ほしいもの・1 とても恥ずかしい話

「お先っす……」
 私服に着替え、店長にそう声をかけると、カイジは事務所を後にした。
「よぉ。待たせたな……」
 雑誌売り場で立ち読みしているアカギに声をかければ、男はカイジの顔をじっと見て、
「元気ない? またパチンコ、負けた?」
 開口一番に、そう尋ねてきた。
「るせー……」
 ぶっきらぼうに呟くカイジだが、実はアカギの言うとおり。
 負けに負けを重ね、バイトが休みだった昨日一日だけで、ものの見事に素寒貧。
 今、カイジの薄っぺらな財布の中にあるのは、全財産250円と、レシートが数枚、それに残高ゼロのパッキーカードだけ、という有様なのだった。

 唇を噛んでうつむくいじけたような表情と、問いかけを否定しない様子から、図星だったかと苦笑して、アカギは読んでいた雑誌をラックに戻す。
「カゴ、持ってきな。どうせ、ビールもつまみも、ねぇんだろ」
「うっ……すまねぇ……」
 もはやお決まりのパターンと化した、酒宴に必要なものをアカギに奢ってもらうという流れ。
 悄気たように肩を落とすカイジを、アカギは一笑に付す。
「今更だろ。その代わり、あんたが荷物持てよ」
「も、もちろんっ……! へへ……」
 揉み手でもしそうな勢いでそう返事して、ダッシュでカゴを取りに行くカイジの背中を、アカギは呆れたような半眼で見送った。



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