revenge(※18禁)・2




 ふたり分の体重を受け止め、狭いベッドがギシリと悲鳴を上げる。
「俺がまず、自分がされたら気持ちいいことを実地で教えてやるから、お前はそれを真似てやってみな」
 ベッドに足を投げ出して座り、赤木は虎柄のシャツの釦を、挑発するようにゆっくりと外していく。
 徐々に露わになっていく白い膚に釘付けになりながら、カイジはぼうっと頷いた。

 ……もしもカイジが素面だったら、無論、話の流れがおかしいことくらい、すぐ気がついただろう。
 だが、深い酔いと緊張とでグラグラと茹だった脳味噌では、当然、冷静な判断などできようはずもなく、経験不足であるという自覚も手伝って、カイジは盲目的なまでに従順に赤木の手解きを受けることに集中していた。
 むしろ、あの赤木しげる自ら不埒なことを教えようとしてくれていると思うと、申し訳なさと己の不甲斐なさを感じて泣きたくすらなる。
 しかしそこにはほんの少し、奇妙な興奮も確かに入り混じっていて、目の前で見せつけるようにして服を脱いでいく赤木の姿に生唾を飲むカイジには、最早まともな判断力など一欠片も残されていなかった。



 餌の皿を前にした腹ペコの犬のようなカイジの視線を浴びながら、赤木ははだけた柄シャツをゆっくりと脱ぎ去り、ベッドの下へ落とす。
「ほら、お前も」
 赤木が促すと、カイジはハッと我に返り、慌ててTシャツとタンクトップを纏めて脱ぎ捨てた。

 座れ、というように、赤木が長々と投げ出された自分の足の、太腿の上をぽんぽんと叩く。
 カイジは固い表情で頷くと、ベッドの上を移動しておっかなびっくり赤木の足の上に座った。
 ちょうど対面座位のような格好で向かい合うこととなり、欲情と緊張の狭間で揺れるカイジの表情を間近で見ながら、赤木はスッと目を細める。

「まずは……」
「……ん、っ」
 ちゅ、とかわいらしい音をたて、赤木がカイジの唇に口づける。
「ほら、やってみな」
 笑って促され、カイジは顔を真っ赤にしながらも、ぎゅっときつく目を瞑って赤木の唇に己のそれを押し当てた。
「はは……そうそう、その調子」
 赤木はカイジのぎこちないキスを褒めてやり、もう一度、同じような軽さでカイジの唇を啄む。
 また、カイジがそれを真似て、間髪入れず赤木が再度……という風に、幾度もキスの応酬を繰り返しながら、赤木は徐々に、それを深いものへと変えていく。

 舌先を唇を割ってチラリと潜り込ませると、赤木の腿の上でカイジの体がぴくんと跳ねた。
 緩く口角を擡げて赤木がカイジを見ると、黒い睫毛をわずかに伏せ、カイジは舌を出して赤木の唇をぺろりと舐める。
 すぐに離れていこうとするところを逃さず、赤木はカイジの顎を掴むと、今度は開いた唇を深く重ね合わせた。
「ぅ、ん……ッ!」
 驚きに瞠られた目を見ながら、歯列を舐めて舌を絡める。
 くちゅくちゅと唾液を混ぜ合わせつつ、口内を奥歯の裏まで余すところなく舌でなぞり、最後に軽く舌を吸い上げて離れた。

 つうと垂れ落ちる唾液の糸で繋がったまま、官能的なキスに放心しているカイジに、赤木は音を消した声で囁く。
「ほら、お前の番だぜ……」
「ぁ……、は、い……」
 震える声で返事をして、カイジは軽く息を吸うと、顔を傾けて赤木の唇を塞いだ。
「……ん……、ぁ、は……ッ」
 必死に自分の真似をして舌を絡めてくるカイジに、赤木は目を閉じて笑みを漏らす。
「ん、カイジ、もっと深く……」
「……は、い……んん、んっぅ……」
「っは……、そう、上手いぜ……?」
 深く淫らなキスをしながら、赤木は時折こうしろああしろとカイジに指示を出し、カイジは返事をしてそれに応えた。
 そうやって会話するたび、ふたりの口の中からは大きな水音が漏れ、カイジは溢れた唾液を赤木のようにうまく啜ることができず、口を開けた拍子に唇の端からだらだらと垂らしてしまう。



 いつもよりずっと長い時間をかけ、たっぷりとカイジにキスの仕方を教えてやってから、赤木はゆっくりと唇を離す。
 赤い舌を唇から覗かせたまま、はー、はー、と呼吸を整えるカイジ。
 陶然と濡れたその表情を見ながら、赤木はクスリと笑って尋ねた。
「……やり方、わかったか?」
 カイジはぼんやりと目を潤ませたまま、子供のようにこくこくと頷いてみせる。
「そうか。偉いぞ、カイジ」
 赤木はご褒美を与えるようにカイジの濡れた唇を親指で拭ってやると、黒い頭をぽんと撫でた。
 すこしだけ嬉しそうに頬を緩めるカイジに、赤木は続けて言う。

「じゃあ……次に進むとするか」



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