無理(※18禁) エロのみ 赤木さんがひどい

 

 自分の上で歯を食いしばって唸り声を上げる裸の男を見上げ、赤木はその名前を呼んだ。
「おい、カイジ」
「……ん、ですか、っ……?」
 獣のような呼吸の合間に訊き返すカイジの顔は、まだほんの先端しか男を受け入れていないというのに、ひどく苦痛に歪んでいて、
「あんまり、無理すんなよ」
 赤木が思わずそう声をかけてしまうくらい、辛そうだった。

 のんびりとした労りの台詞に、カイジは据わった目で赤木を睨むように見る。
「し、て、ねえよ……ッ」
 返事をするのもキツそうな様子で強がってみせるカイジを見て、赤木は内心、肩を竦めた。

 騎乗位での奉仕は、べつに赤木が強制したわけではない。
 カイジから『やる』と言い出したことなのだ。
 いつも赤木にリードさせてばかりであることに、気兼ねしたらしい。

 そうは言っても、まだ一線を越えてから日も浅いし、そんなこと気にしなくてもいいと赤木は思っているのだが、カイジにとってはそうではなかったようだ。
 性的なことにうぶな己の戸惑いや恥じらいを、明らかに赤木が愉しんでいるのが面白くない、というのもあるだろう。
 むしろ、それがカイジがこの大胆な申し出をしてきた、いちばんの大きな理由なのかもしれない。

 つまり、カイジは赤木を見返してやろうとしているのだ。
 まるで子供のようだと、赤木はうんと年下の恋人を可愛く思い、好きにさせてやっているのだが、それにしても、こうまで苦しげに自分の上で悶えられると、心配にもなろうというものだ。
 前戯で見せた、いじらしいほど一生懸命な様子が、赤木をきちんと昂ぶらせてはいたものの、この状況が長く続けば、やがては熱も冷めてしまうであろう。

 しかし、猛った男根に手を添えて震えながら腰を落とそうとするカイジの、必死な表情を見るにつけ、水を差すようなことを言うのも悪い気がして、赤木は結局、口を噤んだのだった。

「……っ、く……ッ、ぅ……」
 眉を寄せ、痛々しい表情で体を強張らせるカイジ。
 声を耐えているせいか、ガチガチに緊張している体からは一向に力が抜けず、それがカイジをより苦しめている。

 本当に不器用だなと、内心苦笑しながら赤木が見守る中、カイジはふうふうと息をつきながら、じわりじわりと腰を落として自ら男に貫かれていく。
 卑猥に濡れた結合部が赤木からは丸見えになっているけれども、それを気にする余裕すらないようだ。

 カイジの自重によって、すこしずつ肉壁を割り開くように進んでいく赤木のモノは、異物に慄いて拒もうとする中の動きに、絶えずキツく締め上げられている。
 正直、快感より痛みの方が勝るくらいだが、赤木はなんとか気を保とうと集中した。

 中折れなんかしてしまっては、ここまで頑張ってきたカイジが可哀想だ。
 本人が聞いたら顔を真っ赤にして怒りそうだが、今、赤木の心を満たしているのは性的な欲望ではなく、偏にカイジへの同情心であった。

「……っ……ぅ、ん……ッ」
 そうして長い長い時間をかけ、カイジは赤木を根本まで呑み込んだ。
 尻が赤木の腿にぺたりとついた瞬間、ビクビクと体を痙攣させ、カイジは深く項垂れてしまう。
 己の腹の上に脂汗がぽたぽたと滴り落ちるのを見ながら、赤木は口を開いた。
「……大丈夫か?」
 すると、ヒクリとひとつ体を引きつらせたあと、カイジは背を丸め、
「う……うぅ〜……ッ……!」
 今まで我慢していた分を解放するかのように、細く声を上げた。
 ほとんど泣き声じみた、むずかるような声に赤木が眉を上げていると、乱れた黒髪のかかったカイジの面がわずかに上げられる。

 その顔は真っ赤で、太い眉が悩ましげに寄せられ、眉間に深い皺が刻まれている。
 半開きの唇からは獣じみた熱い吐息が漏れ、うまく飲み込むことすらできないのか、口端から唾液が滴っている。
 全身をしっとりと汗にまみれさせたカイジは、涙をいっぱいに湛えた大きなつり目を虚ろに濁らせ、震える声で呟いた。

