誘う(※18禁)・2



 ベッドの上で啄むようにキスしながら、アカギはカイジの肩を押さえてやわらかく押し倒す。
 ぎしり、と軋む音とともにシーツに横たわったカイジは、チラリとアカギを見上げて唇を噛んだ。
 後悔しているようにも見えるその表情に、アカギはわざとらしくため息をつく。
「あんたから誘っといて、そういう顔するなよ。萎えちまう」
 突き放すような言い方に、三白眼をちょっと瞬かせたあと、なにかを吹っ切るように、カイジは短く息を吸い込んだ。
「……萎える?」
 するりと下へ手を伸ばし、アカギのジーンズの前を確かめるように撫でる。
「……そんな暇なんざ、与えねえよ」
 ぽつりと呟いて、そのままカイジはアカギのベルトを外し始める。
「カイジさ」
「……黙ってろ」
 名前を呼ぶ声を遮り、下穿きの中に手を差し入れてくるカイジの顔を、アカギは黙って見つめる。
 こんなに早い段階からカイジ自ら手淫をしてくるなんて、かなり珍しいことだった。

 平然とした顔を取り繕ってはいるが、緩く兆し始めている男根に指先が触れたとたん、カイジの喉が密かに上下するのを、アカギは確かに見て取って、声に出さずに笑った。

 狭い下着の布の中で、カイジはアカギ自身を握り込み、ゆっくりと上下に扱き始める。
 間近でその顔を覗き込むように見つめれば、カイジは嫌そうに舌打ちして、アカギから顔を背けようとする。
 
 クスリと笑い、アカギはそれを許さぬようにカイジの顎を捕らえ、唇を重ねた。
 舌先だけを潜り込ませると、カイジはピクリと反応して手を止めてしまう。
「……やめないで。ね?」
 喋るたび舌の触れ合う距離で囁き、自身を包み込むカイジの手に手を重ねて促すと、カイジは微かな吐息を漏らし、ふたたび手を動かし始めた。
 それを確認してから、アカギは下穿きから自分の手をそっと引き抜く。

 カイジの指はぎこちないながらも、ちゃんと男のいいところを的確に刺激してくる。
 血液が下半身に集中していくのを感じながら、アカギは口づけを深めつつ、カイジの着ているシャツをたくし上げていく。
 いやらしく舌を絡めながら、露わにした胸の頂にあるちいさな突起を指で摘むと、カイジの体がぴくんと跳ねた。
「んぅ……っ、は……ぁ」
 落ち着かなさげに身を捩りながら、カイジは眉を寄せてちいさな喘ぎを漏らす。
 その声を飲み込もうとするように、ぴちゃぴちゃと音を立てて舌を吸えば、やがて我慢できなくなったのか、カイジ自ら進んで舌を突き出してくる。

 アカギが指の腹で捏ねている乳首が固くなってくると、カイジは太腿を擦り合わせて身じろいだ。
 性的なキスに惑溺する気分の高鳴りを示すように、カイジの手淫も大胆さを増していく。
 くちゅくちゅと卑猥な音が鳴って陰茎が硬度を増し、下着の中でカイジが手を動かしづらそうにしているのを察して、アカギは自ら下穿きを下ろしてやる。
「……、これで、やりやすくなったでしょ」
 やわらかく舌を食む合間に笑って言ってやると、カイジは涙の膜の張った目をうっすらと開き、こくりと頷いた。

 湿った掌全体で握り込んで、根本から先端まで扱き上げる動作は単調だが、力の入り具合が絶妙で、アカギのため息を誘う。
 無数に重ねてきた夜の中で、カイジもちゃんとアカギを昂らせる術を学習してきたのだ。

 それがわかるから、アカギは尚のこと煽られて、貪るようにキスを深くする。
 荒い呼吸に波打つ腹筋を焦らすように撫で、右手をジーンズの前へ滑らせると、硬い布越しでもわかるほど、そこは既に大きく育っていた。

 ベルトを抜き、ジッパーを下ろす。
「腰、上げて」
 音を消した声で命じれば、カイジはわずかに腰を浮かせる。
 ジーンズと下穿きを一気にずり下ろし、現れた勃起に触れるときつく吊ったカイジの眦が赤く染まった。
「っあ、あっ……!」
 裏筋をつうっと指でなぞり上げると、カイジは困ったように眉を寄せてうつむく。
 自然、離れてしまった互いの唇を、透明な糸が名残惜しげに繋いだ。

 唾液に濡れ光るカイジの唇を舐めてから、アカギは掌でカイジのモノを包み込む。
 耳を舐り、首筋を辿って鎖骨の上を吸う。
 いくつか痕を散らして離れ、尖った胸の先端を口に含むと、カイジはちいさく喘いで身悶えた。
 わざと音をたてて乳首を吸い上げながら手の中の塊を扱けば、数度往復しただけでぬるぬるした液体が溢れ出し、アカギの手を汚した。
「んっ、ぁ、アカ、ギ……」
 悩ましげな声で名前を呼ばれ、アカギはカイジの乳首を唇で挟んだまま、口角を上げる。
 いつの間にかすっかり止まってしまったカイジの手を掴み、体を起こすと目を細めて告げる。

「口で、しよう?」
「……」

『して』でも『してあげる』でもなく、『しよう』。
 そう誘ってきたアカギの意図を察して、カイジはわずかに狼狽えた表情を見せる。

 だが、そんな自分の動向をアカギがじっと見守っているのに気がつくと、甘く唇を噛んだあと、ゆっくりと体を起こして胸の上あたりで蟠っているシャツに手をかけた。



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