ふたたび、ホテルで(※18禁)・3




 フロントから貸し出された衣装を身に纏ったカイジを、上から下まで舐めるように眺め、アカギはぼそりと呟いた。

「クク……まさに狂気の沙汰っ……だが、だからこそ面白い……!」
「面白がってんじゃねえっ……! ブン殴るぞコラっ……!!」


 目を剥いて怒るカイジが身につけているのは、清楚な白いブラウスと黒のタイトスカート。膝上十センチの固い生地には、太股を露わにする大きなスリットが入っている。
 そしてそこから覗く足は濃い肌色のストッキングに包まれ、女らしさの欠片もないゴツゴツとした膝やふくらはぎの隆起が、惜しげもなく晒け出されていた。

 バニーガールになるのを避けるため、カイジが仕方なく選んだコスプレ。
 そのコンセプトは『秘書』。
 きわどい衣装がよりどりみどりのあのカタログの中で、おそらく最も露出がすくなく、セーラー服やナース服などと比べればずいぶんマシな部類だと言えたが、それでもカイジには舌を噛みたくなるくらいの抵抗があり、それを無理やり押さえつけてなんとか着用することができているような有様だった。

 無駄に豊富なサイズ展開のおかげで、男のカイジでも不気味なほどすんなりフィットする一着を選ぶことができたわけだが、さすがに黒いハイヒールまでは男の足に合うサイズが用意されておらず、羞恥と怒りに震えるストッキングの両足で、カイジは床を踏みしめて立っていた。

「そんな顔しないでよ。いじめたくなる」
 屈辱に早くも潤んだ目で睨みつけられ、アカギは低く喉を鳴らしながらカイジに近づく。
「触るな、このヘンタイっ……!」
「あらら……」
 投げつけられる罵り言葉もまったく気にする様子もなく、アカギはカイジの髪を指で梳く。
「こんな格好してるあんたに、ヘンタイ呼ばわりされるとはね」
 カイジはさっと顔を赤くした。
「お、お前がさせてんだろうがっ……!!」
「そうだけど。でも、これを選んだのはあんただ」
「……っ!」
 カイジは目を見開く。

 確かに、このコスプレはカイジが自分の指で指し示したものだ。
 つまり、やむを得ずとはいえ、自らの意思で選び取ったものだといえる。
 今、アカギに指摘されて浮き彫りになった『自分で選んだものを着ている』という事実が、カイジの羞恥をさらに煽る。

 アカギがカイジに衣裳を選ばせた意図は、せめてもの温情などでは決してなく、容赦なくカイジのプライドを傷つける、この効果を狙ってのことだったのだ。

「こんなところに突っ立ってないで、行くよ」
 ギリギリと歯噛みしながらうつむくカイジに目を細め、アカギはその手を引いてベッドに向かった。





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