白いシーツ(※18禁) カイジさんが淫乱
もくもくと白い入道雲が青い空にくっきり映える、八月の昼下がり。
気温は三十五度を超え、暑い、暑いとぶつくさ文句を言いながら、カイジは洗濯物を窓の外に干している。
それを聞き流しながら、アカギは床に座ってテレビをぼんやり眺めていた。
定時のニュースは、連日の猛暑日についての話題を垂れ流している。
すし詰めのプールで泳ぐ人々の様子、氷漬けにされたフルーツをだるそうに齧る動物園のシロクマ、熱中症への注意喚起。
スーツ姿のサラリーマンが、ハンカチで顔の汗を拭いながらインタビューに答え始めたところで、Tシャツや下着を干し終えたカイジが、投げ出されたアカギの脚を億劫そうに跨ぎ、居間から出て行った。
しばらくして戻ってきたカイジは、大きな白い布の塊を両手に抱え、またアカギの脚を跨いでベランダへと向かう。
アカギがその背を目で追っていると、カイジは両腕をいっぱいに開いて四角い布を広げる。
そして銀色に光る物干し竿に、その布をするすると掛けていった。
宵っ張りのふたりが起床したのはついさっきのことで、アカギはともかく、カイジは寝間着のTシャツの黒が濃くなるほど、寝汗でびっしょりになっていた。
「今日は、シーツ洗濯するからな」
起き抜けからうんざりした顔で、重々しくカイジは宣言し、有言実行でてきぱきと洗濯機を回した。
どうやら、染みこんだ汗やらなにやらでなんとなく湿っぽいのが、ずっと気になってはいたらしい。
今日は一日予定がなく、なにより給料日前のカイジには遊びに行く金もないらしい。
だからこそ、ここぞとばかりにシーツの洗濯など始めたのだ。
もし、ごくわずかな泡銭でも残っていようものなら、このダメ人間は財布を握り締めてすぐさま外へ飛び出していただろう。
二つ折りになったシーツの端に寄った皺を、カイジは丁寧に伸ばしている。
パン、と布を張る音をときどきさせながら、やけに熱心に。
燦々と輝く太陽に照らされ、シーツの白が眩しい。
アカギはやや目を細めながら、丸い汗じみがくっきりついたカイジの背中を眺める。
今夜もどうせふたりで汚すことになるシーツを、綺麗に洗って干している恋人の姿。
そんな風に思いながら眺めていると、なんだか妙にムラついてきた。
アカギはテレビを消し、音もなく立ち上がる。
シーツの両端を揃えて両手でぴんと張っているカイジに密着し、いきなり後ろから抱き締めると、カイジは体をびくっとさせた。
「アカ……んっ、」
焦った様子で振り返るカイジの唇に噛みつき、性急に舌をねじ込む。
後ろ頭を押さえて逃げられないようにしながら、開いている方の手をTシャツの裾へと忍ばせて腹を撫で回すと、カイジの体が強張るのがわかった。
ぜんぜんその気じゃない状態のカイジを行為に持ち込むときには、最初がいちばん肝心だ。
抗議する隙を与えず、無理やりにでも快楽のスイッチを押し込んでしまう。
いったんスイッチがオンになればもうこっちのもので、快楽に弱いカイジはもう碌な抵抗などできなくなってしまうのだ。
アカギはそんなカイジの習性をよく熟知しているから、腕を引っ掻かれようが舌に噛みつかれようが、構わずキスと手での愛撫を続ける。
するとやがて、頑なだったカイジの体から力が抜けてくるから、その頃になってようやく、アカギはゆっくりと口づけを解くのだ。
唾液にまみれ、透明な糸の引く唇から、はぁ、と熱っぽい吐息を漏らして、カイジはアカギを睨む。
「いきなり……サカってんじゃねえよ……っ」
目尻を跳ね上げたその瞳は、しかし性感に潤んでしまっていて、憐れなくらい溺れやすいその体に、アカギは口端を吊り上げる。
口では噛みついているが、体はこんな、打てばどこまでも響くような淫乱さを持ち合わせているものだから、アカギはつい、カイジを限度いっぱいまでいじめてしまうのだった。
アカギはカイジの首筋を鼻先で辿り、舌を這わせてやわらかく吸い付きながら囁く。
「あんた見てたら、したくなった……いいでしょ?」
