見えるもの 【side-K】


 見えるもの。


 皺の寄ったシーツ。
 隅に追いやられた枕と掛け布団。
 ちょっと頭を動かせば、床に脱ぎ散らかされた服。

 それから、
「なに見てるの?」
 ちょっとだけ不満そうに見上げてくる、恋人の顔。


 すこし視線を外しただけで、こっちを見ろとどやされる。

「悪い」
 と謝って、繋がった部分を軽く揺すれば、眉間の皺を深くして、ため息をつく。

 視界が激しくぶれて、足の下でベッドが軋んで、だんだん、下腹が熱くなってきて、
 お前以外見えなくなってきたとき、いつもの余裕が消え失せるその顔を見るのが、心から好きだよ。



 死んでも、言ってやらねえけど。








[*前へ][次へ#]

43/75ページ

[戻る]