見えるもの【side-A】 過去拍手お礼



 見えるもの。

 天井の木目。
 点けっぱなしの照明。
 ちょっと頭を動かせば、ヤニ焼けした壁。

 それから、
「なに見てるんだよ?」
 ちょっとだけ不満そうに見下ろしてくる、恋人の顔。


 すこし視線を外しただけで、よそ見をするなと叱られる。

「ごめん」
 と謝って、繋がった部分を軽く揺すれば、眉間の皺がたちまち解けて、甘い表情に変わる。

 視界が激しくぶれて、背の下でベッドが軋んで、徐々に下腹が熱くなってきて、
 あんた以外見えなくなってきたとき、勝ち誇ったみたいに笑うその顔を見るのが、本当に好きだよ。



 死んでも、言わないけどね。




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