脇腹を擽っていた手を上へ滑らせ、胸の尖りをきゅっと摘まむと、カイジは戸惑ったように視線をうろつかせる。
「でも、ベッドが……」
シーツを干したところだから、ベッドは使えないと言いたいのだろう。
徐々に硬くなってきた乳首を指先で転がしつつ、アカギは邪悪な笑みを浮かべてカイジの耳に吹き込んだ。
「このまま……ここですればいい……」
「!! っバカ……あっ……!」
カッと顔を赤くするカイジだが、敏感な胸を弄くられ続けて甘い声を漏らしてしまう。
「ま、マジ、シャレになんねえってっ……、んっ、誰かに、見られたら……ッ」
「シーツでうまく隠れるって……あんたさえちゃんと声を抑えられれば、まず大丈夫でしょ……」
アカギに意地悪く言われ、カイジの顔が泣きそうに歪む。
セックスで、声を我慢できる自信が、はっきり言ってカイジにはないのだ。それに、頼みの綱であるシーツも、風が吹くたびハタハタとはためいて、なんとも心許ない。
「やめ……アカギっ、頼むから……、」
その様子がアカギを余計に焚きつけることを知らず、カイジは縋りつくように懇願する。
スッと目を細めてその唇にキスを落とすと、返事の代わりに、アカギはカイジの乳首に爪を立てた。
「いっ……」
鋭い痛みにカイジが体を縮こまらせている隙に、アカギはカイジの下肢に手を滑らせる。
「あっ」
下穿きの中に手を突っ込むと、そこはムッと熱く蒸れていた。
陰毛をさわさわと撫で、刀身に触れると、ソレはすでにゆるく芯をもっている。
「期待してたんだ……変態……」
「違っ……あっ! あぅ、っ……」
残酷な言葉をカイジは必死で否定しようとするが、下穿きの中でゆっくりと擦り上げられ、語尾が上擦ってしまう。
「あ、だめ、いや、だ、アカギ、あっ、んんっ……」
いやいやをするように首を横に振りながら、カイジは窓枠に手を突く。そうしないと、もはや足が震えて立っていられないらしい。
すっかり立ち上がった乳首を指の腹でくるくると撫でながら陰茎を扱いていると、ソレはあっという間に勃起し、先端から液が滲んでアカギの指を汚す。
くちゅくちゅといやらしい水音がたち始め、カイジは唇を噛み締めて深くうつむいた。
窓の下の道路を、ときどき車が通り過ぎていく音がする。そのたびにカイジは息を詰め、音が遠ざかると、ほっと体を緩める。
まるで、獣の気配に怯える小動物のようだ。
アカギはその頬に唇を触れさせると、下穿きの中からゆっくりと手を引き抜いて、カイジの目の前に掌を突き出した。
「これだけ濡れてれば、ローションいらないね?」
透明な粘液でベタベタに濡れた指を開き、ねっとりと糸を引くさまを見せつけてやると、カイジは横目でキッとアカギを睨んだ。
アカギは汗で湿るカイジの項に鼻先を埋めながら、カイジの先走りをたっぷり纏った手を、今度は尻の方へと潜り込ませる。
「あっ、あ、ソコはっ……」
慌てるカイジを無視して、胸を嬲る手はそのままに、尻の割れ目を指でなぞる。
きゅっと固く窄まっている尻孔をつつくと、カイジの腰が逃げる。
構わずぐっと指を押し込み、先走りのぬめりを借りて、人差し指の第二関節までを一気に埋める。
中を軽く掻き回し、指を曲げると、カイジは窓枠をぎゅっと強く掴んだ。
「あ、あっぁ、抜けっ……、っの、アホ……ッ!」
「クク……なに言ってんの。このあともっと太いの挿れるんだから、よく慣らしておかねえと」
低く喉を鳴らしながら、アカギは中指と薬指も足し入れる。
三本の指を揃え、グチグチと音をたてながら抽送を繰り返すと、カイジは丸めた背を震わせながら身悶えた。
襞をやさしく伸ばすようにしながらぐるりと内壁を擦り上げれば、ソコは次第に緩んでアカギの指を受け入れ始める。
「っ、く……ぁっ、は……ッ」
肩を怒らせて懸命に耐えているカイジが、堪えきれずにちいさく漏らす声と、突くたび馴染んで指に絡みついてくる腸壁の熱さにカイジの感じっぷりを知り、アカギは唐突に指を引き抜いた。
