変化 過去拍手お礼



「カイジさん、久しぶり」
「お前……どうした、その格好……」
「悪かないだろ? どう、似合ってる?」
「いや……似合ってる似合ってないとか、そういう問題じゃなくて……単純に、ダサ……」
「実は、あんたのうちに寄るつもりで、土産、持ってきたんだけど」
「すげぇ似合ってるっ……! お前って、センスの塊だよなっ……! そんな服、お前じゃなきゃ、とても着こなせねえよっ……!」
「…………」
「……で、土産ってのは……?」
「いっそ清々しいな、アンタ……まあいい。土産ってのは、これだよ」
「おぉー……なんか高級そうな酒だな……」
「秋田の地酒だよ。旨いんだぜ。この時期にしか手に入らねえんだ」
「へぇ〜っ! お前の持ってくる酒は、今までハズれた試しがねえからな。開けるのが愉しみだっ……!」
「喜んでもらえて、なにより」
「は〜……それにしても」
「ん?」
「お前、しばらく会わねえ間に、いったいなにがあったんだよ? どういう……心境の変化なんだ、そのイデタチは」
「その話はまぁ、コレ呑みながら、おいおい、ね」
「ふーん……勿体ぶるな……まぁいいや、そうと決まれば、さっさとうちに帰るぞ! あっ、つまみ! つまみ買ってかねぇと」
「はいはい」
「……」
「あらら……どうしたの? 急に立ち止まっちゃって」
「アカギ」
「なに?」
「その……悪ぃけど、ちょっと離れて歩いてくれねぇか? お前といると、なんつーか、すげぇ……悪目立ちしそうだし」
「……似合ってるって言ったくせに」
「そっ……そうだけどっ……!!」
「じゃあ、いいじゃねえか。こうして並んで歩くのも久しぶりなんだ、ふたりでゆっくり歩いて帰ろうぜ?」
「ううう……」
「なんなら、手も繋いでみる?」
「アホかっ……!」



 その日、真新しい白のピンストライプのスーツに身を包んだ白髪の男と、革ジャンにジーンズというごく普通の格好をした長髪の男が、並んで町を歩く姿が目撃された。
 やたら人目を引くそのふたりは、スーパーマーケットで大量のつまみを買い込み、安普請のアパートの一室へと、帰っていったらしい。






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