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「華を織る」
04



 困惑した様に虹の声を遮ろうとする亜紀。しかし虹も今度は主導権を離そうとはしなかった。あくまで穏やかな、しかし抗い難い口調で畳み掛ける。
「細やかな心遣いの出来る若い女性が良いね。それから、少し年上の心優しい若者も。君の話し相手になってくれるような、ね」
「そんな方は必要な‥‥」
「少し調べさせて貰ってね。残念ながら、君の両親のどちら側も御祖父様、御祖母様は亡くなっていたよ。しかし親戚の方達はまだ数人ご存命だ。君の事を報せれば、きっと会いたいと」


「待って下さい!」
 不意に放り込まれた濁流から溺れまいと手を伸ばす様に、亜紀は虹の言葉を何とか遮る。
「もし貴方が言うように私に織子の力があるならば、まずは神官様に相談するのが筋なのではないですか?」
 遠い記憶の中で、自分の両親はそう言っていた――しかし虹は、亜紀の正論を肩を竦める動作と共に一蹴する。
「神官へ相談?そんな事をすれば『保護』という名の元に大神殿へ幽閉されて、一生出られなくなるよ。――酷い話じゃないか」


 織子の力を押し込めるだけで活かさないなんて勿体無いと思わないかい?‥‥虹は誰とは無しにそう呟くと、亜紀の顔を見詰めた。
「私はね、亜紀。君を探し当てた時、本当に嬉しかったんだよ」
 心底嬉しそうに笑いながら、そっと胸元に手を遣る。
「玉城で旅商人の老人から話を聞いてから、ずっとこの黒水晶が光る時を待ち望んでいた。そうしたら、西風の血を引く君に織子の力が宿ったらしいと言うじゃないか。嬉しかったなあ。これはもう、運命だと思ったよ」



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