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「華を織る」
03



 亜紀や客人達の前では一応ーー本当に一応ーー親方として立ててくれてはいるが、波瀬の父親や祖父の代から勤めている老織師達である。
 他に目が無い場所では、あっと言う間に昔の「青臭い坊と経験豊富な先達」に戻ってしまうのであった。
「ほらほら親方、眉間に皺が寄っとる」
「 良い男が台無しじゃぞ?」
「さあさ、翠茶でも飲んで一服しなされ」
「おお、それが良いそれが良い」


 口々に言われ、周囲を取り囲まれ。抵抗する間も無く食堂へ連れ込まれると、強引に椅子へ座らされた。
「しかし翁方、まだ日も高いですし、店も開けたままですし」
「店番はわしらがやりますよって」
「いや、ですから、」


「――お任せしましょうや、親方」


 落ち着かせる様に優しく肩を叩かれ、波瀬は思わず口をつぐんだ。
「親方が焦っても仕方ありませんぞ?」
「そんなに張り詰めていたら、親方の方が先に参ってしまいますわい」
「難しい顔をしておっても、お客人を怖がらせるだけですじゃ」
「只でさえ親方は思い詰める性質じゃから」
「‥‥」



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