房器具などない冷たい床に裸足で立っていると、じりじりと寒気が下から這い上がってくるのだ。
 無骨な手つきで包丁を動かしながら、カイジは赤木の台詞を一笑に付す。
「そうですか? 誰かさんが鬱陶しいほどくっついてくるから、オレは暑苦しいくらいだけど」
 自分より遥かに年下の若造から軽くあしらわれ、赤木はちょっと眉を寄せる。

 自分の存在などまるで気にしていないかのように、淡々と下ごしらえを続けるカイジに、赤木は悪い顔で片頬をつり上げた。
「そうか。……まぁ、お前はどうか知らんが、俺は寒ぃんでね。ちょっくら、あったまるとするか」
 とぼけた口調で言うが早いか、赤木はカイジの腰に手を回して支えながら、ずっぽりと根元まで入っていた自身をぬる〜っと引き抜いた。
 いきなり腸壁を擦り上げられてビクンと体を跳ねさせるカイジを見ながら、亀頭が抜け切る寸前で再度、奥まで貫く。
「あぅっ! あっ、あっ……」
 途端に前屈みになって背を震わせるカイジの腰をぐいと引き寄せ、赤木は容赦なくソコを突き始める。
「ふ、ぁっ! あっ、んっ……、い、いきなり、動くな……っ……!」
 キッと目を怒らせ、振り返って赤木を睨めつけるカイジ。
 だが、硬い肉棒に一突きされるごとに、その表情はだらしなく蕩かされていき、快楽に堕ちていく様子は赤木の笑みを誘う。
「クク……このスケべ。ちんぽ咥え込みながら台所に立つなんざ、とんだ淫乱じゃねえか……」
 ゆっくりと抜き挿ししながら赤木が嘲ると、カイジは泣きそうな顔になって反論する。
「だ、だ……って……、ん……っ、あんた、が……このままメシ、作れっ、て……っ」

 暇に飽かして行ったポーカー勝負。カイジはただの無意味な遊びのつもりで赤木に挑んだようだが、赤木がそんな児戯に等しい生ぬるさを許すはずがない。
 連戦連勝、ぐうの音も出ないくらいコテンパンにカイジを叩きのめしたあと、赤木が課した罰ゲームが、これだ。
 当然、カイジは蒼白になって抵抗したが、神域の男の命令は絶対。
 とうの昔に心をむしれるだけむしられてしまい、骨の髄まで赤木にベタ惚れのカイジが逆らえるはずもなく、グズグズと長い時間をかけ、ふたりはこの狂ったシチュエーションへともつれ込んだのであった。


 下穿きをずり降ろされて局部を晒されている以外は、上から下まで服をしっかりと着込んでいるため、性交によって体温が上がったカイジの額からは汗が噴き出し、まな板の上にポタポタと落ちていた。
「ああっ……あっ……! く、くそっ……うごくな……って……くぅっ!」
 歯を食いしばって快感を耐えながら、カイジは必死で赤木に抗議する。
 完全に料理の手を止めてしまいながらも、最後の矜持か、包丁の柄だけは強く握りしめて手離さないカイジに、赤木は嗜虐心を煽られ、乾いた唇を舐めた。
「どうした? 手がお留守だぜ、カイジ……」
 意地悪く囁きながら前立腺を突くと、カイジの背が面白いようにビクビクと跳ね、赤木自身を包み込む恥肉もきゅうっと締まった。
「っく……ぁ、あ! できる、わけ、ねぇだろっ……! こ、こんな、ア、あぁっ……!!」
 駄々っ子のように喚くカイジの甘ったるい声が耳触り良く響き、赤木は目を細める。

 赤木の命令は『ハメられながら夕食を完成させること』。
 最初みたく挿入されているだけならまだしも、こうも好き勝手に動かれては、とても料理どころではないだろう。

 ずちゅっ……ぐちゅっ……
 いやらしい音をたてて男根に肉壷を犯され、あさましく乱れながらも、カイジは赤木に噛みつくのをやめない。
「ふぁ、あっ……! くそッ……、い、イかれてる……ッ、この、エロジジイ……ッ!」
「……そりゃどうも」
「うぁぁっ……!!」
 グリグリと前立腺に亀頭を押しつけられ、カイジは目を見開いて嬌声をあげる。
「あーーっ、そ、そこ……ッ! あかぎさ、そこぉ……っ」
「ん……、ココが、どうしたって……?」
 白々しく尋ねながら赤木がソコを執拗に責めると、カイジは涎を垂らしながら白痴のように激しく喘ぐ。
「ぁ、ぁあっ、そこ……っ! だ、だめっ……あぁ、あ、」
「ふ……、すっかり夢中じゃねぇか」
 口ではダメだダメだと言いながら、自ら腰を後ろに突き出し、張り出した亀頭でイイところを捏ねまわしてよがるカイジに、赤木は喉を鳴らして笑う。
 だが、全身を快楽にガクガクと震わせながらどうにか立っているくらい溺れきっているカイジには、揶揄する言葉すらもはや届いていないようだった。

 勃起した赤木の陰茎の鈴口から溢れる先走りのせいで、前立腺を擦るたびにぬるぬるとした感覚が生まれるのがたまらず、カイジはバカの一つ覚えよろしく、腰を振りたくっては濡れた声を上げている。
 もはや料理のことはもとより、赤木の存在さえも眼中になく、ひたすら自分を気持ちよくしてくれる男根のことで頭がいっぱいで、それ以外はなにも見えていないかのようだった。