「はぁ、は……、あ、アカギ……っ」
大きく息をつきながら、涙目で振り返るカイジの頬は林檎のように赤く染まっており、なにかを訴えるように潜められた太い眉が、被虐めいた表情を作り出している。
半開きの唇を吸いながら、アカギはカイジの履いているパンツを下穿きごと膝の上までずり下ろす。
下穿きのゴムに引っかかり、育ちきったカイジの陰茎がぷるんと跳ねて顔を出した。
「挿れるよ……いい?」
ぴちゃぴちゃと舌を絡ませながらアカギが問うも、この期に及んでカイジはまだ首を横に振る。
そのくせ、ぼうっとした顔でキスに応え、自ら舌を伸ばしてアカギの口内を舐め回しているのだから、いくら態度で拒まれても、説得力など皆無だった。
アカギはカイジの腰を引き寄せ、硬く勃起した自身を手早く取り出すと、竿を片手で支えつつ、よく熟れた窄まりに、先走りの露を馴染ませるように擦りつける。
カイジのソコはヒクヒクと蠢いて、自らアカギを飲み込もうとするように蠢いていた。
「あ、アカ……待っ……! あぁ、んうっ……!」
誘惑に逆らわず腰を押し付けると、いちばん太いカリ首の部分までが一気につるりと飲み込まれてしまう。
敏感な亀頭部分を、いきなり熱い腸粘膜にすっぽりと包み込まれたアカギは、背筋を這い上る快感に眉を顰めた。
挿入の衝撃に腰をくねらせ、堪らず甘い声を上げるカイジに向かって、アカギは獰猛に笑う。
「ねぇ、すごいよ……あんたの中、早く奥まで来いって誘ってる……」
腰を強く掴んで根本まで突き入れると、カイジの背が痙攣しながら綺麗にしなる。
肉棒にぴったりと吸いつくようにうねる内壁の感覚を愉しみながら、アカギは緩急をつけてカイジを突く。
カイジは荒い吐息を溢しつつ、指が白くなるほど力いっぱい窓枠を握りしめて快感に堪えていた。
白いシーツの向こうには青い空。目いっぱい開け放った、窓際でのセックス。
ときおり風が吹くと、シーツが揺らめいて外の景色がチラチラ見える。その度、カイジの中が怯えたようにきゅっと締まり、アカギに更なる快感を与えた。
部屋の中に向かって風が吹くと汗ばんだ体が心地よく冷え、シーツから香る洗剤の爽やかで粉っぽい香りが、ふたりの鼻先を擽る。
「ぁ……はぁ、んっ、く、っ……」
気まぐれにイイところを掠められ、カイジは切なげな声を上げて鳴く。
最初は必死に喘ぎ声を抑えていたはずのカイジだが、快楽に負けてぽつりぽつりとその口から甘い声を漏らし始めていた。
だが、ちょうどその時。
遠くの方からいくつもの子供の声が聞こえてきて、カイジはハッとした顔で青ざめる。
慌てて声を飲み込もうとするカイジの様子を見て、アカギは悪い笑みを浮かべると、カイジの腰から手を離し、Tシャツの前側を大きく捲り上げた。
「あ、アカギっ……!!」
両手で胸を弄くりながら、カイジの尻に腰をくっつけ、深く長いストロークで抜き挿しする。
明らかに激しさを増した責めに、カイジはビクビクと反応しつつも、情欲に濡れた目でアカギを睨みつける。
乳首を軽く引っ張ったり、捏ねるように転がしたりすると、カイジの中は悶えるようにうねってアカギに絡みつく。
声を我慢している分、他の部分が余計に敏感になっているようだった。
カイジはアカギの腕に爪を立てて引っ掻くが、もちろんそんなものアカギにはまるで効果がない。
その間にも、子供たちの声はどんどん近づいてくる。
どうやら、プール帰りの小学生らしい。
明るく高い声が、夏休みの計画について話し合っている。ときどき、弾けるような笑い声が上がる。
会話の内容まで聞き取れるほどの距離の近さに、カイジの体が強張るのを見て取ったアカギは、ニヤリと笑って片方の手をするりと下へ移動させた。
「!! あ、あッ」
今にも爆発しそうな陰茎をいきなり握り込まれ、カイジは大きく目を見開き、艶声を上げてしまう。
その大きさにギクリとし、慌てて歯を食い縛ろうとするも、アカギに自身を根本から強く扱かれ、それに併せてイイところを亀頭でずぷずぷ突き上げられると、とてもじゃないが声を殺すことなどできない。
