見えるもの 【side-K】
見えるもの。
皺の寄ったシーツ。
隅に追いやられた枕と掛け布団。
ちょっと頭を動かせば、床に脱ぎ散らかされた服。
それから、
「なに見てるの?」
ちょっとだけ不満そうに見上げてくる、恋人の顔。
すこし視線を外しただけで、こっちを見ろとどやされる。
「悪い」
と謝って、繋がった部分を軽く揺すれば、眉間の皺を深くして、ため息をつく。
視界が激しくぶれて、足の下でベッドが軋んで、だんだん、下腹が熱くなってきて、
お前以外見えなくなってきたとき、いつもの余裕が消え失せるその顔を見るのが、心から好きだよ。
死んでも、言ってやらねえけど。
終
[*前へ][次へ#]
[戻る]