 その淫らな姿に赤木はニヤリと笑い、粘ついた液をトロトロと滴らせるカイジのモノに指を絡めた。
「っあ! だめ、それだめ、でる、でちまうっ……!」
 切羽詰まった泣き声で訴えるカイジに構わず、赤木がピクピク震える竿を扱きあげると、二、三度往復しただけで、カイジは高く鳴いて白濁を撒き散らした。
「あっあっ、ふぁあっ……!!」
 ビュルビュルと断続的に精を吐き出しながら、カイジは大きく背を仰け反らせる。
 シンク下の扉に勢いよく飛び散った白濁が、ドロドロと床へ流れ落ちていく。

 恍惚の表情で快感に浸るカイジの中は嬉しそうに赤木を締め上げ、法悦の喜びを分け与えようとするかのごとく絡みついてくる。
 ひときわ強くなる性感に、赤木は荒々しくカイジの腰を掴み、低い声で告げた。
「俺も……出すぞ、カイジ……」
「ぁ、う……、う……っ、うぅ……」
 ズッズッと激しく中を穿たれて、カイジは揺さぶられるまま、途切れ途切れにうわごとのような嬌声を上げている。
 竿全体をぴったりと包み込み、絶妙な圧を与えてくる熱い肉壁で、赤木はひたすら自身を扱き上げ、やがて限界がくると亀頭を再奥に叩き込んで、そこで射精した。
「……ッ」
「ぁ……は……っ、す、すげ、でてる……っ」
 無遠慮に奥へと精液を流し込む行為はひどく一方的だと言えなくもなかったが、カイジは太い眉を下げきって、トロトロにとろけた表情で赤木を振り返り、中出しされた大きな尻を悶えさせていた。

 荒い呼吸とともに大きく上下するカイジの背中を眺めながら、赤木は最後の一滴まで絞り出すようにして射精を終える。
 今にも崩れ落ちそうになるのをギリギリのところで耐えているカイジの姿に邪気を擽られ、出したばかりの精液を奥に塗り込めるようにピストンすると、カイジは敏感に反応して小刻みに喘いだ。
「ぁ……あっ、あかぎ、さん……」
「垂れると、床を汚しちまうからな」
「んぅ……は、はい……、ぁ……ん、っ……」
 赤木の言うことがただの口実に過ぎないことなどカイジにもわかりきっているはずだが、イったばかりでまだヒクヒク収縮している中を突かれるのが気持ちよすぎて、カイジはうっとりと目を閉じて素直に赤木に身を任せている。
 淫らでいじらしいその姿に赤木は満足げな顔をすると、存分に可愛がった媚肉から自身をずるりと引き抜いた。
 
 ふにゃふにゃと脱力してしまったカイジを抱きしめ、赤木は台所の床に胡座をかいて自分の足の上に向かい合うように座らせる。
 はぁ、はぁ、と熱い息をつくカイジの頬は湯上がりのように上気し、過ぎた快感に潤んだ黒い瞳は焦点を結んでいなかった。
「メシ、ぜんぜん出来てねぇじゃねえか。……ん?」
 笑みを含んだ低い声で咎めながら、赤木はカイジの唇を啄むようにして幾度も口づける。
 戯れるようなキスが嬉しくて、カイジは『もっと』とねだるようにチラチラと舌を覗かせた。
 餌を待つ雛のような仕草に、赤木は思わず噴き出す。
「変態」
「どっちが……」
「お前、ちんぽさえ付いてりゃ誰だっていいんじゃねえのか」
 最中の乱れっぷりを思い出し、くっくっと肩を揺らしながら赤木が指摘すると、カイジはひどく気分を害したような顔でそっぽを向いた。
「……こんな変態じみたこと、あんた以外にさせるわけないだろ」
 本気で怒っているような刺々しい口調だが、その内容が赤木を愉快にさせるものでしかないということに、口にした本人は気がついているのだろうか。

 赤木はちらりと苦笑して、ほんのり火照ったように色づいたカイジの耳朶をゆるく噛んで引く。
「ほら、拗ねてる場合じゃねぇぞ。さんざ負けた上に俺の命令も果たせないようなヤツには、たっぷり仕置きしてやらなきゃいけねぇからな……」
 酷薄な言葉とは裏腹に、赤木は背けられたカイジの顔を覗き込むようにして口を吸い、舌を差し入れた。
 頑なに赤木を拒むような姿勢を見せていたカイジも、口内を縦横無尽に動き回る舌に態度をとろかされ、次第に自ら赤木に舌を絡めては、じゅるじゅると水音を立てて唾液を啜るようになっていった。

 自分が圧倒的不利な状況であっても相手に牙を剥く利かん気の強さと、ひたぶるに相手に身を任せて肉欲に爛れる従順さ。
 相反するふたつの性格の絶妙なバランスが、赤木を焚きつけてやまないカイジの要素なのだ。

「……ベッドへ行くか」
 気が遠くなるほど長い口づけのあと、赤木が耳許で吹き込むように囁くと、カイジはぶるりと体を震わせ、ふくれっ面のままこくりと頷いた。

 シンクのそばのまな板の上には、まだ半分も切られていない鶏肉。
 結局、そのまま次の日の昼まで放置されてしまったその鶏肉が、親子丼としてふたりの腹に収まることは、ついぞなかったのであった。






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