嘘(※18禁) 短文 甘々


 顔の前で腕を交差するようにして、表情をその下に隠すカイジを、アカギは静かな声で呼ぶ。
 かたくなな腕に唇を寄せ、舌でなぞるとぴくりと震えが走った。
 腕をつかんでやや強引に外させると、その下にあったカイジの表情にアカギは軽く目を見開く。
 そして、すぐに眉間に軽くシワを寄せる。ため息。
「……あんた、本当よく泣くな」
 白けた響きを隠そうともしない声色に、うるせえっ、と怒鳴ってカイジは涙に濡れた目で恨めしげにアカギを睨む。
 行為中、カイジはこうやって顔を隠そうとすることが頻繁にあった。その行動が、羞恥によるものだとアカギは思っていたのだが、どうやら違ったらしい。
「……そんなに痛いの?」
 アカギの問いかけに、ずっ、と鼻をすすったあと、カイジは頷く。
 だが、頷く前、なにかを躊躇うように一瞬目が泳いだのを、アカギは見逃さなかった。

 深く入り込んだままの性器を途中まで抜くと、くちゅ、と粘膜が擦れる。抜け出る刺激にカイジは声を漏らしたが、その声には苦痛が滲んではいない。それどころか、むしろ――
 思い至った事実に、アカギは目を細めた。その悪漢そのものの表情に、カイジは気付かない。
 アカギは乾いた唇を舐め、カイジの背中に腕を回すと素早く抱き起こした。
「――っ!? ぁ、あっ」
 抜けそうになっていた性器が、ずっ、と深くまで入り込んできて、カイジは仰け反って悲鳴をあげる。
 また、涙を溢れさす目許に口づけ、アカギは口端を上げた。

「本当に、痛いだけ?」

 カイジの体がびくりと硬直する。はっきりと狼狽えるような色を映す瞳を見て、アカギは確信した。

「それとも、泣いちまうほど気持ちいいの?」

 みるみるうちにカイジの頬が赤く染まっていく。それを隠すように、カイジは思い切り顔を背けた。
「……お前のこと、嫌いになりそう」
 不貞腐れたような、小さな声にアカギは笑う。
 その顔を見たくて、目の前にさらけ出された赤い耳を噛み、こっちを向けと促すように緩く引いた。





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