「む、無理だ……っ」
「……カイジ?」
「あ……ッ、あんたの、で……、腹ン中……ッ、いっぱい……、でっ……、動けね、……っ」

 急にそんな弱音を吐いて、縋るような瞳で赤木を見つめるカイジ。

 無言で耐えていた先ほどまでの強気な様子から一変して、ひどく傷ついたようなその表情は、萎えないようにと精一杯保ってきたはずの赤木の欲望に火を点け、一瞬で燃え上がらせた。

(わかっててやってる……わけじゃ、ねえんだろうな)

 おそらく、本人はまったくの無意識なのだろう。
 今までにないくらい深くなった結合への恐れが、カイジにこんな台詞を吐かせたのだ。

 その『無意識』に、思いがけず煽られてしまった己を、嘲笑うように赤木は口端をつり上げる。
 そして、心許なげな表情で荒い息を繰り返しているカイジの方へ、つと手を伸ばした。

 白く筋張ったそれが、慈悲の手として延べられたのだと思い込み、カイジはホッと息をついて表情をわずかに緩める。
 だが、震えながら伸ばされたカイジの手を、赤木の手は無情にすり抜け、その先にある平らな下腹部を撫でた。

「……ここが、俺のでいっぱいだって?」
 囁いて、ぐっと力を込めてそこを押せば、それにすら感じたように、びくんとカイジの体が跳ねる。
「あッ、や、め……!」
 大きく目を見開き、泣きそうな顔で赤木の手を押し退けようとするカイジ。
 嗜虐心を擽られた赤木がぐりぐりとそこを押さえつけると、カイジは力なくかぶりを振った。
「い、痛……っ、赤木さ、やめ……、は、れつ、しちまうっ……!」
 そんなことあるはずがないのに、辛そうに顔を歪めて必死に拒絶を訴えるカイジの姿が、わずかに残った赤木の理性すらも焼き切れさせた。

 酷薄な笑みに唇を撓め、赤木は両手をカイジの尻に回す。
 臀部の肉を指の跡がつくほど強く掴み、予告もなしに思いきり腰を突き上げると、丸まっていたカイジの背筋がきれいな弓形に仰け反った。
「っうぁ……ッ!? あっあぁっ……!!」
 目を見開き、裏切られたような表情で嬌声を上げるカイジを鋭い目で見上げながら、赤木は狭い肉壁を容赦なく穿つ。
 突然の激しい責めに翻弄され、体がバラバラになってしまいそうなほどガクガクと揺さ振られながら、カイジはしゃくり上げるような声で赤木に訴えた。
「あかぎ、さ……ッ!」
「ん……?」
 勢いをつけて深く突き上げながら赤木が訊き返すと、カイジは透明な涙を撒き散らしながら懇願する。
「も、もっと、ゆっくり……ッ!」
『やめろ』とは決して言わないのも、やはり無意識の内なのだろうか。

 汗と涙と鼻水と涎と。
 ありとあらゆる透明な体液で顔をぐちゃぐちゃに汚しながら、己の上で身も世もなく乱れるカイジの姿に、赤木は苦笑した。

(ゆっくり、ね)
 そんなのは、無理な相談だった。
 ついでに、あれだけ「無理するな」などと労っておきながら、これからかなりの無理をカイジに強いてしまうであろうことはもう目に見えていて、
「ごめんな、カイジ」
 声だけはうんとやさしく、赤木はそう謝ってやる。

「んっ、あっ、赤木さ……ぁ、っ」
 ちいさなベッドがギシギシと悲鳴をあげ、徐々に甘みを帯び始めたカイジの声がそれに重なる。
「激し……ッ、あっ、こ、こわれ、ちまう……っ!!」
 過ぎた快感に怯えるような口調。もちろん、ベッドのことを言っているのではないだろう。

 言葉だけではなく、蕩けた表情も、しどけない肢体も、下腹を擽るような声も。
 そのすべてが男を煽るのだとまったく自覚していないのだから、なんて厄介なヤツなんだと、赤木は内心、苦く笑う。
「……俺も、お前に壊されちまいそうだよ。カイジ」
 それが半分、本音であることを飄々とした口振りの中に隠して、赤木は乾いた唇を舐め、激しすぎる責めに慄き萎れてしまったカイジ自身へと、そっと手を伸ばしてやった。





[*前へ][次へ#]

6/25ページ

[戻る]