ふたたび、ホテルで(※18禁)・6



「っく……あ、アカ、もう、ぁっ……」
「ん? もう、挿れてほしい?」
「ちっ……違……」
『もう』やめてくれと言いたいのに言葉にできないカイジは、必死で首を横に振るが、アカギはそれを無視してカイジの腰を引き寄せる。
 ずるりと指を引き抜き、両手で尻を割り開くように掴むと、ヒクつく窄まりに猛った自身の先端を押しつけた。
「よせっ、う、ぅう……っ」
 この期に及んで、カイジはまだ逃げを打とうともがいていたが、その足掻きも虚しく、後ろから容赦なく貫かれる。
「あっ、あ、うあぁ……ッ!!」
 鈍い痛みとともにめり込んできた凶器の切っ先に、カイジは苦悶の表情を浮かべて身を捩る。
 しかし、度重なるアカギとの性行為で、カイジの体は確実に男を受け入れることに慣れてきており、
「クク……あっという間に飲み込まれちまいそうだ」
 貪婪に蠕動しては奥へ奥へと誘おうとする肉壁の淫らさを揶揄されて、カイジは恥ずかしさで死にそうになる。

 程なくして互いの肌がぴったりとくっつくほど深く入りきると、アカギはゆっくりと動き始める。
「ぅ……っ、ぁ、あ……、あぁ」
 緩急をつけて突かれ、カイジはシーツに爪を立てて押し殺した声を上げる。
 アカギが深いところを穿つと、汗で濡れた白いブラウスがしっとりと貼りつくカイジの背が、綺麗にしなる。
 肌の色がうっすらと透けて見える背中に、乱れた長い黒髪がかかる様子はひどく淫猥で、アカギの目を愉しませた。
「ここから見ると、ちょっとだけ本物の女みたいに見えるぜ、カイジさん」
「……はっ、バカ、やろぉっ……! あ! う、くぅっ……」
「そろそろ、イキそう?」
 浅く深くずぷずぷと出し入れされ、カイジの呼吸が切迫してくる。
「あ、あ! んん……っ、畜生ッ……、」
 カイジはなんとか振り返ってアカギを睨みつけたが、恨めしげなその瞳は情欲にとろけ、犬のような呼吸を繰り返す口からは濡れた舌がちらりと覗いていて、矜持だけを置き去りにして体はほぼ陥落してしまったことが、はっきりと見て取れた。
 カイジと目が合うとアカギは悪魔のような笑みを浮かべ、カイジの感じるところを繰り返し強く突き上げる。
「あ! ア……っ、くうぅっ……!!」
 何度目かの抽送で、カイジは体を大きく跳ねさせて達した。
 腕がガクガクと震え、上体を支えきれずにベッドに突っ伏してしまう。
 腰だけを高く上げた姿勢で、カイジは歯を食いしばり、射精の快感を耐えていた。
 先ほど部屋で散々した後だというのに、限界まで勃起していたカイジ自身は大量の熱い精液をビュクビュクと迸らせ、たちまち濃い雄の匂いが辺りに漂う。

 アカギは動きを止め、搾り取られるような収縮に持っていかれそうになるのを耐える。
 そして、完全に吐精を終えてぐったりと呼吸を整えているカイジから自身を引き抜くと、その体を返して仰向けにさせた。

 はぁはぁと荒い息をつきながら、カイジはしどけなく四肢を投げ出しており、突き抜けるような絶頂感の余韻にぼんやりしつつも、勝気な目だけはアカギを睨め付けている。
 視線を下へ移せば、汗で濡れたブラウスはほとんどシースルーのような状態になっており、さらにその下、大きく捲れ上がったスカートから覗く太腿や股間部分には、ストッキングの中に白く粘ついた蟠りができていた。