「ふあっ……ぁっ、ン……、あぁ、い、やだ、アカ、ギ……っ」
生理的な涙を溢しながら、身を捩らせて性感から逃れようとするカイジ。
子供の笑い声がちょうど窓の下を通るときを見計らって、アカギはスパートをかける。
胸の突起を執拗に捏ね回し、先走りでぐちょぐちょに濡れたカイジの亀頭を、揉むように扱き上げる。
それと同時に、前立腺をなんどもなんども突き上げると、窓枠に突っ張ったカイジの腕がガクガクと震え始めた。
「あっ、ぁっ、や……、はぁ、っ」
「カイジさん、声……ガキどもに聞かれちまってもいいの?」
「あ、だって……ッ、がまん、できねぇ……っ、声、出ちまうっ……、ぁあ、んっ!」
涙ぐみ、カイジは激しく首を横に振る。
その時、ひときわ強く吹いた風が、シーツをふわりと舞い上げた。
驚きに見開かれたカイジの目に飛び込んできたのは、窓の柵の真下あたりを通り過ぎようとする、四つの黄色い安全帽。
ビニールバッグを振り回しながら無邪気な会話を交わす彼らが今、ほんのすこしでも目線を上げれば、ふたりの姿は確実に見られてしまう。
その瞬間。
「ひっ、ふあぁっ、くぅ……ッ!!」
「……っ!」
なんの前触れもなくカイジはイってしまい、アカギの手の中でびゅくびゅくと勢いよく精液を迸らせる。
不意を突かれたアカギも、食い千切られそうに強く締め付けるカイジの中に、堪らず呻いて精を放った。
「あ、ぁう、ぅ……」
ガクガクと足を震わせながら射精の快感に酔うカイジを深く突き上げながら精を吐き出しつつ、アカギはその耳を噛んで笑う。
「あんた……、ガキに見られそうになってイっちまったんだ?」
「……っ」
その言葉に反応して、カイジの中が搾り取るように締まり、アカギはクク、と喉を鳴らす。
「本当、救いようのない変態だな、あんた……」
シーツが風で捲り上がっていたのはほんの一瞬のことで、子供たちはすでに窓の下を通り過ぎており、陽気な声は何事もなかったかのように遠のいていく。
射精を終えても、ふたりはしばらく繋がったまま、上がった呼吸を整えていた。
カイジさん、と名前を呼び、振り向いたカイジの顎を捕らえてアカギは深く口付ける。
ちゅ……、ちゅく……、と音をたてて唾液を啜り、舌を絡めあっていると、突然すぎた激しい絶頂の余韻が尾を引いて、お互いにたまらない気持ちになってくる。
「外でするのとか、案外ハマったりするのかもね、あんた……」
そう言いながらアカギはカイジの体を床に横たえ、足を深く折り曲げて秘部を曝け出す。
「あ、アホっ、んなワケあるかっ……!」
カイジは目を三角にして噛みついてくるが、抵抗はしない。
さっき中に出した精液をとろとろと溢れさせるソコに、栓をするようにもう一度怒張を挿入すると、カイジが歓喜の声を上げた。
「ん……、ああ……っ」
相変わらず窓は開け放しているというのに、さっきとは違って姿を見られないということに安心したのか、カイジは大きく声を上げてよがる。
「あっ、あっ、ん……っ、アカ……ギ……っ」
「カイジさん、声、聞こえちまうってば」
「あ、だって……、すげ……きもちいっ……」
すっかり陥落してしまったカイジの、とろけた表情を真正面から見ながら、アカギはゆっくりと腰を動かす。
腕と脚を互いに絡め合い、複雑なかたちでの睦み合いに没頭しつつ、アカギはカイジに言う。
「シーツ、せっかくあんたが洗ってくれたんだし……、夜汚さなくて済むように、今のうち、ここでいっぱいさせて……?」
頬や額にキスを落とすと、カイジは赤くなってちいさく「アホ」と吐き捨てながらも、アカギの唇にむしゃぶりつくように口づけた。
ちなみに、このあと心ゆくまでなんども交わっておきながら、ふたりは結局、夜にも洗いたてのシーツを存分に汚してしまったのだった。
終
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