ひと夏のおもいで・3(※18禁)


「最後まではしねぇよ。抜くだけだ。集中してりゃすぐ終わる」
 と言われ、ほっとしたのも束の間。
 ぐいぐい腕を引かれて連れ込まれたのは、さっきまで居た公園の奥、雑草の茂みの中。
 カイジはさすがに抵抗した。
 こんな場所で、なんて聞いていない。
「おい、酔っぱらい! てめ、ふざけるなっ……!」
「うるせぇな……大声出すと人が来るぜ?」
 オレはそれでもいいけど、と凶悪な顔で言われ、カイジはもうどうあっても逃げられないことを悟る。この男は本気だ。
 しぶしぶ口を閉ざしたカイジに、アカギは気分よさげに笑い、その腕を引いて草の中に座らせた。
 固い草の葉がちくちくと肌を刺す。さらにアカギに促され、地面に寝転がる。こうすると、こんもりとした植え込みに隠れて公園からは姿が見えなくなる。
 青臭い草の匂いに顔をしかめていると、アカギもカイジの隣に寝転んだ。
 互いに向き合う形になり、これから始まることを想像してカイジの心臓がすくむ。

 アカギはカイジのジーンズに手をかける。大声を上げたくなるのを耐え、カイジもアカギの前に手を伸ばした。
 一刻も早く終わらせることだけを考えてジッパーを下ろし、アカギのモノを掴む。
 ふにゃりとした生ぬるい肉の感触に、虚しさと情けなさで視界が歪んだ。

 なにが悲しくてこの晴天の下、野郎とイチモツを握り合わなくちゃいけないんだ。
 オレの人生、いったいどこで間違っちまったんだ。
 こんなキチガイじみた『ひと夏のおもいで』ができるくらいなら、なんにもない夏のままでよかった。
 木立の合間から覗く、澄み渡る青空がやたら目に沁みた。

 悲嘆に暮れるカイジをよそに、アカギは白い指をカイジのモノに絡め、ゆっくりと動かし始める。
「っう……」
 括れに指をひっかけられ、カイジは呻いた。
 悲しいかな、体は正直だ。こんなふざけた状況でも、勃つものは勃つ。
 自分の表情を面白そうに見守るアカギを一睨みし、カイジもアカギのモノを擦りはじめる。

 同じ男同士、どこが感じるかわかりきっている上、他人の手で触られるのは自慰と比べ物にならないくらい気持ちいい。
 アカギのぬるい掌の中で、いつもより早く硬くなっていくのをカイジは自覚していた。
 裏筋を撫で上げられ、くりくりと先端を攻められると、すぐに先走りが滲んでちゅくちゅくと湿った音を出し始める。
「は……ぁ、」
 カイジは必死に声を殺しながら、お返しとばかりに緩急をつけて手中の肉塊を扱く。
 絶妙な力加減に竿がぴくりと動き、アカギが微かなため息を漏らす。
 アカギも感じているのだ。そのことに、カイジは奇妙な興奮を覚える。
 最初は乗り気でなかったはずの行為。だが気がつけばカイジは溺れそうになっていた。
 (や、べ……気持ちい……)
 二人の高揚に合わせ、にちゃにちゃ嫌らしい音が立ち始める。
 雁首に皮を被せるようにして強めに扱かれるとたまらない。腰が浮いてしまうのを、止められなかった。
「ん……っ、ぁ」
「あんまり……声出すと、聞かれちまうぜ?」
 荒い息をするアカギに笑われ、カイジは慌てて唇を噛む。
 公園の方からは相変わらず子どもの声が聞こえてくる。死角になっているとはいえ、そんなに離れているわけではない。大きな声を出せば、気づかれてしまう可能性は十分にある。
 声を抑えようと苦心するカイジに、アカギの手はいっそう大胆になる。
「あ、ぁーー!」
「ほら……手、止まってるよ」
 激しくなる手淫に翻弄されつつ、カイジはもたもたと手を動かす。
 アカギは空いている方の手をカイジの頭へ伸ばし、深く被られたままのキャップのつばをぐいと横へ向けた。
 庇の下に隠れていたカイジの表情は扇情的だった。目許が赤く染まり、跡がつきそうなほど強く噛み締めた唇から、ふぅふぅと熱い吐息を溢している。
 声を我慢しようと懸命に努力を続けているが、腰は卑猥に揺らめいていた。
「……やらしい顔」
「なっ、……!」
 アカギの一言にカイジはカッとなる。しかし、アカギの顔を見て息を飲んだ。

 軽く眉を寄せ、こみ上げる衝動を耐えるような表情。いつもの余裕が感じられないのは、酔いのせいだろうか。
 薄く染まった頬と、ときどき漏れる小さな声に、カイジはドキリとした。
「は……っ、お前、人のこと言えねぇだろ……あっ」
 アカギのこんな顔を見るのは初めてで、眺めているとなんだかおかしな気分になってくる。カイジはごくりと唾を飲み込んだ。
「ーーっは、カイジさん、もうイきそうだろ」
 ピクピクと痙攣し始めた性器に、アカギは意地悪く笑う。
「あ、んっ! っお前っ……こそっ……!」
 カイジの手中でアカギも同じ反応を返していた。露骨に絶頂を促そうとするカイジの手つきに、アカギは軽く呻く。
「……っ、なら、一緒にイこうか?」
「はぁ、っ、バカ野郎っ、気色悪いコト、言うな……っ、んん!」
 ぐちゅぐちゅという水音は激しさを増し、射精へと引っ張られる意識の中、カイジは夢中でアカギのモノを擦った。
 アカギの全身の毛穴から立ち上るようなアルコール臭、生臭い精の匂い、むっとする草いきれの匂いが混ざって、カイジまで酔っているかのような心地になる。
「あっ、イ……っく……!」
 極まった声を上げ、直後、カイジはアカギの手の中に勢いよく精液をぶちまけた。
「ぁふ……ふっ、」
 断続的に三度、びゅるびゅると吐き出す。射精が終わったあとも鈴口は白い滴を乗せたまま、ぱくぱくと口を開閉していた。
 あまりの気持ちよさに涙ぐみながら、カイジも惰性のようにアカギのものを扱いていた。カイジの射精を見て高揚したアカギも、早々に限界を訴える。
「カイジさん、オレも、イきそうーー」
 カイジが搾り取るように竿を扱くと、低い唸り声とともに手中の熱が曝ぜた。



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