ゆめ(※18禁)・2





 頬にやわらかいなにかが触れ、カイジの意識はゆるりと浮上した。
 まだ眠気の波間をたゆたっているような、ぼんやりとした感覚の中、上瞼と下瞼はぴったりくっついたまま、未だ離れようとはしない。

「カイジさん」

 細雨のように密やかな声とともに、ひんやりと心地の良い感触が、そっと押さえるような強さで目の際に触れた。
 懐かしいタバコの匂いに包まれ、カイジは待ち焦がれていた男がやって来たのだと知る。

 いつの間に来ていたのだろう。そういえば前に会ったとき、合鍵を渡していたんだっけ。
 ちゃんと失くさずに持ってたのか。この男が? ……なんとなく意外だ。
 でもまあ、悪い気はしねえな。

 すぐ側にある気配になにか声をかけたいが、体が鉛のように重くて自由に動かない。それでもどうにかうすく開きかけた口を、今度はなにかに塞がれた。
「……ん、ぅ……」
 ぬるりとしたものが口内に入り込んできて、やさしくカイジの中を探っていく。

 ああ、キス、されてる。

 うまく回らない頭で辛うじてそれだけは理解できたものの、なにも反応することができない。
 控えめに舌が絡み、歯列や内頬の粘膜を掠めるように舐められる。
 ほとんど眠ったままの意識の中で、与えられる穏やかな刺激はなんだかとても心地よく、カイジはふわふわと、文字通り夢見心地になった。

 ちゅ、と音をたてて唇が離れる。今度こそなにか言わなきゃと思うけれど、言葉が出てこない。
 異様なほど瞼が重くて開けられない。……顔が、見たいのに。

「お疲れさま。疲れてるんだろ? 動かなくていいから、そのまま、じっとしてな」

 やさしい声で労られる。こいつ、こんなにやさしかったっけ? なんだか、薄気味悪ぃくらいだ。
 つーか、じっとしてな、って、一体なにをするつもりなんだろう。

 カイジの疑問に答えるように、衣擦れの音の後、首筋に硬い刺激が走った。
 直後、軽く吸い上げられ、そこに歯を立てられたのだと知る。カイジが微かに身じろぐと、低く喉を鳴らす笑い声が降ってきた。

 次いで、ざらりと、生ぬるい舌の感触が這う。
 敏感な首筋の皮膚を舐め、吸われ、甘噛みされてじわじわと体の芯が熱くなってくる。
 カイジが高ぶってきたところで、いったん男の気配が離れていった。

 しばらく、ゴソゴソという衣擦れの音が続いたあと、
「んぁっ!? ふぁ、ぁあっ……!!」
 いきなり腰骨がビリビリと痺れるような快感が走り、カイジはきつく体を仰け反らせる。

 いつの間にか外気に晒されていた自身が、あたたかくぬめぬめとしたものに包まれている。それが男の口の中なのだと気づいたときには、カイジは既に快楽の渦へと引き込まれてしまっていた。

「あ……はぁ、ッ、あかぎ……ッ」
 脚がびくびく跳ねる。声が抑えられない。
 いつもならまだ意地悪く焦らしてくる段階であるはずなのに、核心的な部分をいきなり強く吸われ、瞼の裏がチカチカと閃く。
「あぁ……ァ、なん、で、こんな……あッ……!」
 きれぎれに発した問いかけは無視され、返事の代わりに唇を窄めて根元から強く扱かれる。
 パンパンに膨れ上がった陰嚢から、たまらない甘美さを伴って精液がこみ上げ、あっという間に砲身の中を駆け上って竿を硬く勃起させていくのがわかる。

 くらくらと目眩がした。どうして、こんなに気持ちがいいのだろう?

 瞼は相変わらず膠で張り付けたように開かない。視覚が遮断されている分、余計に敏感になっているのかもしれなかった。
「は、あ、ァ……すげ……ッと、溶けちまう……っ」
 冗談じゃなく腰からドロドロとした液体になって流れ落ちていきそうで、カイジはほとんど自失しかけながら男に訴える。

 クスリと、男の笑う気配。
「きもちいい? カイジさん」
 低い声で問いながら、裏筋をゆっくりと舐め上げられる。
「い、いい、きもちぃ、っあ! あー……ッ!!」
 もうわけもわからず、無我夢中で叫んだ刹那。
 鈴口を強く吸われ、声すら出せないほどの強烈な絶頂感がカイジを襲った。


 限界を超えて昂っていた意識が、真っ白に爆ぜ。
 そこで、カイジは、
 目を覚ました。



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