「そそる格好になったじゃない」
 しげしげと自分の姿を眺めるアカギの目線を追い、カイジは慌てて股間部分を両手で隠そうとする。
 しかし、アカギに両足を大きく抱え上げられて、今度はストッキングの破れ目から覗く、ぬるぬるとローションにまみれて充血した尻孔を曝け出されてしまう。
「や、めろっ、あっ……!」
「オレ、まだイってねえし。挿れるよ……」
 低い声で告げられ、性急に挿入される。
「ぅあ、あぁ……っ!」
 イったばかりでひどく敏感になっているカイジは、嫌と言うほど馴染んだ硬い肉棒が腸壁を擦り上げる快感に、仰け反って大きく嬌声を上げる。

「あッ、う、うぅ、くそ……っ」
 前立腺を狙ってズンズンと突き上げられ、カイジの目に生理的な涙が滲んでくる。
 強すぎる快楽に呑まれそうになって、カイジは反射的に自分の前髪を強く掴んだ。
「さっきより、キツいね……どうして?」
 締めつけを確かめるように腰をグラインドさせながら、アカギは白々しく問いかける。
 カーッと赤面しながらもカイジは反抗的な態度を崩さず、
「おまえが、あッ、デカくしてん……だろうがっ……!」
 涙目でそんな言葉を投げつけてくるので、アカギは眉を上げ、それから愉快そうに目を細めた。
「そうだね。たしかに、あんまり余裕ないかも」
「ひ、ぁ!」
「だから、そろそろ……」
 いきなり抽送が激しくなり、カイジは足を痙攣させる。
「くっ、んぁ、あ、ダメ、だっ……クソ、こんな、のっ……」
 悦びに跳ねてしまう自分の声と体が歯痒く、カイジは両手で顔を隠すようにして、さらに強く自分の髪を鷲掴みにする。
 唯一、腕の隙間から見え隠れする口許は、血が滲みそうなほどきつく歯を食い縛っていた。
「……」
 アカギは抱えていたカイジの足を離すと、そのままカイジに覆い被さる。
「うぁっ……!」
 結合が深くなり、苦しげに呻くカイジだったが、ふいに腕を掴まれて顔の上から退けられ、間近にあるアカギの顔に見開いた目を瞬いた。

「カイジさんーー」
 掠れた声で名前を呼ばれ、カイジの心臓がドクンと脈打つ。
 至近距離にある、不思議な色の双眸。
 それがやがて、ゆっくりと伏せられ、斜めに傾けられたアカギの顔が、そっと近づいてくる。

 キス。
 される。

「……ッ!」
 カイジは渾身の力でアカギに掴まれていた腕を動かし、アカギの唇を両手で塞いだ。
 唇が重なるまであともうわずか数センチのところ、互いの前髪が触れそうな距離で動きを阻止されたアカギは、口を塞がれたまま、わずかに意外そうな顔でカイジを見る。

 カイジも、己の行動に驚いていた。
 肉体関係を持つようになってからかなり経つが、カイジとアカギは今まで一度も、キスをしたことがなかった。

 セックスで負債を支払うだけの関係。だが、キスをしてしまうと、そこから決定的になにかが変わってしまうような気がして、その変化がとてつもなく大きくて恐ろしいもののようにカイジには感じられて、考えるより先に、体が勝手に動いていたのだ。

「そっ……、」
 声が裏返ってしまい、カイジは唾を飲み込んで言い直す。
「そっ、そういうのはっ、女にしろっ……! オレは、お前の女じゃねえんだからっ……!」
 咄嗟に口をついて出た言葉。
 そう、そういう関係では断じてないのだ。
 だからキスなどしないのだと、カイジはどこか自分に言い聞かせるようにして思う。

 肩で息をするカイジの、どこか憔悴したような表情をアカギは黙って見ていたが、やがていつもの性悪な笑みを浮かべると、口を塞いでいるカイジの掌をべろりと舐めた。
「ーーっ!!」
 驚いてパッと手を離したカイジの耳許に唇を寄せ、吐息のような声でアカギは囁く。
「なるほどね。……それなら、さっきの続きといこうか。カイジさんーー」
 そして深く突き入れた己のモノをギリギリまで引き抜くと、ふたたび最奥まで貫き、悩ましげな声を上げるカイジを蹂躙していくのだった。




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